竹尾 見本帖本店2Fで2019年5月16日〜6月7日まで、日本図書設計家協会と竹尾共催による「装丁万華鏡」展が開催された。
日本図書設計家協会の装丁家・装画家が手掛けた書籍を、デザインの発想、素材、モチーフ等のカテゴリー別に編集し、合計で約200冊を展示した。
カテゴリーは以下20項目
カラフルな装丁/モノクロの装丁/模様の装丁/記号などの装丁/描き文字の装丁/大きい文字・小さい文字の装丁/長い題名の装T/過密な装丁/線画の装丁/立体イラストの装丁/劇画の装丁/空の装丁/顔・身体の装丁/花の装丁/いきものの装丁/怖い装丁/泰西名画の装丁/特装本の装丁/上下巻の装丁/帯を生かした装丁
本展のために、カテゴリー名をタイトルにした大型のオリジナルブックカバーを作成し、会場のサインとして掲示した。
オリジナルブックカバー制作に当たっては、紙を株式会社竹尾のファインペーパーで、株式会社ショウエイがUVインクジェットプリントで、株式会社村田金箔がオンデマンド箔プリントで協力している。
本展のもう一つの柱は、「装丁と紙でふりかえる平成」と題した年表だ。平成30年間に起こった社会の事象を背景にした、出版・デザイン・紙をめぐる出来事を横断的に網羅し、展覧会場のパネル展示と小冊子にまとめた。この年表は日本図書設計家協会と竹尾が共同で企画し、宮後優子氏(Book & Design)、土屋みづほ氏(日本図書設計家協会会員)と竹尾 企画部の手によって編集されている。小冊子は、NTラシャ グレー 30、桃、にぶ黄の3種類の用紙に印刷されている。来場者は、好きな色の冊子を選んで自由に持ち帰ることができる。
▲左:「装丁と紙でふりかえる平成」パネル展示 右:小冊子
年表には、その年の出来事、出版業界の出来事・ベストセラーなど、記憶に残った装丁、竹尾の主要銘柄発表年、DTP関連の出来事、デザイン業界の出来事が記載されている。
例えば
平成元(1989)年:消費税(3%)実施/吉本ばななブーム/DTPで制作された『森の書物』(ゲグラフ・河出書房新社、装丁:戸田ツトム)/『MdN』創刊/竹尾からアラベール、ギルテック(キクラシャ)発表 など。
平成7(1995)年:阪神淡路大震災/『遺書』(松本人志著)がベストセラーに/ヨースタイン・ゴルデル『ソフィーの世界 哲学者からの不思議な手紙』(NHK出版、装丁:坂川栄治)/Windows95発売/竹尾からモス、GAコットンなどを発表 など。
平成23(2011)年:東日本大震災発生、日本製紙 石巻工場などが被災/『OLIVE いのちを守るハンドブック』(KADOKAWA・メディアファクトリー、装丁:NOSIGNER)/竹尾からヴィンテージゴールド、気包紙発表 など。
無料で配布するのがもったいないほどの貴重な資料だ。
展覧会開催前日の5月15日に開かれたオープニングパーティでは、日本図書設計家協会の小林真理会長が「自分自身、装丁・装画の継承発展のために活動してきた。出版不況の今だからこそ、本の役割や真価が問われる。紙の本の底力と奥深さを本の街、神保町で堪能してほしい」と挨拶した。
竹尾 執行役員の吉田稔氏も挨拶に立ち「竹尾 見本帖本店 2Fの展示は、2016年10月以来2年ぶりだ。(「本迷宮─本を巡る不思議な物語」展)。装丁・装画は出版文化の一翼を担っている。
一般の読者の方々にもぜひ見てもらいたい」と語った。
日本図書設計家協会は1985年発足し、2017年には一般社団法人格を得た。今年2019年で創立34年を迎える。
本展覧会は、時代の節目を契機とした、協会活動の集大成といえる。 装丁の多彩な魅力と、装丁家、装画家の書物に対する熱量を感じ取れた展覧会だった。
なお展示書籍は、日本図書設計家協会の編集による新刊『装丁・装画の仕事2019 Workbook on Books 12』の特集企画として、全て掲載されている。
*初出:「紙とデジタルと私たち」2019年5月30日
(JAGAT 研究調査部 石島 暁子)