@1996年2月に設立された「グリーン購入ネットワーク」の1999年10月現在の会員数が約2000団体にまで増加した。
A「オフィス町内会」の「白色度70普及運動」などでの再生紙利用の動きが広がっている。都庁では,1996年10月以降,コピー用紙は全て再生紙に切り替え,関東地区の政令指定都市も,同様に切り替えを実施し始めた。
BISO14000の認証を取得する企業や自治体が,再生紙を使用するケースが急増している。
これらの動きを促進する要因として,古紙再生紙促進センターの「グリーンマーク」表示製品は1999年3月時点で1万6366品目に達し,日本環境協会の「エコ・マーク商品」が印刷用紙で280銘柄,情報用紙で84銘柄に達するなど,環境対応に関する情報環境の整備,拡大がある。
印刷物の主要需要家ごとの動きを見ると,出版業界では,雑誌出版社や大手総合出版社の古紙使用率はすでに高水準にあるし,教科書の再生紙使用が進んでいる。
通信販売業界では,カタログハウスがカタログ用紙を全量再生紙に切り替えたのを始めとして,再生紙の使用量を増加させている企業が増えている。
流通業界を見ると,PB商品では,パッケージを含む素材・原料の選定から,製造工程,使用後のリサイクルに至るまでの環境負荷を減少させることを目指した商品の開発に注力している。
OAサプライ業界での再生紙化は急速に進んでおり,古紙パルプ70%以上配合の再生紙は使用する紙全体の30%に達したと見られている。
以上のような動きも反映して,紙・板紙分野の古紙の利用率は年々上昇し,1998年では対前年1ポイント上昇して54.9%に達し,1999年はさらに1ポイント上昇して55.9%になった。これには,新聞用紙と印刷・情報用紙の古紙利用率の向上が大きく寄与している。過去10年間で見ると,印刷・情報用紙の生産量に対する古紙使用量の割合は,0.13から0.18へ約40%上昇している。紙・板紙全体では8.7%の増加だから,一般印刷産業の身近な分野での再生紙利用が増加していることを示している。
当然,製紙会社の技術開発や製品改良,脱墨パルプ設備の増強などが基盤にある。
日本における環境対応型オフセットインキの生産,普及は,芳香族炭化水素を含まない溶剤を使用したアロマフリータイプのオフセットインキが開発,上市された時から本格的に始まった。それは,1990年代中頃で,現在ではほとんどのインキがアロマフリータイプになっている。芳香族成分の含有率が1%以下であること,印刷インキ工業連合会の「食品包装材料用印刷インキに関する自主規制」で規制された物質を含まないなど,4項目の基準を満たしたインキは,日本環境協会から「エコマーク商品」として認定される。印刷インキのエコマーク商品は,1999年3月31日時点では50件であったが,12月には63件と増えている。
一方,1992年から始まった大豆油インキの使用は,1997年時点ではオフ輪が約79トン、枚葉インキが205トンの合わせて300トン弱(全体の0.2%)であった。これが、1998年には760トン(オフ輪、枚葉合計)になり(ASAのデータ)、同年に出荷された一般用平版インキ(136900トン)の0.55%に当る。
1999年の統計データはまだないが、Soy sealの認定が有るか否かは別にして、大豆油を使ったインキという意味で見ると平版インキの半分以上が大豆油インキになっているとの見方もある。
ASA(The American Soybean Association)からソイ・シール認定を受けた大豆油インキで印刷された印刷物には「Printed with SOYINK」のロゴを使用することが認められているが,このロゴの使用申請をした印刷会社は1999年11月時点で611社で,12月にはこれが700社を超えるという勢いで伸びている。また,大豆油インキを出しているインキメーカーは1999年11月現在20社になっているが,今後の更なる普及を見込んで,各インキメーカーは,既にそれぞれの特色を出した製品ラインアップの開発,販売競争に入っている。
これらの動きの背景には,長らく指摘されてきた世界的規模での異常気象と環境との関わりや発展途上国の急速な経済発展による環境への影響懸念に現実感が出てきたこと,身近には,里山がゴミ捨て場になりつつあることを遠景とした所沢のダイオキシン問題などが基盤にある。一方,出口が見えない閉塞感のなかで,環境対応に新たな切り口を見出していこうという企業側の思惑も強く感じられる。
さらに,環境問題に対する各種の法整備が急ピッチで進んだことは,現在のさまざまな動きに直接的な影響を与えた。京都会議における二酸化炭素排出規制に関する目標値の設定や非常に逼迫したゴミ処理場の残余年数問題に関わる動きなどで,容器包装リサイクル法の施行はそのひとつの典型である。
また,環境対応に関する情報環境の整備も,企業に傍観的な問題意識から具体的な行動を起こさせる促進剤になった。ISO14000,東京都のエコ・アップ事業所宣言,エコマーク認定商品やソイ・シール認定インキの使用を証すなど,企業の環境対応姿勢を外部にアピールできる手段が広がった。日本のISO14000取得事業所数は世界でもダントツの2400になった。ISO9000取得が3000を越えてから,印刷業にも,例えば取得要請の動きなどの影響が出てきたが,ISO14000についても同様の動きになるだろう。
「オープン化する商取引環境の中で,新たなグループ化におけるパートナーの選定基準になる」というのが,ISO9000等についてのJAGATの捉え方である。環境ISOは,ISO9000よりも環境対応素材の使用など見えやすい目標があるので,ISO9000よりももっと早く強い影響が,印刷産業に出てくるように思われる。
いろいろな動きの基盤には,当然,技術面の開発,改善の積み重ねの成果がある。 以上のように現在の動きの背景を理解するならば,この1,2年の動きは,さらに加速度を増して広がっていくといえるのではないだろうか。
(出典:社団法人日本印刷技術協会 機関誌「JAGAT info 2000年2月号」)
2000/02/19 00:00:00