ところが、製本などの後加工では印刷物としてあるレベル以上の加工仕様や加工品質を満足させようとすると、それなりの加工機器やスキルを要求される。さらにスピードやコストを含めると、印刷会社や製本会社の専門性が大いに発揮されている。
製本とは大量のコンテンツを印刷した後に冊子という実体にまとめることであるが、歴史的には冊子体以前に巻物の時代が長く続いた。巻物は目次がない巨大な1ページの存在であるが、2世紀以降の冊子体の出現によって目次と索引というコンテンツが成立してページという概念ができて、目次、本文、索引が整った本の基本的な形態ができ上がる。辞書や事典、リスト類はページ概念があるからこそ、欲しい情報を容易に探し出せるのである。本には「読む、学ぶ、調べる」という3大用途があり、さらに「使用する」本なのか、「所有する」ことが満足感にもなる本なのかなど、TPOに合わせたいろいろな製本形態を選択することになる。
最近のデジタル印刷機はステープラー(ホッチキス止め)だけでなく、インラインの中綴じ、無線綴じ(くるみ製本)などの製本加工や折り機など加工機オプションが充実してきた。さらにクリアトナー、UVトナー、セキュリティトナーなどによる表面加工、ニス加工など、印刷会社において生産機として使用できるデジタル印刷機の機能が充実してきた。
ところがカット紙タイプのデジタル印刷機は「ペラ丁合→綴じ→製本」が基本である。ペラ丁合の最大のメリットは、表裏2ページという最小単位で製本するので、カラーとモノクロのページが混在するような冊子制作で、折りの制約によるページ台割を意識する必要がなくなる。ページ面付けも単純で、画像形成の方法もオフセット印刷機とは違うので、面付けに関係するような障害は少ないと言える。ほとんどのカット紙タイプ機は最大サイズがA3ノビであるが、オフセットの常識にとらわれずにこのサイズのメリットを生かすことを考えたい。それには小ロットのページ物を効率良く仕上げるには、充実したデジタル印刷機の加工オプションを知る必要がある。
ただし、インライン加工機は専用機ということになるので、投資に際しては稼働率を考慮する必要がある。多種類の加工が予測される場合はオフラインでの加工処理を選択することになり、オフセット印刷と同じ製本加工を行う。
折りの機構については、トナータイプのデジタル印刷では折り目のトナー剥がれが起こることがあるが、これを防止するためあらかじめ筋目を付けてから折る機構を持つデジタル印刷対応型の機種もある。 デジタル印刷機のインラインオプションは針金綴じ(中綴じ)または無線綴じ(くるみ製本)が一般的である。本の開きなどからはノドと平行な紙目を選択したいが、この点はデジタル印刷機の仕様を確認する。
(1)中綴じ
折丁を順に外側の折りをかぶせていき、表紙の背側から本文の折りの中心まで一気に針金で綴じる方式で、あまり厚みのある本には向いていないが、資材は針金だけでありデジタル印刷機ではよく利用される一般的な製本形式である。
製本の構造上、真ん中のページにいくほど綴じの厚さ分だけページの左右寸法が小さくなる。従って、厚い製本の場合にはDTP制作の際に版面の左右とノドのマージンの考慮が必要である。
(2)無線綴じ
丁合が終わった刷り本を揃え、背を糊(ホットメルト)で接着する方法である。
さらにオフライン処理ではページ数が多く厚い本の製本では背糊の接着を良くするために、背にいろいろな方法で切り込みを入れたり(アジロ綴じのミーリングなど)、乾燥時間は長い(24時間)が強力な接着力を持つPUR(ウレタン系接着剤)が開発されている。
(1)上製本
上製本は厚みのあるしっかりとした装丁で、一般的に所有する本になる。仕立てやくるみ方によっても、丸背・溝付き、丸背・突き付け、角背・溝付き、角背・突き付けなどがある。デジタル印刷による写真アルバム製作など小部数の上製本は欧米では盛んになってきているが、国内でも注目され始めた。
(2)並製本
並製本にはくるみ表紙と切り付け表紙とがある。くるみ表紙はさらに、くるみ表紙、継ぎ表紙(表にアート紙、裏に上質紙)、小口折り表紙(別名:がんだれ、フランス装)と呼ばれる方法がある。
切り付け表紙には、中綴じ、足継ぎ(表紙ノド側を裏打ち寒冷紗で継ぐ)、スパイラル(リング綴じ)などがある。
(3)その他製本
そのほかにも天糊、図面(観音、袋綴じ)、アルバム(見開きの片面印刷を貼り合わせ)、和綴じ、経本、帳簿、手帳、契約書など、さまざまな製本方式があるが、これらは通常の製本工程によるオフライン処理で行われる。
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