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DTP豆知識(199912)

本コーナーでは,DTPエキスパートを目指すうえで理解しておきたいことを模擬試験形式で解説します。JAGAT認証DTPエキスパート 福原節寿氏に,問題のポイントや重要点を解説していただきます。試験勉強のご参考に,またはDTPに必要な知識の確認にご活用ください。
次回,第13期DTPエキスパート認証試験は2000年3月12日に行われます。詳細はDTPエキスパートのページをご覧ください。



問1 グリフコード

 次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 日本語PostScriptフォントは,複数の1バイトフォントを合わせて1つのフォントとして扱う方式として始まった。漢字を含む日本語のフォントは普通[A:(1)2 (2)数十 (3)数百 (4)256]ファイルの1バイトフォントの集合から構成される。これを[B:(1)CMap (2)CID (3)OCF (4)Type3]フォントという。

 これに対し中国語,韓国語,日本語などのマルチバイトでも,構造がシンプルで1書体当たりの容量が小さく,メモリの消費も少なく,処理が高速化されるフォントとして,[C:(1)CMap (2)CID (3)OCF (4)Type3]がある。

 CIDフォントファイルは255字に制限されない任意の数のグリフの[D:(1)ビットマップ情報 (2)アウトライン情報 (3)字形エレメント (4)ヒント情報]が格納でき,各グリフのコードとして[E:(1)OFC値 (2)CID値 (3)JISコード (4)区点コード]がつけられている。

 一方CMapファイルには,78JISや90JISやシフトJISなどの文字コード体系とグリフコードとの対応が記述されている。グリフセットとエンコーディングを2つのファイルに分離することにより,CIDフォントをもつ出力装置は,[F:(1)コンポジットファイル (2)CMapファイル (3)1バイトフォント]を追加すれば異なった文字コード体系に対応したり,同じ文字コードでも異体字グリフを使用することが可能となる。

 また,CIDフォントでは文字の詰め組みなどのために,1つのフォントファイルに[G:(1)フォントの自動変形 (2)ビットマップ (3)複数のメトリックス (4)True Type]をもつことができ,これを参照すれば個々の文字にふさわしい組版ができるようになる。



    【関連項目】
     フォントに関しては,いろいろな種類がある。欧文(1バイト)と日本語(2バイト),ビットマップとアウトライン,さらにそのアウトラインには,TrueTypeとPostScript(ATM,高解像度,低解像度),そしてPSフォントの中でもOCFとCIDなどと,種類によって区別される。
     これらのことを踏まえて,フォント全般のことを整理して理解しておきたい。


    【出題のポイント】
     問いの題名は「グリフコード」となっているが,内容はPSフォントのOCFとCIDフォントを問うものなので,それぞれの仕組みと構造を押さえておきたい。

     グリフは,字体(筆画の組み合わせなどの文字の骨格)の意味で用いられることが多いが,ここでのグリフコードは,個々の文字(字形,文字データ)に振られたID番号の意味である。

    【問題解説】
     PostScriptには,1フォント当たり256文字までしか登録できないという制約があるため,基本的に多バイトの日本語は扱えない。
    一方,OCF(Original Composite Format:コンポジット)フォントは,多バイトの文字を扱う言語のためのフォント構造で,漢字を256文字(1バイト)ずつに分け,別々のType1やType3フォント(ベースフォント)として作成し,階層構造にして1つのフォントにしたものである。
     「親」となる1つの仮想フォントと,1バイトごとに区切られた「子」のフォントで管理している。
    日本語フォントは,1書体当たり7000〜8000の字数から構成され,1つのフォルダ内には数十〜100前後の文字が格納される。それが数十のファイルから構成されるのでAは(2)となり,前述よりBは(3)となる(図1参照)。
     約2年前にアドビシステムズ社から出されたCID(Character Identifier Keyed)フォントは,多バイトコード対応であり,文字形状を記述したアウトライン情報をもつ「CIDフォントファイル」と,このフォントファイル中の文字のグリフコードとおのおのの文字セットとの対応を記述した「CMap」の2つのファイルから構成される。各文字には,グリフコードとしてCID値がつけられている。よってCは(2),Dは(2),Eは(2)となる。

     CIDフォントの特徴としては,以下のものが挙げられる。
    1.構造がシンプルなので画面描画と印字速度が向上
    2.個々の書体によるが,ファイル容量の減少
    3.CMapで文字配列を管理しているので,ファイルの追加,切り替えによって,異なる文字セットやエンコードに対応
    4.文字詰めの情報が入っているので,自動で文字詰めすることが可能
    5.標準,JIS78,エキスパート,旧字体の置き換えが可能
    6.PDFファイルへのフォントの埋め込み(エンベット)が可能

     このうち,4,5は,アップルのQuickDrawGX用に対応したsfntフォントフォーマットである。現行では限られたアプリケーションでの対応であり,Windows上でもsfntの機能には対応していない。sfntに対応していないものをNakedフォントといい,CIDフォントでもsfntCIDとNakedCIDがあるので,アプリケーション内での利用方法が異なる。
     さて,3および問いの文からもわかるように,異なった文字コードの対応はCMapファイルが行うので,Fは(2)となる。 
     図2は,異なる文字コードでのCMapファイルでの切り換えを示している。上がMacintoshでの83JISコード,下がWindowsでのNECPC用文字セットである。同じコード番号であっても,対応するCID番号は異なる。つまり,それぞれの文字コードとCID番号の対応表を,おのおののCMapファイルの中でもっていることを示している。
     また,4にあるようにCIDでは複数の文字詰めの情報がもてる。これをフォントメトリックス(文字組みの情報も含むことがある)というので,Gは(3)となる。



    図1 OCF・CIDフォント構造



    図2 CMapファイルによる文字コードの切り換え


    【模範解答】
    A.(2),B.(3),C.(2),D.(2),E.(2),F.(2),G.(3)

    【キーワード】
    OCF,CID,CMapファイル,グリフコード




問2 Windowsからの高解像出力

 次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 MacintoshもWindowsもシステムフォントは[A:(1)Type1 (2)Type3 (3)TrueType (4)Type42]である。
 MacintoshのDTPではATM,PSプリンタ,PSイメージセッタという環境が基準なので,ページネーションしたデータはPostScript(PS)の[B:(1)Type1 (2)Type3 (3)TrueType (4)Type42]フォントを中心にして作られる。そのため,異なるMacintoshからの出力でもフォントさえあれば再現性は良い。
 しかし,Windows環境ではATMで使えるフォントが限定されており,またページネーションのデータの作成法が多様なので,レイアウトする側と出力する側の理解が一致しないと,思いどおりの出力にならない。

 Windowsでは,編集側のTrueType環境だけでレイアウトする場合と,PS出力を想定してPSフォントを指定してレイアウトする場合がある。PSイメージセッタへの出力は,レイアウト時に使うフォントが[C:(1)Type1使用時のみ (2)TrueTypeだけでも (3)ATMだけなら]できる。
 Windows3.1からGDIに内蔵されたTrueTypeのラスタライザを使って,画面表示とプリントを行う。MacintoshのTrueTypeフォントは解像度制限が[D:(1)ないが (2)あるが],WindowsのTrueTypeには制限は[E:(1)ない (2)ある (3)フォントによって異なる]。

 Windowsでも出力機の駆動はアプリケーションが直接行うのではなく,OSの管理下で[F:(1)RIP (2)PPD (3)プリンタドライバ (4)GUI]というソフトウエアが行う。出力機のフォント,解像度,サイズその他の仕様に関する情報が記述されるファイルは[G:(1)PPD (2)PMT (3)PPI (4)DPI]である。出力には[F]と[G]両者が必要となるが,供給元はそれぞれ複数ありえる。出力を予見するには,これを確認しておかなければならない。


    【関連項目】
     DTPでは,Windowsからの高解像度出力も現実のものとなった。しかし,その製作環境をみてみると,ハード,ソフト,フォントなどの面で,Macとは大きく異なっている。
     特に出力環境でのフォントの種類・扱い,プリンタドライバの役割,仮想プリンタ・PPD(PostScript Printer Description)ファイル,TrueTypeフォントの送信方法など,Windows固有のものがある。Windowsの仕事に関わるのであれば,ぜひ全般を理解しておきたいものである。


    【出題のポイント】
     出題は,Windowsでの高解像度出力の仕組みを問うもので,フォントの扱い(解像度制限などMacとの相違),プリンタドライバ,PPDファイルの役割を理解すること。



    【問題解説】
     システムフォントとは,あらかじめ初期設定でバンドルされているフォントのことで,MacでもWindowsでもTrueTypeフォントなので,Aは(3)となる。
     Mac環境では,前問にもあるように,PSフォントが基準となりType1フォントなので,Bは(1)となる。Type3は,ユーザ定義フォントでヒント情報をもたないもの,Type42は,アウトラインデータをTrueType形式でもつものである。
     Windowsでは,Mac同様にPSフォント,True Typeフォントを扱えるが,いくつか異なる点がある。PSフォントでの出力の仕組みは,ほぼMacと同様でATM・プリンタフォント(高解像度・低解像度。ただし,ビットマップフォントはなく,ATMもしくはTrueTypeフォントによって表示される)があるが,市販されているATMフォントの書体数は,Macと比較すると極端に少ない。
     また,ATM・TrueTypeフォントの解像度制限は,Macでは一般に600dpiであるが,Windowsではその制限がない。そのため,TrueTypeフォントをPSプリンタから高解像度出力ができるので,True Typeフォントでの運用が多い。前文よりCでは(2),Dは(2),Eは(1)となる。
     プリンタドライバにはTrueTypeフォントの送信方法が3つ(アウトライン,ビットマップ,Type42)ある。それぞれの設定方法の特徴の出題もあったので,押さえておくこと。
     出力の仕組みは,図3にあるようにプリンタドライバが行うので,Fは(3)となる。この際も,プリンタドライバに組み込むPPD(PostScript Printer Description)ファイルやプリンタドライバの種類が重要となる。PPDファイルは出力先のプリンタの情報(テキストデータで記述された解像度,用紙サイズ,ディフォルトのインストールフォントリスト,スクリーン線数・角度などの出力時に必要な情報)をもち,基本的にプリンタメーカーから供給される最新のものをプリンタドライバに組み込むので,Gは(1)となる。
     また,プリンタドライバの種類によってサポートするPSフォントが異なり,サポートしていないPSフォントでは,画面表示,出力結果が正しく反映されないので,そのフォントのPMFファイル(PSフォントの文字間隔や詰め量などの文字情報)を準備しなければならない。




    図3 Windowsでの出力の仕組み


    【模範解答】
    A.(3),B.(1),C.(2),D.(2),E.(1),F.(3),G.(1)


    【キーワード】
    プリンタドライバ,PPDファイル,
    PMFファイル,出力解像度制限,TrueTypeフォントの送信方法,仮想プリンタ




(出典:月刊プリンターズサークル連載 1999年12月号記事より)

1999/12/24 00:00:00


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