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企画からデザインまでトータルプロデュース

顧客の営業活動支援の方法は,各社さまざまであると思われるが,今後は顧客とともに考え新しいものを生み出していく過程が必要になってくるのではないだろうか。
そこで,今回は企画からデザインまでトータルプロデュースし,顧客のニーズに的確にこたえる,株式会社ラピトの代表取締役社長高岡明彦氏に同社の姿勢を伺った。

顧客と密に話して一緒に作り上げていきたい
大阪市に本社のあるラピトは,クリエイティブスタッフによる企画・デザイン制作から各種印刷を始め,大判出力,製品加工,梱包発送業務一式まで一貫したサービスサポートを展開している。業務内容としては,デザインを基本にしたさまざまなビジネスシーンのニーズに応えることである。
企画提案から行うので,顧客とは直受けになる場合が多い。顧客と密に話して,一緒に苦労して作り上げていくスタイルにこだわっており,その方がいいものができると確信している。
代表の高岡氏はデザイン関係の学校を卒業すると大阪の印刷会社に就職し,そこで長くレタッチに関わっていた。ところがDTPの導入でカラー製版の分野が変貌していくことを実感した。Macintoshを目の当たりにして,これはかなわないと思ったそうである。習得するのに何年も掛かった技術が,わずか数カ月で誰にでもできてしまう。そこで自分を試すため営業職への配置転換を会社に申請する。役職を外してもらい,一営業マンとして再スタートしたのである。そこではルートセールスにとどまらず,新規開拓に集中したり,SPツール・販促グッズなどを受注していたそうである。営業で自己のスタイルを確立して,独立しラピトを創業したのが,1998年5月であった。当時は,女性スタッフ2名にMac1台と大判プロッタ1台のみで始めた。こだわったのは適正価格と品質,デザイン表現である。
その後,従業員も増えサービスの幅を広げたころ,外食産業のUCCフードサービスシステムズ株式会社の仕事に出会い,実にたくさんのことを学んだという。「その時がうちの転機でした。自社のターゲットをうまく絞れたし,毎日がチャレンジの連続でした。育てていただいたという気持ちが大きいです」。
大手の外食産業チェーンの仕事をこなしていく課程においてノウハウが蓄積されていった。その結果として,同社の顧客は飲食業が多い。

営業はプロデューサーとして販売サポート
同社の営業は,プロデューサーとして飲食店舗の販売サポートをする。大切なのは画一化ではなく1店舗ごとの特色を打ち出し差別化を図ることであるという。店の立場に立ちヒアリングとコンサルティングを行い,明確な戦略を打ち立て,イメージアップと売り上げ貢献を図る。「お店をどうしたいのか」「どうアピールしていきたいのか」などの要望をじっくり聞くことから始まるという。販促のためにはさまざまなSPツールが必要になるが,単に印刷物の作成にとどまらず,さまざまな観点で相談に乗る。メニューの提案からお店のコンサルティング全般を引き受けることもある。内装外壁,立地条件,看板の位置や見え方などもアドバイスする。入り口付近に植物が植えられていて入りにくいことを指摘したり,POPが目立つように置き場の位置を考えたりもする。
大切なのは,お店全体のバランス感覚を考慮して,コンサルティングとデザインをすることだそうである。顧客の商売繁盛のための強力なサポーターになりたい,という姿勢で臨んでいる。
ポスターなどは大判プロッタで対応しているが,店頭に飾る懸垂幕は,耐久性の問題で,3MのDSP-1300Arizonaを使用している。直接インクジェット6色インク使用でハイクオリティなビジュアル提供が可能である。タペストリーやのぼり,フロアウィンドなどに使用し,あらゆる空間を有効活用できるよう提案している。
またたとえチェーン展開の飲食店で本部が統括しているようなところでも個店対応しているので,バナーやPOPなど店舗ごとの特色を出すようにデザインから工夫している。地域別,店舗別の限定モデルを提案し,全店共通のツール等を上手に使い分けしている。

東京進出でMBEのフランチャイズに加盟
2001年になると大阪の天満で窓口営業の出力センターを2店舗オープンさせる。大判出力専門とオンデマンド中心の2店舗である。それは同社の2つの方向性を表している。飲食業界向けとは別に,新たな事業の柱として広い層からの売り上げを狙ったものである。設備をそろえることにより内製化を図ることでもあった。
またその年の10月には東京に営業所を設けた。東京に進出してみて,東京の方が長年お付き合いのある企業を大切にする,という印象を受けた。価格や技術よりも商習慣を大切にして,面談してもなかなか新規受注にまで結び付かない。無名に近かった当時のラピトが東京で新規開拓をするにはそれなりのネームバリューが欲しいところだった。
そこでMBE(MAIL BOXES ETC.)のフランチャイズに加盟し,2003年3月27日にMBEガーデンエアタワー店をオープンした。MBEは,世界39カ国4491店舗(2003年2月現在)の展開をしているビジネスソリューションセンターである。日本ではファミリーマートと伊藤忠紙パルプが出資しており,フランチャイズの店舗が増えている。MBEの特徴は出力ショップの形態だけでなく,コピーサービス,DTPから印刷,データ入出力・スキャニング,製本・ラミネート,文具販売,DPE,私書箱レンタルのMailBoxサービスなどがあることだ。ガーデンエアータワーは東京・飯田橋にある6000人以上を収容する高層ビルであり,ランドマークのビルに店舗があることが気に入った。「あなたのビルにビジネスコンビニがあります」というスタンスで事業展開していければいい。

4色機導入でより充実した印刷物提供へ
この5月には,大阪本社の裏手にある3階建てビルに菊半裁4色機とCTPを導入する。モトヤ,日本アグフア・ゲバルト,リョービイマジクスの3社によるトータルプロデュースにより実現した。デザインから大判出力,オンデマンド印刷を内製化していた同社だが,これにより印刷工場をもつことになり,インプットからアウトプットまでより充実した印刷物提供を行えるようになった。
現在社員数は40名を数えるまでになった。ほとんどが35歳以下の若い社員が活躍しており,教育に力を入れている。
また飲食業界で得た知識を生かし,他業種に応用していくことも視野に入れている。ブライダル業界向け,美容サロン向けなどに特化したサービス展開も行っている。
今後は飲食業界にも進出していくことも考えているそうである。ビジネスコンビニと飲食業のコラボレーションを実現し,ビジネススタイルを変えるような空間を築き上げていきたい,と抱負を語っていた。

JAGAT info 2003年5月号より

2003/05/27 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会