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「紙メディアからクロスメディアへ」コンファレンス報告

C3セッション「紙メディアからクロスメディアへ」では、紙から他のメディアへ展開していくために、制作やビジネスのプロセスを再構築した事例を紹介し、ディスカッションをおこなった。モデレータは佐々木雅志氏、また、パネラーとして凸版印刷の山岸祥晃氏、CMパンチの佐々木康彦氏、大日本印刷の川上能徳氏の順で講演した。

紙メディアからの進化的な展開

凸版印刷と大日本印刷からは、紙メディアでおこなっていたビジネスを基盤として、Webなどへ活動領域を広げていく、いわば紙メディアからの進化的な展開の話であった。
凸版印刷が手がける「Shufoo!(シュフー)」は郵便番号を入力するだけで、パソコンで折込みチラシが閲覧できる、電子チラシのモールサイトである。デジタル化のメリットとして、ログ解析などにより、アナログでは取れなかった各種データ取得が可能となり、検証によって、チラシを見ている顧客の顔が見えてくる。また効果測定だけでなく、印刷物を含むコンテンツの品質向上にもつながるといった相乗効果が生まれてきているという。

電子カタログのモールサイト「Paraly(パラリー)」は常時160冊以上を掲載。ページめくりに近い操作感など、「Shufoo!」同様、慣れ親しんだ紙メディアのビジュアルを利用しつつ、Webの特性を盛り込み、成果を上げている。
大日本印刷の「Pro-V」は、商品情報管理、媒体制作、販促活動のプロセスを改善するための、データベースソリューションである。商品情報管理の一元化で加工・配信の効率化を目指した。例えば紙メディアとWebコンテンツや、あるいはカタログの多言語化に伴う翻訳作業で生ずる、情報発信のタイムラグを大幅に短縮できるという。
そのほか、制作効率化によるコストダウン、媒体数やバリエーションの増加や、商品の市場投入までのリードタイム短縮などによって、企業の競争力強化と収益の拡大を提案している。

クロスメディアはアイディア勝負

CMパンチは上記2社とは異なる立ち位置からの提案をおこなった。「紙メディアはもう駄目なの?」「出遅れは致命的」などの刺激的な言葉が資料に掲げられたが、小さな会社がクロスメディアビジネスを展開し、成果を上げている実例とそのノウハウを惜しげもなく紹介してくれた。

例えばQRコードを応用した「Q転直Pa」は、デジタルカタログなどとのクロスメディア活用を予め想定している。携帯電話で見ることができる情報量は、パソコンと比べて非常に少ない。そこで「Q転直Pa」でのURLのパソコン転送が効果を発揮すると解説。従来のQRコードでの懸賞・クーポンといったキャンペーン系での活用にとどまらず、PC系のWebサイトからの商品購入経路誘導など、QRコードのビジネス活用の変革を起こす可能性を秘めているという。

パソコン側に誘導することは同時に、携帯サイト構築の手間とそれに伴うコスト問題の回避にもつながる。また検索キーワードよりも確実に誘導できるであろうし、メール開封率の高さ、そのメールが保存される点もメリットとして働く。またログ解析から、読込回数や訪問回数の結果計測ができる点もユーザ分析の幅を持たせることになる。

同一素材から制作されたものでも、紙メディアとデジタルコンテンツは、別個の制作物である。また、メディアを使ったビジネスを展開する上で必要なのは、単なる技術、手法の獲得ではない。それぞれのメディアの特性や機能を活かしつつ、 制作プロセスやネットによるビジネスプロセスを再構築する必要性を再認識することが今後の成功事例につながるであろう。

2007/03/07 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会