PAGE2007に引き続き、PAGE2008でも「デジカメは当たり前、工業製品はほとんどがCGになってしまうだろう」のベクトルでCGを取り上げた。スピーカーは昨年同様、アマナ株式会社の進藤社長に登場いただき、ビジネス的な見地からコメントしていただいた。そして今回はより具体的にという意味もあって、現場で苦労しながらCG部隊を作り上げてきた長尾氏にCG画像作成のポイントを語っていただいた。
株式会社アマナはもともとストックフォトで有名だったが、現在はデジタル技術、それもCG技術を中核として多角化し、現在ではグループ企業が二十数社社、社員数も1,000名近い(超える?)大グループに成長している。その中心となるスタッフが営業を担当する100名近いプロデューサーが、撮影や3DCGなどのデジタル画像制作から、データベースでのビジュアル管理、ウェブを活用したコミュニケーションツールの制作までワンストップで解決している。プロデュースにあたっては、社内外のネットワークを活用し、クリエイターのキャスティングから予算、スケジュール、品質の管理まで、ビジュアルに関する業務に一括して応えし、顧客の利便性を高めている。
いち早くCG技術に着目した先見性も大きいが、プロデュース力(要するに営業力)が大きなポイントといえる。そして、そのプロデュース力の下に「写真制作」「デジタル画像制作」「ストックフォトコンテンツ」「その他のソリューション」ビジネスを展開している。広告写真の制作業務、デジタル画像の制作業務、ストックフォトエージェンシー業務、さらにビジュアルを活用した企画などの総合プロデュースまでを手がける国内最大手のトータルビジュアルソリューションカンパニーである。
ほんの少しではあるが私見を言わせていただく。CG分野では技術的に見るといわゆるオタク集団がひしめいているため、これまでのアマナさんのイメージは(どちらかと言うと)「ビジネスの先見性」「営業スタンス」的なモノが特に光っていたと思う。しかし最近の品質・技術は特筆すべきもので、日本のレタッチ・CG技術部門を代表する一社に間違いない。「商売が成功するというのは技術的にも成功することなのだ」ということを裏付けるものである。どこぞのTV番組ではないが「良い仕事してますなぁ」というのが私の率直な感想である。
広告写真業界の第一線で活躍するフォトグラファーが、企業の想いや商品の魅力を最大限に引き出す写真を「オーダーメイド」で制作している。天王洲のスタジオを振る活用し、アマナグループの原点ともいえる事業である。
ビジュアルコンテンツ制作部門は、広告写真や企業イメージ、Webなどに使用される各種の写真や、2D/3D CGをはじめとするビジュアル全般を制作している。制作物は新聞・雑誌広告、看板、ポスターをはじめ、photowall(後述)まで幅広く、企業の求めるビジュアル戦略の最先端を担う制作物が、多くの人々の目に触れている。
同社では、デジタルカメラの採用や高品位CG制作など積極的にデジタル対応を進め、撮影部門とデジタル部門が総合的なソリューションをお客様のニーズにあわせて提供し、「デジタルのアマナ」という評価はすでに業界では定着している。バーチャルキッチン等、カメラマンの発想で作った仕組みも数多い。商品的には魅力的で、CGの効率的利用という意味では顧客へのアピール度も高い。
あらゆる分野の写真をカバーし、約7,300万点を超えるイメージ点数を持つストックフォト部門は、世界第3位の売上高を誇る。広告・出版をはじめとするプロフェッショナルニーズに応える同社の質の高さは、国内はもちろん世界中のプロフェッショナルから高い評価を得ている。ストックフォト部門もデジタル化を率先して進め、amana.jpはビジュアルのポータルサイトとしてe-コマースサービスを提供している。(画像管理としてADAMと名付けた独自ソリューションを持つ)
前述したものも含め次のような独自ソリューションを持つ。
ADAM/企業のもつ商品写真やヒストリカルな写真などのビジュアル資産をデータベースで管理するソリューション。
photowall/オフィスや商業スペースをストックフォトで活用して空間演出するソリューション。
photoEmotion/企業の受付や公共スペースに置かれた大型ディスプレイに向け、ストックフォトなどの静止画を動画コンテンツとして編集するソリューション
Interactive Flash Video/企業や商品のプロモーションサイトをエモーショナルに表現するソリューション。
その他提携商品としてポートレートを合成するソフト等盛りだくさんだ。
長尾氏がさりげなく語ってくれたCG制作ポイントは実に興味深かった。例えば自動車だったら、カタログ撮影用のモックアップを制作すれば膨大なお金がかかってしまうがCGだったら五分の一くらいで画像を作ることが出来る。簡単のために実写で1,000万円かかるところをCGで250万円だったら、企業側の触手が動くのは当然だろう。ましてやCADの設計図があれば、製品が完成する前にPRツールを作成することが出来るのだ。携帯電話が最右翼だと思うが、めまぐるしくモデルが入れ替わる種類の商品だとGGでカタログ等を作成するしかないというのが現実だろう。
図3のように工業製品カタログの場合は、CADがあるのがCG制作の基本だが、図3のワイヤーフレームは簡単化したものなのだが、実際のものはここに配線図その他のCG画像作成には関係ないものまで付いているわけで、これを以下に取り除くか?がノウハウになってくる。この開発に一年強かかったということであったが、図2のように「いかにクライアントと付き合うか?」「クライアントの開発と付き合っていくか?」守秘義務も含めて会社としての姿勢や体制が重要なポイントになってくる。これさえ何とかなっていれば、後は商品の色変えなどチョチョイのチョイ(までは楽ではないが)とやってしまえるのである。
例えば薄型テレビにしても薄型テレビを撮影すること自体はそれほど難しくも無いが、それらしいリビングを探して、それらしく撮影するのは結構の手間なのである。CGを使ったバーチャルリビングに配置した方が、夕方のイメージや早朝、自由自在に変更可能なのでこれからはCGの利用が急速に増えることが予想される。長尾氏が言われていた9割以上の工業製品の画像がCG化するというのは実に頷ける話である。
(研究調査部長 郡司秀明 2008年2月)
2008/02/21 00:00:00