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プリプレス部門の工程管理はデータ管理と統合して行う(要登録)

工程管理ステムを構築する場合、プリプレスの部分は後工程と違い担当者と作業内容を管理するので、どのようなアプローチにするか悩んでいる会社も多いと思う。
印刷や後加工の部分は、装置が行う作業が多く、その装置の利用スケジュールを作成し、その稼働時間を集計する。この部分では装置のデータを自動で集計する仕組みやスケジュール管理などのツールが出てきている。しかしデザインやプリプレスなどの前工程では、進捗管理でも原価集計でも、なかなかシステム化が難しいと言われる。この部分は人が行う作業のため、人のスキルや作業負荷の予測が難しい。またプリプレスは細かい作業が多いため、項目ごとの作業集計が大変である。

スケジュール表で日程を組み日報で作業集計するところが多いが、大日程を組んで作業を始めると、実際には変更や飛び込みが非常に多く日程通りいかない。このため現場では人の割り振りで苦労したり、また集計についても翌日日報を集めてからの集計となり時間もかかるし精度も悪いことがある。
このようなプリプレス部門における管理の課題は、変更や飛び込みが多い中で、計画や進捗管理をどうおこなうか、細かな作業項目で原価集計をいかに精度良くとるかがある。しかもできるだけリアルタイムで行いたい。さらにもうひとつ大きな要素に、データを探す手間や間違ったデータで処理をしてしまうミスによる損失をなくすなどのデータ管理の問題がある。

NeostreamProとは

プリプレス工程の工程管理・原価集計とデータ管理を同時に行なうという考え方でシステム化を進めているのが、コニカミノルタグラフィックイメージング社のNeostreamProというソフトウェアである。
仕組みは、作業品番を登録するとその品番でファイルサーバにフォルダーが作成され、作業ごとでファイルを登録したり開いたりできる。このファイルの履歴管理を行いながら、ファイルを利用している時間集計を取り、誰がどの作業で何時間利用したかが記録される。作業が終わると自動で集計でき、また時間や件数を手入力することもできる。これを実績集計に利用する。担当者はログインすると自分の作業のフォルダが開かれ、その中のファイルを開いて作業をすれば良いので、データを探す手間やミスはなくなる。実際のデータはファイルサーバにあるのだが、そのフォルダを自動で管理してくれるシステムである。
このソフトウェアの利用の目的は導入している会社により違い、それぞれの目的に対しどう利用しどのような効果を出すかを考えながら進めている。

A社の場合

プリプレス部門の稼働率をリアルタイムで把握し、また実績集計にかかっていた時間を自動で集計し集計作業の負担を減らす効果を期待し利用している会社がある。プリプレス工程の実績集計の精度を高くし、しかもリアルタイムで把握することで工務が作業負荷を調整できる。大日程があり、入稿予定が決まり作業日程をたてる。しかし実際にはそこに飛び込みがたくさん入るので、ここでグループの負荷をリアルタイムで確認しそれを見ながらグループに作業を投げるようになる。受けたグループリーダも各担当者の作業負荷などをリアルタイムで見ながら担当者決め作業を投げる。
またデータ管理までも一緒にやってしまえるので、連絡やデータを探す手間などの負担も減ると考えている。今まで日報をデータシートのような形でデータベースに手で入れていたが、このシステムを利用し自動で集計した結果を得られるようにする。その結果リアルタイムで稼働率がわかる。人の稼働率もあるし、またプリプレスのいろいろな装置についても、品目やサイズ別に利用状況が把握できる。そのため利用率の低い装置などを埋めるための仕事を取るような指示もすぐにできるようになる。

この会社では、営業が作業指示を入力した後に工務が作業品番を取り、できたフォルダーに入稿されたデータを入れグループに仕事を投げ、グループリーダが担当者に投げる。このシステムを利用することで、グループや担当者の稼働率を把握するため今まで行っていた工務の確認作業を大幅に減らすことができる。
担当者は、MACでログインすると自分の作業品番が出てくる。しかも優先順位がついているので、どの作業から行うかは自動でわかる。作業品番でフォルダーを開けると入稿されたデータがあるので、それを開いて仕事をすれば、管理者は仕事を開始したのがわかり進捗管理になる。実績集計も自動でリアルタイムで行える。作業区分にはミスによる修正か依頼による修正かなどの有償無償という区別を付け、これで実績集計されるので実際の稼働率と事後積算として顧客に請求するための明細を作ることもできるようになる。今まで原計部門でやっていた集計業務が大幅に削減される。

B社の場合

デザイン部門の管理が目的で導入している会社がある。ここではデザインから下版までを、このシステムで管理しようとしている。デザインの仕事では、打ち合わせなど実際に操作をしていない部分の作業も多い。この部分も含めてデザイン作業の実績集計を行いながら、デザインを含めたプリプレス作業の稼働率を集計しようと考えている。
作業の流れは、受注を受け作業品番が取られ作業が開始される。その際デザインから行い、カンプを出して、校正を出して直して下版まで進む。これを同じ人が作業を行っている場合、どこがデザイン作業でどこがオペレータ作業ががわかるようにしたい。そのため作業を細かい項目で分けて集計していく。
ただしこのシステムでは、ファイルを開いていない時間は集計できないため、そこの部分は手で入れることができる。

また実際の作業では、ファイルを探す時間が馬鹿にならないそうだ。そこの部分をこのシステムのデータ管理を利用することで探す手間を無くしたり減らすことができる。この会社ではプリプレスを行う部門が複数箇所あり、同時に作業を分けて行うことがある。この場合ファイルは各場所にあるので、必要なファイルを取り寄せたりする場合がある。全社でこのシステムを導入すれば作業の履歴が管理されるため、人がいなくても依頼したデータが他の場所からコピーされ届いているか判断できる。両方で人がコミュニケーションを取ってデータ転送をするような無駄な作業は無くせると期待できる。
工程管理の情報やデータの所在や履歴管理の情報は一カ所で一元管理され、データは各場所のファイルサーバで分散されて管理される環境でも使える。
今後顧客の広告戦力などのアウトソーシングを受けることも考えると、情報セキュリティをきちんと行い、プライバシーマークを取る必要がある。そのためにはセキュリティやアクセス履歴までとれるデータ管理が大切である。

印刷業務管理システムは既にあるので、そこで営業が受注情報や作業指示情報を入力すると、そのデータがこのシステムに取り込まれて作業品番で工程やデータを管理できるようになる。さらに実績集計されるとそれを外部に吐き出せるので、それを業務管理システムの方で取り込めば原価管理が行えることになる。ここでは上位のシステムの項目を取り込むため集計も同じ項目で返すことができ、プリプレスの部分だけをこのシステムに依存する形になる。プリプレスの細かな作業単位で実績を集計したいと言うことで項目を設定しそれで実績集計することができる。これは倹版やRIP、校正出力など細かい項目の実体を知り、価格への反映もできるようになる。
この会社ではデザインからやっているため、その仕事が得意の人に作業が振られる傾向があり、デザイナーにより作業負荷の違いができる。このため実際にこの作業負荷の実績を集計したいこともあり、このシステムを導入し運用を始めている。

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2004/01/14 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会