ジェイティ・エンジニアリング(JTE)株式会社では、製造業向けの計画シミュレーションソフトウェアを販売しており、印刷業もターゲットにしている。
スケジューラの目的は、リードタイムの短縮、納期厳守、的確な資源配分である。
スケジューラが持つ基本的な機能は、登録機能、計画機能、表示機能にわかれている。
登録機能には、受注登録と資源などを管理するマスタ登録の2種類ある。受注登録は日程計画の印刷物の一品に相当する受注情報(品目、数量、納期など)が主な入力情報である。もうひとつのマスタ登録には、品目、工程、資源などがある。品目とは製造対象の仕様で、どのような工程と部品で製造されるのかという工程と部品点数などの登録するマスターである。工程とは、どのような資源を利用して工程の作業が行われるかを登録するものである。資源とは、材料や装置の機能及び能力を登録するようになっている。
品目とはたとえばA3、4色チラシなどと定義し、そこで利用される工程として、印刷、断裁、折りなどの工程手順を定義し、その工程で利用できる印刷機や加工機である資源を登録する。資源とは、利用する印刷機や加工機などの装置で能力や使用する資材を定義できる。たとえば枚葉印刷機があった場合、準備時間がどのくらいで、単位時間あたりどのくらい生産できるかが登録される。この結果ある品目を作るには、どのような工程でどの装置を利用してどのくらいの時間で作れるかが、マスタ定義されることになる。
またこれ以外にマスタとして、資源の組み合わせ、たとえばこの仕様の後では、装置の準備時間が変わるかなども登録できる。
ここで登録する情報は、他のシステムのデータベースともリンクする機能があり、実際には登録しないで他システムからデータを受けて利用することもできる。
次にポイントとなるスケジュールを行う計画機能には、まず割り付ける時間の基準として開始時刻から割り付けるフォワード処理、納期から割り付けるバックワード処理があるが、印刷ではバックワード処理のスケジュールを使う。
スケジュールには、山積み計画機能、山崩し計画機能、優先順位計画機能、最適計画機能を使う。
山積み計画機能は、開始時刻から納期に間に合うように装置などの能力を無視し割り当てる。そしてそれぞれの仕事を山崩し機能を使って、装置能力を超えている部分を崩してならして割り当てる。
このとき単純な山崩しではなく優先する条件を入れて行う優先順位計画機能を使う。条件には納期優先順位、品目優先順位、顧客優先順位など25項目の中から優先順位を選んで割り当てることができる。たとえば納期優先順位は、納期にすべて入るように計算して、入らない場合には収まらない仕事を色で警告をだす。品目優先順位は、ある品目を優先して計画するようにスケジュールするなど、何かを優先して計画する時に利用する機能である。
さらに最適計画機能を使って様々な条件を加味してスケジュールを行う。条件として納期厳守、リードタイム最小化、段取り時間最小化、滞留時間最小化などの項目があり、これらの項目に重みを数値で入力すれば、これらの条件を考慮した計画を作ることができる。たとえば、納期厳守の計数を20にして、後の項目を1にすれば納期優先のような計画になり、また準備時間の計数も20にすれば、納期厳守で準備時間を最小にするようなシミュレーションができる。
これ以外に工程優先割付機能があり、これは工程毎に製造順序を変えることができ、工程内で同一仕様をまとめて処理するような場合に利用される。
JTEのソフトウェアは、上記の優先順位計画機能、最適化計画機能、工程優先割付機能を持つことで非常に柔軟でしかも的確な日程計画作りを可能にしており、少なくとも印刷業向けのスケジューリングソフトとして大きな特長になっている。
実際に紙で日程計画を行う場合でも、まず受注単体で工程ごとに時間を計算し、それを並べて、納期を考えながら組み合わせで、最適な効率が得られるように予定を組む。
この操作をJTEのソフトウェアを利用しながら行うとすると、まず受注の予定を入れて、それを山積み計画機能で各工程や装置での集中度を見ることができ、それを山崩しすることでおおまかな日程計画ができあがる。その際受注ごとで単なる山崩しではなく、納期や品目などを優先する優先順位計画やリードタイムや準備時間を最適化するような最適計画を行える。
さらに、工程や受注単位で確定をさせることでその部分をロックし、条件を変えながら再計画を行える。
これは、ある意味では条件を変えながら試行錯誤するためのツールとしての位置づけとなる。
最後の表示機能は、計画された結果をいろいろな形で、表示出力することができる機能である。たとえば離れた場所で、この結果を見るような場合は、ビューワソフトウェアを入れて、この結果を見ることができる。
実際の印刷の現場から見ると、日程計画はベテランの経験者が紙と鉛筆で今までの経験で得た最適で効率的な日程を組んでいる。しかしこれが非常に時間がかかる作業で、また経験が問われる。
このような経験者に依存した日程計画作りも、計画シミュレーションソフトを利用して、早くしかも情報を残しながら行うことで、いつでも誰でも利用できるようになれば便利になるはずである。より重要なことはこれから印刷業務がCIMの自動化を目指す時には計画作業のデジタル化は当然必要になる。
基本的な情報を入れる手間や特に条件の組み合わせの知識を入力する手間を問題視する傾向もある。特に問題と言われているのは、装置でも一台一台違いがあり、同一仕様でも厳密には仕上がりが違うので能力などの条件を変える必要があるなどだが、これは元々コンピュータシステムの問題ではない。今までの顧客、品目や装置の組み合わせを見てベテランの経験者がかかる時間を計算していた部分を、どう数値に相当する情報として入力するかだと言われている。
考えるべきは、ソフトウェアが使えるかではなく、装置や資材管理も含めた生産計画を支援するためには、人の計算だけでは手に負えない状況がある。これをより効率に精度の良い計画を行うには、高速で必要な条件設定が行えるシミュレーションソフトを利用し、問題のある部分は手で修正するような計画作りが必要になるのではないだろうか。
出てきた結果や入力が自社と合う合わないではなく、計画をする上で人が頭の中で考え検討する手順や扱う情報は、基本的には同じようなことをしているはずである。
検討すべきポイント
・完全自動化を求めがちだが、あくまでもシミュレーションとして使えばよい
・頭の中でやっている作業の設定や能力を考えると、スケジューラはもっと高い機能が多い
・様々な変更に対して、すじにあったシミュレーションができるのではないか
このように捕らえることで、紙では結果しか残らないことが、デジタルで行うことで途中結果や条件を残せ、しかも変更が楽になるような環境を実現できる。これはCIMに向かうためには、情報のデジタル化として必要なことである。
MISページ
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2003/10/15 00:00:00