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XMLによるダイナミックな電子カタログ構築

日本エクセロン株式会社 マーケティング部 久保田 弘

XMLのキーワードは「スピード」と変化に対応する「柔軟性」

 企業のITシステムは常に変化を求められている。ネットビジネス時代では,従来のように最初の段階でシステム開発における要求仕様を完全に満たすことに注力するよりも,ビジネスの仕組み自体の流動性を考慮し,暫定的な仕様で短期間に柔軟性の高いシステムを構築して,あえて変化を受け入れようとするほうが現実的といえる。このような変化に対応するスピードを支える,柔軟性と拡張性を併せもったシステムを実現するテクノロジーとは何だろうか。その答えが「XML」だ。

 XMLは階層でデータを表現するため,複雑なデータ構造をもつ業務アプリケーションに適している。また,タグ「< >」を使ってデータ構造自体をユーザ自身が自由に定義できるというオープン性をもつ。さらに,インターネット通信の標準フォーマットとして,情報交換とさまざまなシステム間の連携を低コストで実現する鍵となり得る。以上の理由から,XMLへの期待は急速に高まってきた。

 しかし,データ形式としてXMLを利用するだけでは,XMLのもつポテンシャルを享受することは困難だ。例えば,従来のリレーショナル・データベース(RDB)のように,スキーマを慎重に定めてからデータを格納するシステム開発では,データ構造に変更がある度に,煩雑な設計変更が必要となる。そのため,サービスの一時停止やシステムの再構築を余儀なくされてしまう。結果的にXMLの最大のメリットといえるスピードと柔軟性,拡張性を犠牲にすることになる。

 XMLの特性をいかんなく発揮させるには,ダイナミックなプラットフォームが不可欠だ。その選択肢のひとつとして,エクセロン社の「eXcelon Extensible Information Server」(以下eXcelon)に代表されるXML専用のデータベース(XMLデータサーバ)が注目を集める。

XMLデータサーバによるダイナミックな電子カタログ構築

 XMLとXMLデータサーバの代表的な利用例のひとつが,商品の電子カタログである。従来の商品カタログにおける問題を考えてみよう。取り扱われる一般商品の特性として,まず第一に商品数が膨大で,カテゴリー(商品体系)が複雑であることが挙げられる。次に,最近ではモデルチェンジが頻繁で商品サイクルが早く,商品の組み合わせ条件が複雑であることが多い。そのため,「データ作成や紙ベースのカタログ編集コストがかかる」「カタログ内容のタイムリーなメンテナンスが困難である」「情報掲載が追いつかなくなる」などの問題が指摘されている。

 企業間電子取引(BtoB),BtoCを問わず,ECサイトには,電子カタログの機能が求められる。電子カタログでは,多種多様な商品のデータを管理する必要がある上,商品の種類や商品別のデータ項目は頻繁に変更される。そのため,従来のリレーショナル・データベースとHTMLの組み合わせによってシステム構築を行い,商品データを管理しようとすると,頻繁にテーブルの定義を変更することになる。多くの場合は,変更ごとにシステムを停止させて,プログラムの修正やデータベースの再構築を行わなければならない。

 eXcelonのダイナミックなXMLデータ管理技術を使えば,この問題は完全に解決することができる。既存のシステムやサービスを停止することなく,データ構造の変更をダイナミックに行うことが可能となる。厳しい競争と変化にさらされているECサイトに限らず,商品カタログがビジネスに不可欠な企業においては,このオンラインによるデータ項目の追加・更新機能(エクセロン社ではダイナミック・モデリング機能と呼ぶ)は,従来のデータベースとは一線を画すものといえる。

リアルタイムな変更のために商品カタログのWeb化を実現

 パイオラックス(本社:横浜市,加藤一彦社長)は1931年創業,弾性技術のパイオニア企業である。
 自動車関連分野の精密金属バネや工業用プラスチックファスナーなど,1万5000〜2万点にも及ぶ膨大な製品ラインナップをもっている。従来は個別の商品ごとに,紙ベースのカタログを何種類も用意していたが,1994年,これを1冊にまとめた総合カタログ制作をきっかけに,CD-ROM化などの電子化構想を開始した。しかし,当時はCD-ROMを渡しても閲覧できない顧客が多く,従来どおりの印刷物を製作するにとどまった。

 再びカタログの電子化が検討されたのは1999年2月のことである。総合カタログの2回目改訂時のことである。CD-ROM化はもちろん,Web化などのメディア面も再検討され,最終的にWeb化することで意見が一致した。その背景には,インターネットの急速な普及はもちろん,Web化すれば新商品の登場時の差し替え版の作成や,台帳管理面の煩雑さといった印刷物特有のウイークポイントが解消できるのでは,という期待があった。

 商品情報の変更にリアルタイムに対応するために,カタログのWeb化を決め,1999年7月,プロジェクトチームを設置して電子カタログの仕様検討を開始した。自動車メーカーや二次部品メーカーが顧客の90%以上を占める同社のカタログは,メーカーの設計部門担当者が主なターゲットとなる。従来のカタログの場合は,掲載商品をもとに,サンプルの作成依頼があるケースも多く,カタログ自体が大切なリファレンス資料として活用されていた。そのため,Web化に当たっては,プリントアウトのしやすさを考慮することが当初から検討された。

 さらに,Web化する以上,プロジェクトは単なる商品紹介にとどまらず,取引先とのデータ交換など,以降の機能拡張も視野に入れたいと考えた。具体的には,詳細図面や生産情報などとのリンクや,将来的にEDI(取引先との電子データ交換)機能をもたせることなども検討した。その結果,単なるHTMLによるカタログ製作ではなく,XMLを使うことになった。従来,それぞれのアプリケーションを利用して,社内データベースから閲覧していた在庫情報や詳細図面などのデータも,XMLであればWebベースで効率的な連携が可能になる,という判断だった。

(出典:月刊プリンターズサークル連載 2001年11月号記事より)

2001/11/03 00:00:00


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