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株式会社大熊整美堂

大熊整美堂
【会社概要】

 

住所

 

東京都文京区
年商

 

30億円
従業員数

 

120名
主な仕事内容

 

約7割が出版印刷
設備概要

 

プリプレスから印刷まで一貫設備

【CTPの概要】

 

導入機種

 

SCITEX Lotem 800VL
導入時期

 

2000年4月
フロントシステム

 

SCITEX Brisque4 システム
使用版材

 

サーマル(富士フィルム Brillia LH-P1)
出力版数

 

500版/月

1.CTP導入にあたって
クライアントの多くが老舗の出版社であり,版下支給もまだまだ多く,受注側の思惑通りにはなかなかDTPへ移行できない。2000年の上半期でようやくDTPの比率が6割を超えたところ。CTPを導入しても,なかなかフル稼働は難しいということは充分予測出来たが,今後の技術の方向はCTPに間違いないということでトップダウンで導入に踏み切った。

2.CTPに求めたもの
CTPをカラーマネジメントを行っていく上での必須ツールと位置づけている。カラーマネジメントにより校正を合理化しコストダウンを図りたい。
また,CTPにより省人化とスキルレスを実現したい。将来の若年労働者不足へ備えて,経験や勘に頼る仕事をなくしていきたい。特に印刷オペレータのスキルレスを目指している。現在,数値管理に向けて移行中。

3.投資の採算計算
おおまかな採算計算をした。ほぼ予測通りの結果。

4.顧客の反応
出版社の反応は鈍いが,商業印刷のクライアントは興味を持ってくれている。営業の新規開拓ツールの役割を果たしている。品質向上よりもコストダウンを強調。

5.CTPをどんな仕事に?フィルムとの使い分けは?
出来ればすべての仕事をCTPに移行したい。現状は置き版,再版の可能性があるものはフィルム出力している。

6.色校正の方法は?
自社の標準印刷物とカラーマッチングされたインキジェットプリンタ(O.R.I.S ColorTunerとPM9000C)を推奨している。同意が得られないクライアントに対して,又は特殊は紙を使う場合は,CTP出力して平台校正をしている。平台校正はベタ濃度と中間ドットゲインを本機と揃えて印刷するように管理しており色の問題はない。
あらかじめカラーアート,スーパー・コンセンサス,平台校正,インクジェットプルーフの4種類の校正サンプルと自社の標準印刷物を用意し,クライアントにプルーフの種類を選択してもらっている。品質とコストの兼ね合いから70%のクライアントはインクジェットプルーフを選択する。また,標準印刷物との色差ΔE値を示した色差表を添付している。インキジェットプリンタのほうが色差が少なく安定していることを客観的な数値で示すことで,より説得力を高めている。
さらにCTPとカラーマネジメントのマニュアル(小冊子)を作成し,クライアントに配布している(当社のホームページからもダウンロード可能)。それから,客先のモニタ,プリンタをキャリブレーションするというサービスも行っている。自社の標準印刷物のICCプロファイルをインストールし,客先のモニタ,プリンタで大熊整美堂の印刷物のシミュレーションができる環境を整えている。厳密さを追求するよりも自社の先進性をアピールし,顧客の囲い込みがねらい。
また,CTPの出力カーブ(スクグラ)は,リニアではなくPS版にあわせている。例えば,データ上は75%の網点がプレート上で73%になるくらいに設定している。また1〜2%の網点は焼きとばしている(ハイライトの小点が汚れに見えることがあるので)。

7.稼働状況は?
月間500版程度。月間の全刷版数が4000〜5000版程度あるが,そのうちの2割から3割はCTPに移行したい。出力機の能力には,まだまだ余裕がある。

8.導入前後で変えたこと,変わったこと
・本格的ファイルサーバ(94GB)を導入した。
・社内の下版ワークフロー。
 従来は責了になるとプリプレスで訂正して,工務で下版という流れであったが,フィルムがなくなったので,プリプレスで直接下版するようになった。このため,DTPオペレータの負荷(ミスが許されない緊張感)が高まり,意識が変わってきている。また印刷以降の知識が求められるようになり,印刷機の構造や紙,インキ等々についての教育をしている。同じ建物に全工程入っており,プリプレスの設定ミスが後ろの工程にどういう影響を与えるか,すぐ現場を見せられるので効果的である。
・営業の意識
 営業がCTPの特徴を理解し,それを活かした提案をするようになった。

9.社内的な課題は?
印刷そのものは装置産業であり,今後は数値管理によるスキルレスが進んでいくだろうが,製版は匠の技であり,この伝承が課題である。また従来スキルとともに,カラーマネジメントを推進するうえで,ColorSyncの知識・運用能力の習得が課題となっている。
CTPの稼働率向上に向けては,完全データ入稿による,出力・印刷のみの仕事も増やしていきたい。

10.システム・機材の課題は?
・プレートセッタのマルチカセット化
・メンテナンスフィーや版材価格の引き下げ
・ハイエンドDDCPのコスト引き下げ
 イニシャルコスト1000万円以下,ランニングコスト1枚1000円以下が望ましい。

2000/10/31 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会