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発展のためにはコミュニケーションの認識を改めるべき

社団法人日本印刷技術協会 副会長 和久井孝太郎

1.クロスメディア・eビジネス…,印刷業発展のためにコミュニケーションの認識を改めるべきだ!

私たちは,相手と十分に意思疎通ができていると思っていても互いに誤解するケースがますます増えている。まして以心伝心など過去の話になってしまった。いまや多くのコニケーションで,それが「異文化コミュニケーション」なのだ,と認識することが不可欠になってきている。

ここで言う「異文化コミュニケーション」とは,何も異国人との間(国際),専門分野を異にする人の間(学際)など,これまでも異文化コミュニケーションと認識されてきたケースとは限らない。

高度情報化が進み,生活環境が多様化し,人それぞれの関心事が大きく異なる。総中流意識を持つ金太郎飴的な日本社会など過去の環境となった。日常生活で私たちは,話が難しい相手,理解するのが容易でない相手などとのコミュニケーションを避け,気心のあった相手とだけ付き合う。

あるいは,ニューメディアやニューテクノロジーに関する権威者の話などそれとは逆に,相手の言い分を十分に吟味せずに自分の都合に合わせて解釈する,さらには相手の言い分を鵜呑みにしてしまう。

親と子の間,職場の同僚の間など,私たちがコミュニケーションに自信を持ってきたケースですら,異文化コミュニケーションの様相をあらわにすることが少なくない。ましてやクロスメディア・eビジネス…など,伝統ある印刷業にとっては異文化領域への進出と自覚すべきだ。自己流の解釈を捨て,「異文化コミュニケーション」の認識を持って進むことが本格的な成功への早道である。

2003年度の「技術フォーラム」は,「中期的なメディアの変貌とビジネス戦略」をテーマとして掲げ,これまでに月例のフォーラムに加えて7月16日にはシンポジューム「顧客の顔が見えるメディア」を開催し,順調に調査研究を進めている。

具体的には,クロスメディアやeビジネスの第1線で活躍されている方々にご協力いただき本音のお話を聞かせてもらい,印刷業を取り巻く環境変化の実例として評価・分析する。技術フォーラムにおける基礎的な異文化コミュニケーションの認識とは次のようなものである。

2.新世界「デジタル・ワールド」の出現

前世紀終盤の「デジタル革命」勃発によって,人類史的な長い伝統文化の上に築かれた旧世界「リアル・ワールド」とは異質な,新世界「デジタル・ワールド」が,この地球上に出現した。

その有様をイラスト化して図示した。「デジタル・ワールド」では,個人がインターネットとパソコン端末,携帯電話を通して世界と結びつく。マスメディアなど多くのメディアが旧世界「リアル・ワールド」と,新世界「デジタル・ワールド」を結び付けている。

軸足をどちらの世界に置くかはともかく,私たちはこの異文化の二つの世界にまたがって生活することとなった。「デジタル・ワールド」文化の最大の特徴は,「自由」と「いま・ここ」である。

「いま・ここ」ですべてを処理する。人間の意識が拡張され,自然と身体がバーチャル化した。当然の成り行きとして食い気・いろ気・戦う・逃げる(4F)とマネーの世界が肥大化している。

新世界で人間は空間を克服(グローバル化)したが,時間(歴史と未来)を失った。旧世界では制度崩壊の危機を迎え,私たち自身の意識改革が必要になっている。私たちは空間の拡張に見合うだけ時間の回復を図る必要がある。そのような意味では,これまでの神話やプロパガンダで飾られた歴史認識ではまったく不十分であり,自然科学としての人類史を基礎として新たにより科学的な歴史認識を再構築する必要がある。

技術フォーラムでは,のような基本認識の下に「2050年の印刷を考える」を取りまとめ,2002年5月に研究調査報告書を提出している。2003年度のテーマ「中期的なメディアの変貌とビジネス戦略」では,研究調査の対象をこれからの10年に的を絞って現在作業を継続中である。JAGAT会員の参加は自由なので奮ってご参加ください。

◎技術フォーラムに関心のある方はこちらまで問い合わせ先までご連絡ください。

2003/10/26 00:00:00


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