枚葉印刷機の主流になる両面機
PRINTEK TOKYOと東京グラフィックスフェア合同展が、8月28日〜31日の4日間、東京国際展示場で開催された。以下に、同展示会を機に発表された印刷・後加工分野の技術、設備について、枚葉印刷機の傾向を中心に報告する。
全体としては、新しいコンセプトや技術の紹介ではなく、いまお勧めの製品はこれです、といった内容が主体だったように感じられた。
花盛りの両面専用、兼用印刷機
枚葉印刷機で各社が力を入れてアピールしたのは、両面印刷機や片面両面兼用機である。それ自体が新しいということではないが、各メーカーとも、新しい受け渡し機構、前後工程との連携による格段の生産性向上、あるいはバリエーションの豊富さや低価格など、それぞれにテーマを持ってアピールをしていた。
4C/4C専用機は、オフ輪の小ロット対応の進展によって市場を侵されつつあった枚葉印刷機が採算ロットの境界を押し戻すものである、という位置付けを数年前に書いた。最近では、新たな機械を導入するときに、小型のオフ輪を入れる代わりに両面専用機を入れるオフ輪業者も出始めたというが、それは、先のような意味をオフ輪業者の側から認めたということではないだろうか。もちろん、小ロット化のさらなる進展やぎりぎりのところまで落ちつつある価格のなかでの損紙対策等の観点もあるだろう。
片面8色、両面印刷兼用機の場合には、両面印刷における生産性向上とともに、たとえば4色以上を使う高品位印刷にも使えるという点が両面機との差別化になる。
競争力強化の新たな手段
しかし、ここへきて両面専用機、片面兼用印刷機への関心が高まってきたのは、後述のような脱技能化、省人化技術が当たり前になった現在、短納期、低価格対応で差をつける競争力強化設備としてであろう。ひとつはワンパスでの両面印刷による時間短縮メリットがある。また、設備更新に当って、2台あるいは3台の4色機を1台の両面、片面専用機に入れ替えて人員削減によるコストダウンを図る等である。
技術的な面からは、各ユニットでの準備作業時間が各種のプリセット機能や自動化機構の採用によって非常に短くなって、多くのユニットを持つことによる実稼働率上の不利さが問題にならなくなってきたことが挙げられるだろう。さらに、片面印刷専用機と比較しての両面専用機、片面兼用機それぞれに指摘されてきた品質面での短所の改良も進んでいるということもあるだろう。
多数紹介された小型両面・片面兼用機
今回の機材展で目立ったのは、半裁以下の分野で各社が新製品を出し、枚葉印刷機の世界では片面両面兼用機が標準的な機械になっていくと思われるほどの賑わいを見せたところである。
小森コーポレーションは、菊半裁8色反転機「リスロン26P」を発表した。また、小規模印刷業務向けには菊半裁で反転機構付きの「Spica」がある。
リョービイマジックス(株)は、反転装置付き菊4裁寸伸び4色機「RYOBI 524HXXP」を新製品を発表している。盛りだくさんの自動化、省力機能を細かく紹介、アピールしていた。
(株)桜井グラッフィックスは、昨年発表して好評を得た菊半裁4色両面兼用機の発展機種として菊半裁5色両面兼用機「オリバー566SIP」を発表。統一した設計思想によって大幅なコストダウンをして低価格を実現した。
篠原商事(株)は、菊半裁寸伸び4色片面・両面兼用機「シノハラ75WLP」を発表した。パーツ類の共通部品化等によって従来機よりも安い価格を設定している。また、同社の従来機比較で設置面積を36%削減した点を強くアピールしていた。
厚紙のワンパス両面印刷を可能に
技術的な面での新しさをアピールしたのが三菱重工である。同社は、片面・両面兼用の「Rシリーズ」と両面専用の「Pシリーズ」に加えて、新開発のタンデムパーフェクター「TPシリーズ」を発表した。これは、専用の裏刷印刷ユニットと通常の片面印刷機を新開発の連接ユニットで接続したものである。裏面印刷後に反転することなく表面印刷を行うので両面印刷に付随するさまざまな制約条件をクリアし、厚紙のワンパス両面印刷も可能したという。
前後のリンクによって生産性を飛躍的に高める
ハイデルベルグは両面・片面兼用機自体をアピールするというよりは、菊全版8色両面兼用機SM102−8−Pを中心に、コストパフォーマンスに富んだ新開発の品質管理装置「AxisControl」を搭載したSM74―4−PHで本機校正を行い、8色機にImageControlとCutstarを繋いで、各システムを紹介するとともに、8色機の生産性を飛躍的に高めるシステム運用に力点を置いて紹介した。
多彩さを増し広がる枚葉印刷機の自動化機能
今回の展示会で感じられるのは、高生産性をもたらす各種機能が、さらに小型機の分野でも一般的になってきたことである。
半裁4色機に装備されている自動化、省人化機構として、半自動刷版交換、反動コッキングを含む版見当リモートコントロール、CIP3/CIP4対応インキプリセットシステム、印刷結果測定値によるインキ量自動調整、版上の湿し水量測定によるクローズドループでの湿し水量調整、そして各種の自動洗浄機構がある。
品質の安定、向上の面では、刷り出し、刷了時におけるインキングローラー上のインキ量レベル設定、インキローラ温度調整機構あるいは非接触排紙胴やエアーガイドがある。15000回転での運転を支える機構としては、給紙部の静電除去、排紙部のカール除去装置、そして各種の検知機能(引針センサー、2枚検知、給紙遅れ・斜め検知等)がある。
効果的な投資は印刷会社次第
また、印刷ユニット数、インラインコーティングユニット(アニロックスローラを使用し、樹脂凸版によるスポットニスも可能)、あるいはIR,UV乾燥方式なども、利用各社の状況に応じて多様な組み合わせができる様にもなっている。各印刷会社の事情に合わせた、より効率的な設備導入をすることが出きるようになってきた。
ただし、それは、受注実績データと社内、外注での印刷実態を付け合わせた実態分析ができる、あるいは次ぎの明確な製品戦略が描けるような企業に限っての話ではある。
熱が冷めた?環境対応製品への関心
つい最近までかなり盛り上がりを見せていた環境対応だが、今回の展示会ではあまり目立たなかった。印刷インキ関係では、VOCゼロのインキやハイブリットインキになるが、この1年かなり宣伝はしてみたものの印刷会社側の反応がいまひとつだったのだろうか、今回は地味な展示であった。その中で、ハイブリッドインキを使用した薄紙専用印刷をする印刷会社のPRがあったが、同社にとっては、差別化の度合いが鮮明になって好都合かもしれない。
(出典:「JAGAT info 2002年10月号より)
2002/10/02 00:00:00