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2001:フォーム・その他印刷の動向

フォーム印刷機は,連続帳票の生産機械から,より多くの製品仕様にフレキシブルに対応できるユニット構成を持った機械へと変身しつつある。
フレキソ印刷は,刷版のCTP化,インキチャンバー,アニロックスローラの改善などの印刷機械の高性能化が進められその市場を伸ばしている。グラビア印刷に大きな技術変化は見られない。drupa2000では,これまで脇役だった新聞オフ輪分野で各社から新型機が出展され脚光を浴びた。

フォーム印刷

フォーム印刷用紙の出荷量は,1995年以降4年連続のマイナスで11.3%減となった。年率3.0%の減少である。デジタル化の進展で,帳票類のペーパー出力が減少してフォーム印刷の需要が停滞し,さらに高速カット紙プリンタが普及してきたからである。 BF(ビジネスフォーム)専業者は,その市場を高速デジタル印刷システムを使ったDPS(データプリントサービス)や,パーソナライズ化したDM分野に拡大しつつある。トッパンフォームズのこの2年間の商品別売上高をみると,BFは1%程度減少しているが,DPSは72億円,商品別売上構成比で14.4%から18.2%へと大幅に増加している。

drupa2000では,フレキシブルに変化する多目的オフ輪が出された。どのユニットにも,オフセットの他,フレキソ,スクリーン,箔押しの印刷装置を挿入でき,さらに加工ユニットとしても,ダイカット,エンボス,スリッター,シーターなどが用意され,紙・カートンボード,プラスチックフィルム・アルミホイル・粘着ラベルなど広範な材料に対応できるものや(ゲーベル「コンビプリント」),各ユニットが単独モーターで駆動されたシャフトレス方式で,オフセット,フレキソの印刷ユニット,各種加工装置の選択と配置が自由となっているので,ユニットの選択により,商業印刷物,ダイレクトメール,ラベル,軟包装などさまざまな製品を作り出すことができ機械(ミュラーマルチニ「コンセプトNT」,ドレント「ビジョンSMR」)などがある。

フレキソ印刷

フレキソ印刷は,オフセットやグラビア,凸版輪転に対抗してマーケットシェアを拡大し,パッケージの印刷方式として支配的になってきた。
フレキソ刷版のCTP化,インキチャンバー,アニロックスローラの改善は,品質向上に大きく寄与している。CTP版の深度は浅いが,より精細な階調表現が可能になり画線再現もより鮮明になる。版厚も薄く,高速印刷での問題が起こりにくいという。

また,フレキソ印刷は,環境面での優位性などから,印刷紙器,ラベル,軟包装の分野で脚光を浴びている。UVインキは,ラベル・タグ分野で普及してきているので,価格は水性インキや溶剤型インキと競争できる水準に近づく可能性が出てきた。折箱の分野でもUVインキの採用は増えており,それが,平版やグラビアからフレキソへの転換を促す要因になっている。今後は,軟包装分野でのUVインキ利用も増加するとの見方もある。

以上のような中で,drupa2000ではこれまでになくフレキソ印刷機の出展が充実していた。
大型の共通圧胴型フレキソ輪転機の新型機が各社で発表された。版胴とアニロックスローラを1本ごとに単独のサーボモータで駆動したギアレス機が大きなトレンドとして目立った。また,版胴,アニロックスローラをスリーブ方式にして交換を容易とし,しかも無段階のサイズチェンジを可能とした機械が主流となってきた。イタリアのスキヤビ社は,8本の版胴スリーブ交換を行う段取り替えの実演を行い注目を浴びた。

大多数の新しい印刷機械のスピードは分速1000フィート〜1200フィートの高速機になりつつある。

グラビア印刷

グラビア印刷市場は,平版印刷,フレキソ印刷にかなり侵食されてきているようだ。
グラビア印刷の期待は,経済のグローバル化のなかで発展途上国の経済が伸び,大ロットのカラーパッケージやカタログ需要が増えることによる市場拡大にある。発展途上国では,インターネットの利用も当面限られるのでカタログが媒体の主体になると見られている。

小ロット化対応の技術開発も当然進められており,8ユニットの印刷機での平均切り替え時間を12分程度でできるようになってきた。また,新しい機械設計によって,機械価格低下の努力もなされている。

製版関係では,銅とクロムの研磨にマイクロ仕上げ技術を導入して,彫刻針,ドクターブレードそしてシリンダーの寿命が伸びた。樹脂ベースのシリンダは現在開発中で,今後2,3年で可能になるという。

新時代の新聞オフ輪

drupa2000の特徴の一つは,これまで脇役だった新聞オフ輪が脚光を浴びたことで,各社から新型機が出展された。
火付け役はハイデルベルグで,同社が新聞輪転機に進出するに当たり,世界の主要新聞社の幹部にインタビューしこれからの新聞印刷機のあるべき姿について徹底的に調査した。その結果得られた結論は,どのページにもフルカラー印刷でき,地域バージョンなどにフレキシブルに対応できることであった。この条件を満足させた新型オフ輪メインストリーム80をdrupa2000で実演した。

従来の新聞オフ輪は紙幅4ページ,円周2ページであったが,この機械は円周を1ページとして,版替えで交換する版数を半減した。同じ生産性を上げるためには,版胴を2倍の高速で回転させる必要があるが,ハイデルベルグはギャップレスオフ輪で培ってきた技術でこれを実現している。もう1つの特徴として,カラー印刷のための4段タワーに加え,5段目に墨版のタワーを用意したことである。印刷中に空いている墨の版胴で版替えを行っておき,印刷終了間際に版替えした胴を印刷速度に同期させるように加速し,瞬時に印刷切り替えを行うものである。

これに対して,新聞輪転機のトップメーカーであるマンローランドも,新型機リジオマンを出展して対抗した。この機械も円周1ページの版胴としたが,ブランケット胴は従来通り倍胴として剛性を確保したものである。

KBA社はさらに将来を見据えた未来指向型新聞オフ輪のプロトタイプ機としてコルチナを出展した。この機械は,水なしオフセットで,版胴,ブランケット胴の各シリンダーをそれぞれ独立単独のモーターで駆動するシャフトレス,ギアレスの機械である。インキローラ群の駆動モーターを含めるとタワー1段に6個のモーター,4段で24個のモーターを装備することになる。

このコルチナも円周1ページの細い版胴方式で,新聞輪転機とは思えないほどコンパクトにできており,印刷ユニットの右半分が右側にスライドして,ユニットの中にオペレータが入って版替えなどの準備作業ができるというユニークな特徴もある。

2000/08/20 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会