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デジタルプリントはバリアブルプリントに焦点を移す

ANSI規格の中のグラフィックアーツ関連を扱うCGATSは,PIA下のデジタルプリントカウンシルの要望を受けて,2002年からバリアブルプリント用言語PPMLの取り扱いをスタートした。CGATSは,印刷の将来はオフセット印刷などと同等にデジタルプリントが位置付けられると考え,バリアブルデータプリント(VDP)という言葉を使い始めている。しかし現実にはVDPにはさまざまな困難があり,その最大の問題点は,ソフトやワークフローに依存した,それぞれのシステム専用のデータを用意しなければならないことである。

バリアブルプリントのため,IBMならAFP,ScitexはVPSと各社が独自のデータフォーマットを作ってきたが,これではデータの相互運用性や再利用に問題がある。drupa2000では,agfa,キヤノン,IBM,Indigo,Scitex,Xeikon,Xeroxなどが「これからの共通のデータフォーマットは,XMLをベースとしたPPMLだ」という話をした。その後,PPMLもバージョンアップを繰り返し,ハードウエアもソフトウエアも含めて対応した製品が出始めるようになった。

CGATSがとり上げたPPML/VDXでは,VDXがバリアブルデータエクスチャンジだとことわっているのも変ではあるが,PDFだけを対象にし,PDFの中にバリアブルデータを埋め込むことをPDF/Xと想定している。つまりPDFに対してPDF/Xがあるように,PPMLに対してPPML/VDXという,若干使い方の制約をするものの,いくつものシステムを用意しなくても簡単に扱えるものの開発を考えている。

国際規格ISOのレベルでは,日本から提案した標準画像のSCIDや,TIFF/IT,PDF/Xなどの規格開発を行っているISO/TC130(Graphic Technology)が,2003年になって新プロジェクト(ISO/AWI 16612)としてPPML/VDXに取り組み始めた。PPMLは,高い水準のアプリケーション開発の方向と,簡易な使い方の開発の進み方の2つの方向性がでてきたことになる。

今後どうなるかを考えると,PDFの安定運用を考えたPDF/Xの普及に時間がかかっているように,PDF/XベースのPPML/VDXの方が遅れてしまう可能性もある。JAGATが2001年に調べたバリアブルプリント事例では,一番多かったのはDMで,賞状,チケットと続いており,大半が名前や住所の差し替えプリントであった。これらテキスト主体でPDFを云々するまでもなく進んでいる分野は多くあり,逆に簡単な応用ではPDFの出番がなかなかないかもしれない。

プリント・オンデマンドやオンデマンド印刷が小ロット分野でオフセット印刷に対抗し難い現状では,デジタルプリントはオフセットにはできない極小ロットやバリアブルプリントに焦点を移すだろう。PODiのGovil氏はPAGE2003で「デジタルプリント=バリアブル」という定義付けをし,XML化とともにPPMLが伸びると説明した。オフィス用アプリケーションでバリアブルプリントが実現するのは間近かもしれない。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 203号より

2003/04/08 00:00:00


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