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プリプレス部門の業績、生産性評価のための出力

本ページでは、2003年8月20日掲載の「印刷業のMISモデルの表現に関する試案」で「印刷部門の業績、生産性評価のためのデータ(出力項目)に関する試案」を始めとして、「営業部門で日常または営業会議で利用する管理情報の出力」(2003年11月26日)、「経営者や営業系に必要な管理情報システムの出力」(2003年9月18日)等、印刷業界のMISの出力内容として最低限の項目に関する試案を紹介してきた。以下は、プリプレス部門の業績、生産性評価のための出力に関するものである。 ここでいうプリプレス部門の作業内容には、カンプ作成やデザインは含まない。

概要

プリプレス工程は、かなり細かな個別作業の集合体であり、しかも人的作業が中心である。 印刷作業でも、準備作業は、版付け、紙積み、各種給紙部調整、デリバリ各部調整、インキ量・湿し水量調整、見当調整等細かな作業の集合体だが、それはひとつの仕事の「本刷」つまり印刷のための「準備」として括ることができる。「後処理」も、版・ブランケット・シリンダ洗浄、刷り本排出等の細かな作業の集合だが、これも「本刷り」という機械作業終了時の付随的作業として明確に意味付けが可能である。
しかし、プリプレス工程における各種作業(画像入力・レタッチ・切り抜き作業などの画像処理、ロゴ・イラスト等の部品作成、ページレイアウト、前記各内容の修正、面付け、校正出力、本刷用版出力等々)のそれぞれは、他の作業の準備や後処理といった位置付けは出来ないし、各作業それぞれにおいて人と設備とのインターラクティブ的作業として進められる。

プリプレス工程の作業が、印刷工程や後加工工程と大きく異なるもうひとつの点は、作業内容や手順あるいは役割分担(仕事の分割)が、製品(端物、ページ物、チラシ等)が異なれば変わることである。さらに、ひとつの会社においてチラシを作成する場合でも、年間を通して仕事量が多い得意先からの仕事の場合には数人がひとつのチームを組んで作業を分担して行うが、それ以外の仕事では、部品作り、レイアウトといった単位でグループを作り流していく、といったように異なる仕事の流し方をすることもある。

したがって、生産実績、生産性把握の単位、内容も企業による差は非常に大きくならざるを得ない。ただし、各社の共通点がないわけではない。それは、以下の点である。

1. 各社の仕事の流し方、役割分担に沿って設定したプリプレス内の工程、あるいは作業者グループ単位(本稿と付表では「小工程」と呼ぶことにする)で作業指示書が発行される。
2. 小工程単位毎に、個人別生産数量(サイズ別点数・ページ数・台数)、個人別直接作業時間、個人別生産高、そして不稼働時間を実績として収集する。これらの数字を小工程毎の月次単位で目標、前年実績と対比し、さらに単位(点数・ページ数・台数)当りの作業時間平均・生産高平均および時間稼働率等の生産性数字を出して評価する。
3. 上記1の各小工程に含まれるさらに細かな作業内容(本稿と付表では「細部作業」と呼ぶことにする)に関する生産数量、直接作業時間、生産高、不稼働内容別時間データは、担当工程あるいはグループの責任者が手元資料として異常の原因発見や能率改善のための資料として適宜利用する(ただし、先に述べたように、どの小工程でどのような内容の細部作業データを取るかは企業によって異なる)
4. 上記3の細部作業の内容設定は、各小工程単位の原価や生産高の積算内容と連動して設定されることが多い。この点に関しては、生産高の評価データとして実績原価(直接作業時間記録とアワーコストを掛け合わせて算出する)を使うか仕切り価格(あらかじめ社内で設定した現場と営業との間の標準振替価格)を使うかには関わりない。

上記のことから、印刷業界の最大公約数的モデルとして「小工程を特定した入出力の内容」を設定することは出来ないが、各社毎がその内容を決めるという前提で「小工程」単位での生産実績とその評価のモデルを書くことができる。そのひとつの例を図(pdf)に紹介する。
元データは小工程毎の作業指示書(または作業報告書)単位で発生し、集計の基本単位は小工程である。ただし、作業者の評価にデータを利用する部分については個人別にも集計する。

1.生産量実績

集計内容は仕事量を測る意味で作業点数が最低限の内容になる。この項目については小工程単位以外に個人別にも集計するのが普通である。
設備導入または各種作業改善のための内容分析の意味で、新版・訂正点数、入稿原稿形態(デジタル、アナログ、媒体種類)別点数、入稿サイズ別点数、出力サイズ別点数・ページ数・台数、出力色数別点数・ページ数・台数データを採取する。

2.時間記録、稼働率

直接作業時間、不稼働作業時間(不稼働要因別)、実働時間(又は勤務時間)の実績をとる。従来の製版工程では、高価な設備を使った作業であり、かつ印刷作業における準備作業と本刷りのような内容からなる作業があったが、デジタル化された現在ではそのような作業はないといって良い。したがって、準備作業時間と主体作業時間を分けて採って、運転時間率や実稼働率を見ることが意味を持つ作業はない。原稿整理は、個別の仕事のプリプレス作業の準備作業として位置付けることもできるがここではその時間記録は省いた。
したがって、稼働率としては機械時間率のみを見ることになる。

3.作業能率

サイズ別に単位(点・ページ数・台数)当り直接作業時間を採り、小工程単位とともに個人別にも評価する。

4.価値的生産性

一応、JAGAT方式として、社内仕切価格ベースでの各小工程単位および個人単位の生産高を評価するものとした。
集計内容は、期間生産高合計、作業時間1時間当り(実働時間、直接作業時間の2種類の時間)生産高である。

2003/12/10 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会