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生産部門における標準原価を根拠にした価格設定について

受注一品別に、生産工程で発生する原価(標準原価)を算出できることは、生産管理、経営管理において非常に有用なことである。標準原価は、社内データベースに登録される標準作業に掛かると想定される見込原価である。即ち、ある作業に対して標準(目標)と想定される処理時間と、時間単価によって求めることになる。

■PMPにおける仕切価格の設定
 JAGATでは部門別利益管理(PMP)システムを、業界の標準利益管理として提唱している。部門別に利益を管理することで、利益の水漏れをより緻密に防ぐこと、改善・強化すべき部門の特定を図ること、などを目的としている。ここでは営業と製造部門の間に仕切価格を設定することで、営業にとっては仕切価格で仕入れる(つまり仕入原価)、製造にとっては仕切価格で営業に売り渡す(つまり仕切売上)、という経営管理手法を採ることになる。
仕切価格が設定されることで、営業にとっては、製造がどんな作り方や手順を実際に採ろうとも、仕切価格で仕入れることになるため、営業努力で獲得した利益の営業分が明確に見える。一方、製造側では営業の売り方に関わらず、仕切価格で売り渡すため、製造によるコスト低減努力で獲得した利益が明確に見える。

■生産工程の標準原価の設定
 マスターデータとして、製造固定費や変動費、機械のスペックや稼働率を予め設定しておくことで、生産工程で発生すると見込まれる(見積もられる)標準原価を算出可能になる。受注仕様(サイズ、色数、紙質、部数など)が入力されれば、生産工程において発生する標準原価が、一部・一品当りで算出できるはずである。

■仕切価格と標準原価
 本来、仕切価格の考え方によれば、営業と生産の間の売り渡し、仕入価格であり、同一仕様に対する市場の競争価格を参考に、おおよその仕切価格のレベルは設定できるのである。市場において100円で売られているような仕様であれば、例えば自社の平均的な粗利益率を20%とすれば、仕切価格を80円に設定すればよい。マネジメントは営業が90円で顧客に販売するか110円で販売するかで、粗利益20%を基準に管理する。
しかし、ここまでの管理手法には、一切コスト的な認識が入ってこない。市場や顧客受け入れられる価格の水準が、自社の体力の範囲内かを、コストで図っていない。仮に原価150円という現実があるなら、上記仕切価格では、会社は市場から退出することになる。
厳密な仕切価格の数値算出が、必ずしも必要ではないが、標準原価を捉えて、標準原価を把握することで仕切価格の水準が見えてくる。標準原価を基準として設定された仕切価格は、外部市場環境における競争圧力に対する、社内経営体力のレベルを測定する「モノサシ」と考えられる。

 JAGATでは、生産工程の標準原価を求めるシミュレーションソフトを活用して、中堅印刷経営の経営層の方々、生産管理者、などの管理者を対象に標準原価算出セミナーを開催しております。「標準原価」の構造、「標準時間」算出のロジック、などを中心にご説明致します。日程等は、お客様の意向を考慮して設定しております。ご興味のある方は、是非お問合わせ下さい。
問合せ先:JAGAT研究調査部 高坂(TEL:03-3384-3411)

(2007年6月)

2007/06/06 00:00:00


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