2003年7月25日
Leonardo G. Manalastas,Jr.氏(Philippine Printing Technical Foundation理事)
業界団体
業界が発展するには、適切な団体の存在が欠かせません。フィリピンにはPhilippine Printing Technical Foundation(PPTF)があります。政府もこのような団体と一緒に活動することが重要だと考えるようになりました。
●印刷需要について
<輸 出:>
現在の印刷マーケットはほとんどが国内向けですが、徐々に海外を伸ばしています。それは国内よりも海外の方に大きなマーケットが存在することに気が付き始めたからです。
印刷物の輸出も徐々にですが伸びてきています。95年に521万ドルであったのが992万ドルに増えています。率にして18.48%の伸びです。
輸出される印刷物の内容は、クリママスカード、その他グリーティングカード、書籍/ブロシュア、ラベル類、定期刊行物、雑誌、などと続いています。
印刷物の輸出の相手国は、一番がドイツ、ついでアメリカ、日本、香港、シンガポールという順番です。
書籍の輸出が着実にのびました。95-99年で3.2倍に伸びています。
<輸 入:>
今度は印刷物の輸入についてみてみたいと思います。
95-99年の輸入された製品をみますと、書籍。ブロシャアなどが39%でもっと多く、次いで、ラベル類、その他印刷物、辞書、銀行関係の印刷物、雑誌・定期刊行物…・・などと続いています。
書籍の輸入については96年がピークでその後毎年減少し、99年はビーク時(96年)の6割弱にまで落ち込んでいます。
印刷物全体でも、97年(879万ドル)のピーク時から比べると、99年(636万ドル)は約7割にまで減少しています。
まとめますとフィリピンは印刷物については輸入国という位置付けです。
●ニュースペーパー
主な新聞としてはManila Bulletin(25万), Philippine Daily Inquirer,(25万) 、Philippine Star(25万)が上位三大紙で、次いでManila Times,(20万) Today,(15万) Malaya(15万)となっています。週刊誌では大手3紙の発行部数は、25万部から30万部程度。女性向雑誌は15-20万部程度、スポーツ誌は13万部、それぞれの地域の出版物につきましては7万部程度(ゼブ、ダバオなどの南部の島々)。
●印刷の供給能力
書籍の出版については大手が幅広いサービスを行っています。大手印刷業の場合は企画・原稿からポストプレスに至るまで、すべてを供給できます。新聞、雑誌、その他定期刊行物の会社は特定のセグメントされた、ニーズにあったサービスを読者に行っています。
商業印刷については、大手ではプリプレスからポストプレスまでの全体のサービスをしています。その一方で零細企業は非常に苦しい状況にあります。財務的な力がないために設備投資ができないことで苦戦しています。十分な資本が調達できないということでビジネスの範囲がかぎられしまっています。しかし中小企業の限界を打破するためにお互いに手を組んで業者同士のネットワークを構築しています。
人材の育成では印刷業界全体では管理の問題、専門的な技術の訓練が大幅に遅れております。大半従業員は高卒の方で、高等教育を受けていません。各企業もOJTで教育をせざるをえません。技術面でも大半の印刷会社は従来の技術に頼っています。中にはインターネットを使った新しいタイプの企業も増えてきております。特にDTPが導入されることで効率よくスピードアップいたしました。動向からいいますと1990年代の中ごろにデジタル印刷が初めて導入されて、着実に伸びています。現在ではプリント・オン・デマンドあるいはジャス・イン・タイムの印刷市場が成長を見せています。しかしながらデジタル印刷の市場の規模としてはまだ限られたものです。印刷業界は将来動向についてはきちんと認識をしていると思います。フルデジタルの自動化された印刷システムをイメージしております。すでにコンピュータtoフィルムは多く使われています。出版、包装、商業印刷で数が増えています。大手の企業ではコンピュータtoプレートが導入されています。
いろいろな印刷技術のシェアをみてみましょう。
ヒーセットウエブオフフセット(23%)、コールドウエブオフセット(20%)、枚葉オフセット(9%)、フレキソ印刷が(19%)、グラビア印刷(19%)、デジタル印刷(8%)の順番です。オフセット印刷は全体で52%。
●品質と教育訓練
熟練者や専門教育について遅れている。印刷に関する短期間あるいは専門コースとして教育のできる学校ができました。Don Bosco印刷学校、フィリピン工科大学、Santo Tomas大学などがあります。
●印刷業界のチャンスと脅威
<チャンス:>
- 人口の増大:フィリピンの人口は約8000万人で年3%の増加です。人口が増えることは潜在顧客が増えることです。印刷にとってチャンスです。
- フィリピンでは学校のが多い:学校の数が多いということは教科書や参考書など印刷の需要に繋がる。
- 識字率:識字率が高いことは、印刷物に目を通すチャンスが多い。
- フィリピン人の海外でのコミュニティーが多い:宗教関係の本や雑誌、会報、連絡とうの印刷物を配布することが多い。
- 海外の展示会に参加する:新しい技術を導入するため4億ペソを投入したという報告もある。
- インターネット:サプライヤとカスタマーを結びつけるツールです。
- 経済成長が必要
- 広告関係への出費が伸びる
- ローコストでハイクオリティなサービスの提供
- 選挙が行われる
- ローインセンティブ:書籍などに税がかからない
<脅 威:>
- 印刷専門教育機関が少ない:スキルの高い人の育成が遅れる
- 熟練工が少ない
- CD-ROMや電子出版の普及:従来出版への影響
- 高い関税による高コスト:源材料への関税が高いと全体にコスト高となる。
- 過当競争
- 紙の質への信頼度は低い
- 印刷業は高い投資が必要
- 印刷に関する信頼のある統計やデータない
- 政府の支援が不充分
●競争力をアップするための行動計画
<印刷会社に>
- 新しい技術への投資
- 人材に投資をする
- マーケットを絞り込む
- 専門性、特殊性のある製品とサービス
- 印刷プロセス製造形態の標準化、多様化
- 顧客との緊密作業、協力関係が必要
- よりビジネスを統合・連結させる
- IT分野はいろいろ技術を有効に組み合せる
- 業界団体に積極的に加盟する
<団体へ>
- 訓練プログラムの充実
- 新しい技術への展示会派遣などの支援
- 情報についてはDBを構築する
- 他業界との交流や連携
- 作業プロセスの標準化
- 政府支援との連携
<政府に対して>
- 世界的な競争力をつけるための支援をしてほしい
- 人材育成のためのバックアップ措置
- 資本参加。資金参加ができる支援体制
- 進捗状況をモニタリングできるようなセンターシステム
フィリピンの印刷業界は以上のよういろいろな課題があります。現在岐路にさしかかっているといえるでしょう。新しい技術が台頭するなかで、過当競争で苦しんでいるという二律背反が並存しています。
急速に進展する印刷技術に対応できる体質に転換しなければなりません。
過去20年間を振り替えてみますと、フィリピンでは価格を指標として成長してまいりました。従来のような意味での経済指標に依存した業界の判定というのは意味を失ってきていると思われます。現在の市場の指標は、高い品質、よりよいサービス、リードタイムの短縮、あるいは長期的な財政援助処置を希望しています。
価格低減は要求されている面もありますが、業界自体の環境が元凶であると思います。スキルの高い人材と新しい技術の取りこみがあって初めてデジタル時代の印刷に対応できると考えます。
フィリピンの印刷業界はFAGATの皆さんと協力をしています。アジアの近隣諸国の皆様とも力を合わせておりましてそれによって相互の利益、全員が潤うようなネットワーク化を目指します。
◆【その1】に戻る
2003/07/15 00:00:00
|