DTP豆知識(200011)DTPと製版,インターネット
本コーナーでは,DTPエキスパートを目指すうえで理解しておきたいことを模擬試験形式で解説します。JAGAT認証DTPエキスパート 田邊忠氏に,問題のポイントや重要点を解説していただきます。試験勉強のご参考に,またはDTPに必要な知識の確認にご活用ください。次回,第15期DTPエキスパート認証試験は2001年3月11日に行われます。詳細はDTPエキスパートのページをご覧ください。
問1 DTPと製版
次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。
版下作成と製版が別であった時は,版下の上に製版作業の指示を付けて,次の工程に渡していた。しかし,DTPでは,従来なら製版工程で行っていた作業も取り込まれてくるので,DTP側で製版処理の一部も実行しなければならない。例えば,各種トンボや,塗り足し,ノセやヌキ,また場合によってはトラッピング,カラーパッチ(カラーバー)を処理する。
化粧断裁の大きさを指定したり,重ね刷りの見当合わせに使うのが,[A:(1)トンボ (2)塗り足し (3)カラーパッチ (4)トラッピング]である。ベタや平網などを仕上げ寸法いっぱいに余白なく指定する場合には,[B:(1)トンボ (2)塗り足し (3)カラーパッチ (4)トラッピング]をしておかなければならない。写真を仕上げ寸法いっぱいに余白なく配置するには,写真のアタリを[C:(1)仕上がり線ぴったりに (2)仕上がり線の外側まで (3)トンボの内側に]指定する。塗り足しは英語ではふつう[D:(1)crop mark (2)register mark (3)bleed (4)margin]という。
色の上に別の図形や文字を重ねる時には,画面とCMYBk出力の間で,ノセやヌキの関係が食い違わないことを確認しておく。
カラー印刷に使うプロセスインキは[E:(1)透過 (2)不透過]であり,異なる色版は透かして重ねて印刷される。PostScript出力は基本的には[F:(1)パスの塗りつぶし (2)マスキング (3)透かし合成 (4)トラッピング]により,下の図形をヌキにして,上の図形をノセるので,CとYを重ねた部分をGにするには,アプリケーションで[G:(1)トラッピング (2)マスキング (3)オーバープリント (4)ノックアウト]にしておくことが必要な場合があり,注意が必要である。
DTPソフトによっては,トラッピング処理を[H:(1)毛抜き合わせの部分 (2)単色刷りの部分]に対して指定できるものもある。面付けフィルム出力の前に,印刷の品質管理用の[I:(1)トンボ (2)塗り足し (3)カラーパッチ (4)トラッピング]など,管理用スケールをトンボの外側に入れる場合もある。
■模範解答■
A(1),B(2),C(2),D(3),E(1),F(1),G(3),H(1),I(3)
■出題のポイント■
従来の製版工程はDTP(Desk Top Publishing)のワークフローに組み込まれた。これまで製版工程で処理されていた各種トンボ,塗り足し,ノセ,ヌキ,トラッピング,カラーパッチ(カラーバー)の添付などが,DTPワークフローで処理されていることを理解する。
■問題解説■
化粧断裁の大きさを指定したり,重ね合わせの見当に使うのが,トンボである。位置の基準を示すトンボには,コーナー(角)トンボとセンタートンボがある(
図1)。コーナートンボは2本の平行線で構成される。1本のラインは,製本の段階で化粧断ちをするために使われる仕上がり線である。仕上がり線の外側にあるもう1本のラインは,製版処理に必要な面を示す製版寸法線を示す。そのほかに,製本のために使われ,紙の折り位置を示す折りトンボもある。ちなみに,トンボは英語でregister markという。
製版処理には,このトンボ(仕上がり線)を基準とした化粧断ちを考慮した処理が必要である。ベタや平網などを仕上がり線いっぱいに指定する場合には,仕上がり線の外側までベタや平網を広げておく塗り足しが必要である。これを英語でbleedという。また,写真を仕上がり線いっぱいに指定する場合には,同じく写真のアタリを仕上がり線の外側まで指定しておく。これらの処理が適切に施されていないと,断裁時のズレなどで,ベタ,平網,写真などの周りに,意図しない白い部分ができてしまうことがある。
写真や平網,ベタ刷りなどの薄い色の上に,色の濃い文字や線画を重ねて刷ることをノセという。製版では写真や平網,ベタ刷り部分の中で文字や線画を白く抜き,紙白で表現する白ヌキや,色を付けて表現する色ヌキ処理を行う。カラー印刷に使うプロセスインキは透過であり,異なる色版は透かして重ねて印刷される(
図2)。PostScriptではパスの塗りつぶしにより,オブジェクトを表現する。Post Scriptのアプリケーションで,オブジェクトの重なりであるノセを表現すると,重なりの下にあるオブジェクトの色は自動的に色ヌキされ,上に重なったオブジェクトをノセる。そこで,アプリケーションでCとYを重ね刷りしてGにするには,オーバープリントをチェックしておく。
製版では印刷時にCMYBkの版がズレても,紙の白地が出ないように,トラッピングを行う。トラッピングは,重なり合う部分をどう処理するかで,スプレッドトラップとチョークトラップに分かれる(
図3)。重なりのうち,上の色の面積を拡大するのがスプレッドトラップである。重なりのうち,下の部分を縮小するのがチョークトラップである。DTPソフトでは,重なり部分の製版処理で下地の色を抜いておく毛抜き合わせの部分を,トラッピング処理できるものもある。
また,面付けフィルム出力の前に,印刷品質管理用のカラーパッチなど,管理用スケールをトンボの外側に入れる場合もある。
問2 インターネット
次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。
インターネットはコンピュータネットワーク同士を接続するものである。目的とするあて先への経路を決める装置を[A:(1)ブリッジ (2)ルータ (3)パケット (4)ハブ]といい,インターネットでは経路中の専用または汎用コンピュータによって行われる。経路の途中が寸断されても[A]が迂回ルートを見つけるので,[B:(1)思いどおりにつながらない (2)接続性が高い]。
インターネットは,データを細切れにして1つずつあて先をつけて送る[C:(1)ブリッジ (2)ルータ (3)パケット (4)ハブ]通信という方法をとる。IPパケットのヘッダには,送り元アドレス,送り先アドレス,[D:(1)テキストデータ (2)マシン名 (3)企業名 (4)プロトコル種別],ポート番号などが入っている。使用するプロトコルはワークステーション(UNIX)の標準である[E:(1)TCP (2)IPX (3)HDLC]などである。単位となるネットワークの名前が[F:(1)ドメイン (2)DNS (3)URL (4)ホームページ]である。各装置にはIP アドレスが割り振られ,それに対応するホストの名前は[G:(1)ドメイン (2)DNS (3)URL (4)HTTP]が管理する。
インターネットでは用途ごとにさまざまなサーバがあり,これらが組み合わされて使われている。一般に必須なのが[H:(1)DNS (2)プロキシ (3)FTP (4)RAS]サーバであり,POPサーバ/SMTP サーバは[I:(1)FAX (2)モデム (3)メール (4)プリント]に用いられる。IPパケットの情報がどのサービスのためであるかは,ヘッダ内の[J:(1)アドレス (2)マシン名 (3)ポート番号 (4)テキストデータ]で識別され,HTTPなら80である。
インターネットはその柔軟性から,制作データの送受信だけでなく,管理や得意先サービスにも使われ,ワークフローの根幹となりつつある。広く普及したWWWサーバとブラウザだけがクライアントにあれば動くものとして,ASPやCGIなどによる[K:(1)サーバソフトウエア (2)プラグイン (3)クライアント (4)DBMS]ベースの電子掲示板/電子会議室/スケジュール管理がある。
ASPはWindowsのサーバに限られ,HTMLと[L:(1)Perl (2)C++ (3)VBScriptやJScript (4)SGML]などのスクリプトを使う。ブラウザがサーバに対し,何らかのパラメータを添えてスクリプトのあるURLを要求すると,サーバソフトウエアが処理をして,結果を[M:(1)HTML (2)Perl (3)ASP (4)Java]にして返す。これを利用して,ブラウザが検索要求するとサーバソフトウエアがSQLのコマンドを生成し,データベースにアクセスして,結果をブラウザに送り返すことも行われている。
■模範解答■
A(2),B(2),C(3),D(4),E(1),F(1),G(2),H(1),I(3),J(3),K(1),L(3),M(1)
■出題のポイント■
最近では,インターネットも印刷業界との関係が深くなってきた。しかし,インターネットにはハードウエア,ソフトウエアともに耳慣れない用語が多い。いずれもコンピュータ,通信などで使われてきた用語である。それぞれ,その仕組みとともに整理して覚えておくこと。
■問題解説■
インターネットでは,通信を行う際に,発信地から目的とするあて先までの経路が常に複数本ある。この経路のうち,最も効率的な経路を選択して通信するのがルータである。同時に,ルータは通信中の経路が切断されても,同じあて先に到達するための迂回ルートを見つけるので,インターネットは接続性が高い。インターネットはネットワークプロトコルの一種TCP/IP(Transmission Control Proto col/InternetProtocol)を使って接続しているが,このルータはIP(Internet Protocol)アドレスで経路を制御している。
インターネットはデータを一定の大きさに分割して,そこにTCP/IPネットワークでコンピュータを識別するためのIPアドレスを付けて送る。これをパケット通信という。
IPアドレスはインターネットに接続されているすべてのコンピュータに割り当てられている。LANなどに接続されたコンピュータのIPアドレスは,それぞれ固定されたものである。しかし,公衆回線を使用するダイアルアップIP接続では,プロバイダが自動的にユーザにIPアドレスを割り当てるので,接続する度にIPアドレスが変わる。
IPパケットのヘッダには,送り元アドレス,送り先アドレス,プロトコル種別,ポート番号などが入っている。プロトコルにはワークステーション(UNIX)の標準であったTCPが使われる。インターネットのIPアドレスはすべて[192.168.1.100]のような数字で管理されている。これを,abcxyz.co.jpのように,文字で表現されたドメイン名と関連づけて管理しているデータベースシステムがDNS(Domain Name System)である。
インターネットには用途ごとに種々のサーバがある。そのうち,必須なのがIPアドレスとドメイン名の関連をデータベースで管理しているDNSサーバである。メールを蓄積しているメールスプールから,必要な電子メールを読み出すためのPOP(PostOffice Protocol)サーバ,メールスプールからSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)というプロトコルでメールを配信するSMTPサーバは,それぞれメールに関連するサーバである。これらのうち,IPパケットの情報がどのサービスのためのものであるかは,ヘッダ内のポート番号で識別される。
インターネットの用途,サービス範囲は広がりつつある。そのうちのひとつに,クライアントがWWW(World Wide Web)サーバとブラウザを準備するだけで,ASPやCGI(Common Gateway Interface)などによるサーバソフトウエアが起動して,クライアントに電子掲示板/電子会議/スケジュール管理を提供するものがある。
ASPはWindowsのサーバに限られるが,HTML(HyperText Markup Language)とVBScriptやJScriptなどのスクリプトを使う。WWWサーバはブラウザから要求されたURLを受けて,その処理結果をHTMLでWWWブラウザに返す。SQLコマンドを生成して,データベースを利用した処理もできる。
ちなみに,CGIはWWWサーバから外部プログラムを利用するための標準インタフェイスである。ほとんどのWWWサーバソフトに備わっており,外部プログラムを呼び出して,その処理結果をWWWブラウザに送り返す。HTMLでは不可能なインタラクティブな要素も付加できる。
(出典:月刊プリンターズサークル連載 2000年11月号記事より)
2000/11/09 00:00:00