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印刷営業の「売り込み方」教えます

営業戦略コンサルタント 山田英司

営業活動に工場や設備機械の話は要らない
少々語弊があるので「営業の初期段階では,工場や設備機械の説明は要らない」に言い換えておく。営業活動には,売り込み用の商品が必要なのだが,今はどの会社もそれがない。まず,営業用カタログの「当社の主な製品」という案内欄を見るとそれが一目瞭然である。
[某印刷会社3社の場合]
X社 ダイレクト印刷・はがきプリントシステム・フィルム封筒・オリジナルポリバック
Y社 データベース設計・Web配信事業・社内文書作成フロー構築
Z社 名刺・封筒・オリジナルカレンダー・チラシ・カタログ等,商業印刷全般
会社概要に出す情報ならこれでいいかもしれないが,初回訪問時に出す営業用チラシにはこれでは全く通用しない。例えばこんなのはどうだろう。
・スーパーでの平日祭事集客用チラシ企画・制作
・医療メーカーの新規開拓用DM
・住宅展示場での新規顧客プレゼンテーション用カタログ
少しでも具体的に書いてあげると,お客様に分かりやすくなる。一つひとつの事例写真と活用場面写真などを付けて表現すれば,上々である。

あなたは,営業マンに輪転機を担がせる気か?
印刷会社の経営者と話をしているとそんな感じがしないでもない。会社案内やパンフレットにも設備の写真がこれ見よがしに掲載されている。しかし上述のように,情報を少しお客様側に立って見やすくすると,初期段階でのアポイントの獲得率が確実に変わる。早速,試してみてはいかがだろうか?
「ウチは強み商品がないんです」と言う経営者や幹部の方は多い。しかし強み商品の守備範囲は広いのだ。考えようによっては,元気で明るいスタッフが提供するサービスも商品といえる。「えっ,それが商品?」そんな顔をしないでほしい。なぜなら,お客様が欲しいとイメージするモノすべて「商品」ということができるのだ。そう考えると先ほどから出てくる高価な設備施設は,お客様が欲しいモノからは一番遠いことがご理解いただけるだろう。
例えば,営業スタッフや制作スタッフの明るい顔写真とコメントを入れた営業ツールを新規開拓の武器に使っている印刷会社は少ない。
『写真掲載中の5名の営業スタッフから,どうぞお好みのスタッフをお選び下さい! そのスタッフをあなたの会社の担当とさせていただきます!』
私の指導先では,こんなキャッチコピーの営業ツールを初回訪問で印刷物の発注窓口である担当者宛に置いてくる。そして,次の日に電話をするのだ。大概の会社はそんな営業ツールなら一度は目を通してくれる。
営業マン「昨日,弊社の案内を置いておきましたが見ていただけましたか?」
お客様「この写真の中で,あんたはどれ?」
営業マン「私は,左端です」
お客様「私は,右端のほうの人がいいなぁ…」
営業マン「そうおっしゃらずに…」
営業経験がある方ならだれもがこんなシーンを想像できるはずだ。緊張しながら初めてのお客様に電話をした時,相手から会話があればとても救われる。商品(笑顔のスタッフ)を掲載する意味が,お分かりいただけただろうか。

受注活動を流れと目的をもったストーリーにする
営業の流れ(「出会い」から「受注」まで)について細かく設計できていない印刷会社が多い。怖いくらい行き当たりばったりという感じだ。これは,当然「既存の深堀り」や「受注促進」の営業にも影響する。具体的な方法を指導していないため,ほとんどの営業活動ができていないというのが実態。提案営業など論外である。そもそもお客様の話も聞けていない状況がある。また同行営業をすると分かるが,お客様のほうも営業マンにあまり期待をしていなかったりする。
[新規開拓マニュアル事例]
最初の訪問ではコレを持っていって,「●□〜」とだけ言ってきなさい。ここでも目標は名刺(担当者のモノでなくてよい,ただしその場合は担当者の名前だけ聞くこと)を頂くことだ。
○窓口担当者がいた場合
担当者にその場で会えたら,ツールを渡して無駄な話はせず,次回アポを取り訪問したい旨のみを伝えること。いきなりの訪問なので,絶対自らは滞在時間を増やしてはならない。
○窓口担当者がいない場合
担当者に,明くる日に必ず電話で着荷確認を取ること。言付けたツールが担当者の手元に行っているかどうかをチェックするためだ。
私の指導先では,このようなマニュアルを「出会い」から「受注」まで作成し,持参する営業ツールを確定させ,受注獲得率を2倍以上引き上げている。あなたの会社もぜひこの設計図作りを始めてほしい。

印刷は工程が命!
しかし,営業では工程をまるで無視!

この厳しい時代,「行ってこい!」の掛け声だけで受注が取れるほど甘くはない。先ほどの新規開拓マニュアルは一つの目安であるが,私はさらに現場で細かい指導をする。とにかく,最初の出会いシーンの営業目標は件数を稼ぐのが使命である。悠長に印刷や紙の話などしていられない。相手のお客様企業の名刺とターゲットである発注担当者の名前さえ分かれば,もう用はない。
こうして,見積もり依頼にこぎ着けるまでの仕事を全部一つひとつ分解し整理すれば,それぞれの仕事は単純な業務になる。たとえ新規開拓の営業といえど,印刷の工程と同じで細かい業務の積み重ねに過ぎないのだ。
これは,言わば階段のようなものである。もちろんお客様のほうが階段を上がる。階段自体が営業の設計図。一段一段が各々の業務(名刺獲得・ターゲット名前獲得など)である。お客様が下から上を眺めて登って行くわけだが,お客様のほうがなぜか第一歩の段が見つけられないで立ちすくんでしまっているというのが現実。それは,印刷会社の営業マンが用意する,最初の第一歩目の階段が,あまりにも高すぎてお客様からは見えないということである。各段に用意される営業ツールも同じ。訳の分からない物や専門用語だらけの物も多い。
営業用名刺・セールスレター・営業用チラシなど,これら全部がその階段を上がりやすくするための手伝いをしてくれるのだ。ここだけの話,現実は今の営業ツールが,営業のじゃまになっている会社も多いのではないだろうか。

JAGATでは,山田氏による個別指導を元に,研修のインターバルに営業活動を行い貴社の新規開拓を実現する営業支援プロジェクト「実現!印刷新規開拓営業塾」を開催しております。次回は1月24日開講。詳細はhttp://www.jagat.or.jp/seminar/をご覧下さい。(マーケティング部)

(JAGAT info12月号より)

2003/01/09 00:00:00


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