5月26日のtechセミナーから有価証券報告書や株主総会の招集通知など,証券取引法や商法で決められた各種書類の電子化についての宝印刷(株)の斎藤俊一氏のお話を報告する。
株式公開企業や上場一部・二部の企業は,年次決算で有価証券報告書を,半期決算で半期報告書を財務省に提出しなければならないし,株主総会前には招集通知関連書類を株主に送らなければならない。こうした書類の記載内容やフォーマットは法令で細かく規定されているが,変更もひんぱんにあり,企業の担当者がフォローするのは大変である。そのため宝印刷では,書類の印刷だけでなく,法令の変更に対応した書類の中身を制作するためのアドバイスを行っている。
電子開示制度は,書類の提出を電子媒体にすることで提出側の事務負担を軽減し,財務局側の受理・審査・保管・縦覧事務を効率化し,さらに投資家の企業情報への迅速公平なアクセスを実現しようとするものである。 監督官庁には株主総会で承認された有価証券報告書を提出するが,多くの企業が3月期決算で6月末に株主総会が集中する日本では,監督官庁への書類提出も6月末に集中し,財務局の窓口に列を作って審査を待つことになる。審査の受付印をもらったあとも,株式公開企業は日本証券業協会に,東証上場企業は東京証券取引所に,それぞれ有価証券報告書を届けねばならない。 電子開示制度になればインターネットで有価証券報告書などを送付し,受け付けた財務局側から日本証券業協会・証券取引所に送付されるので提出企業側の負担が大幅に軽減される。また,財務局での受理・審査・保管・縦覧などの事務は,紙媒体の閲覧からパソコンによる閲覧に変わり,提出後すぐに開示されるようになる。財務局では行政サービスとしてインターネットによる翌日公開も計画している。
宝印刷が顧客を対象に行ったアンケートでは,2001年6月から電子提出を行うという企業はせいぜい2割程度でほとんどは様子見である。2001年6月は年次決算なので,本書類の有価証券報告書に株主総会の招集通知や決議通知もデータ化して添付しなければならないためだと思われるが,半期報告書は有価証券報告書よりボリュームも少なく他に提出する書類もほとんどないので,11月の半期報告書提出時には電子提出が増えると予想している。ちなみに,3年間の任意提出期間中は紙でも電子提出でもどちらでもよいのだが,一度電子提出したら,それ以後は紙媒体で提出することはできない。このことも顧客が電子提出に二の足を踏んでいる理由だと思われる。
HTMLではレイアウトにもかなり制限が加わる。印刷物ではごく普通に使用していた長体,偏平,斜線,複数行をくくるカッコ,均等割付,縦書きなども使用できない。 以上のようにEDINETはHTML形式で稼働を開始することになる。しかし,大蔵省は当時,XMLによるデータベースを一般投資家に提供するのが目的のひとつだとしていたし,アメリカでもヨーロッパでもXMLを目指しているから,今回は電子提出の敷居を低くして運用しようということであり,段階的にXMLを目指していくのではないだろうか。
アメリカの公認会計士協会が中心になって開発したXBRL(eXtensible Business Reporting Language)は,XMLを利用して財務諸表で扱う勘定科目をデータベースで扱いやすいように体系的に整理しようとするものだが,日本でも日本公認会計士協会が音頭を取って,日立製作所,宝印刷,亜細亜証券印刷など7企業3団体によるXBRL Japanが2001年4月に発足した。財務諸表(貸借対照表,損益計算書,製造原価報告書など)で使用される専門用語についてXMLでコード付けしてリストを作成し,有価証券報告書で使用している専門用語の標準化をめざしている。これが実現すれば各種の書類からXBRLで記載した情報を取り出して分析できるようになるだろうし,統一したコードが割り振られて,どの勘定科目がどのコードに入るということが決まればシステムも更新しやすくなる。さらに,XBRLで有価証券報告書などが提出されるようになれば,投資家は提出と同時にその情報を入手できるようになる。
一方,印刷出版関連を中心に広くコンテンツにかかわる業界が協同して,インターネット・XMLのビジネスモデルを開発するためにXML Publishing Forumが発足した。発起人には金羊社,宝印刷,西川印刷,欧文印刷などの印刷会社のほか,日本エクセロン,ジャストシステム,大日本スクリーン,インフォテリア,アドビ,マイクロソフト,大塚商会などのメーカーや販社など16社が名前を連ねている。(テキスト&グラフィックス研究会)
◆出展:JAGAT info 8月号 より
2001/08/15 00:00:00