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さまざまなDRMのスタンス

音楽流通に関して、インターネットではNapsterのようなP2Pによるファイル共有が盛んになり、人々がタダでコンテンツを交換することが昨年夏ころから物議をかもし、裁判沙汰にまでなった。
いままでの有料コンテンツも無料化されてしまうことに対して、特にWEBでのビジネスとしての出版をしているところが危機感をもち、さまざまな方法で自分たちのコンテンツの知的財産権を守ろうとする動きが急になっている。

これはWEBを見るのに登録制にするとか、ブラウザの他に特別のソフトを使って見るなど技術的な防御をするとか、写真に電子透かしを入れるなど、今日さまざまな努力が見られる。これらの技術的な方法は、広義にはDRM(digital rights management)の中に入り、典型的には暗号化ソフトを使ってWEBサイトのテキストや画像をロックし、有料で利用・再利用できるようにするものである。

DRMという呼び方は、ほんの1年半ほど前に起こったもののようだが、DRMはかなり広い意味に使われるようになった。それらを大別すると4種ほどになる。第1は、既存のやり方の延長で、リプリント・再利用時には許可を受けることを主張するもので、そういった許可の仕組みをWEBにも適用する。
第2は、コンテンツの暗号化で、コンテンツホルダーが制限するべき内容を利用者が勝手に流用できないようにするものである。
第3は、コンテントの流通を自由に任せるのではなく、何らかの契約した外部のサービスを使って管理されたやり方で行うことである。代金徴収まで含めたサービスまである。
第4は、ネットワークを監視して、自分のコンテントが不正利用されているかどうか、強制走査する仕組みである。

DRMは目新しい技術ではなく、暗号化も課金も以前から考えられていたのだが、Napster論議を契機に最前線に出てきた。その応用範囲は音楽や映画などから始まって、eBook、e新聞、インターネットラジオ、またはeBayのようなオークションにまで及んでいる。
まだeBookなどはそれほど動いている分野ではないが、アメリカの新聞など早期からWEBにコンテンツを提供している世界では、かなりの取組みが見られた。

基本的にはWEBの新聞は自由に誰でも見ることができるようにしているが、記事の引用などについては上記の第1の方法として、Copyright Clearance Center (CCC)などが数多くの出版社のコンテンツを集中処理するところを使っている新聞社が多い。というのも、DRM以前から同様の権利処理サービスを行っていたからである。

ただCCCの手続きはオンラインで迅速に行えるものではないので、ここと同類のことをオンラインで行えるiCopyrightという会社が活発に動き出した。とはいってもこの会社に権利管理を委託するには2〜3日はかかるという。すでにiCopyrightのアイコンをつけたWEBページは1千万あるともいわれている。記事を引用とかリプリントする側は、内容や目的に応じて2〜7万円くらいを支払うようだ。

第3の方法であるコンテンツの流通業者としてはXeroxから分かれたContentGuardが有名である。こういう業者を使う理由は、コンテンツを守るという理由だけではなく、いかにコンテンツをマーケティングし、広く配布するかというビジネスモデルだからである。
アメリカでは不正利用の取り締まりという点よりも、デジタルメディアのコンテンツのコピーの容易さをビジネスに結び付けようという考えのDRMが発達しつつある。

新聞の場合は不正使用排除のために技術的な縛りを付けてまでDRMをしようと考えはないようだが、特にエンターテイメント系のコンテンツは強固な防止の仕組みを求めている。これは見る層が異なっているからで、そこにDRMが多様になる理由がある。
やはりWEBも法と秩序の世界になりつつある。多くのドットコム企業が疲弊する中で、知的財産権に対する違法行為を防ぐ仕組みがビジネスとしてブームのようになっている。
しかしDRM自体はインターネットのインフラの一部に組み入れられて、広く使われる必須技術となるであろう。

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