今号はユニバーサルデザイン(以下UD)と印刷の関連性やUD印刷の現状を考察していきます。
●印刷物自体が障害に!?
以前、視覚障害の方とディスカッションを行った際に、「とにかく私にとっては、印刷物が一番のバリア」と発言した方がいました。私にとって、衝撃的な言葉でした。
では、目の不自由な方々は、普段どのように情報を得ているのでしょうか?
一般的には、
・点字、大活字、触地図
・音声テープ、音声テキスト
などが挙げられ、これらは「バリアフリー印刷」などと呼ばれています。
しかし、点字を読むことができるのは、視覚障害の方の1割しかいない、印刷物の大活字や音声化もかなり限定されたものである、など課題は多いようです。
さらに、視覚系の障害には、眼鏡利用、老眼、白内障など広義に考える必要があります。視覚に訴える印刷物は「読みやすさ」や「伝わりやすさ」など、UDの概念を導入することが、大変重要ですね。
●カラーユニバーサルデザイン
「色の区別が苦手」「色が分かりづらい」という方が、大勢いることをご存じですか? 「色盲」「色弱」などと呼ばれ、日本に約300万人以上、世界では2億人を超えると言われています。
ある時、色盲の方に「このお茶のボトルには'あつい'と囲みで書いてありますが、周りと同じ色ですか?」と聞かれたことがありました。強調された赤色の囲み文字だったのに、彼には周りの緑色と同色に見える、とのことでした。
カラーユニバーサルデザインは、「より多くの方に分かりやすい色彩表現を行う」という考え方です。区別が必要な情報は、色だけに頼った表現は避け、配色に注意するなど、情報が正しく伝わるよう配慮することが重要です。
フルカラー印刷が主流となった現在、グラフィックデザイナーも「色」に関しての正しい知識をもち、利用者視点を考えた適切なデザインをすることが望まれています。
…次号でも、印刷とUDの関連性を引き続き考察していきます。
*カラーユニバーサルデザイン機構サイトhttp://www.cudo.jp/
『プリンターズサークル』7月号より
2006/07/04 00:00:00