2007年3月18日に実施された第3期クロスメディアエキスパート試験結果について認証委員会で講評いただいた中から、学科試験の取り組みに関する内容を要約した。
第1期、第2期、第3期と経て、少しずつクロスメディアエキスパート試験とはこういう試験なのかというのが知られてきた。 例えば「マスメディアとはどんなものであるか」というメディア概論など、最初随分点が悪かったのが、取れるようになってきた。受験者は今まで、自分の受注の中では他の媒体をあまり気にしていなかったのが、気にするようになってきている。 経営概論でも、クライアントの経営状態を少し意識するようになってきている。
一貫して弱いのは技術系のところで、試験ではあまり突っ込んだ問題にはならないが、トレンドくらいは押さえていてもらいたい。 テクノロジーは陳腐化するものなので、基礎と最新の動向も捉えておいてもらわないと、新しいニーズやチャンスになかなか適用できない。
本試験は、クロスメディアエキスパート像に対して自分はどのあたりの知識が足りないのかをあぶり出すための手段と考えることもできるだろう。また、これから第4期、第5期と進むにつれて再受験する人も出てくるだろう。
論述試験の合格者は増えている。前期は3分の1あまりが学科合格であった。論述試験の合格者は1.5倍程度増えているが、学科試験のほうは伸び悩んでいる。
学科試験の範囲はカリキュラムとして示してあるものがある。過去問題等の資料はまだ少ないが、一部、対策講座等でどのように臨むかという話は出ているし、なるべくそのようなことを理解してもらおうと努めてはいるが、まだ十分ではない。
学科の問題はあまり特殊なことではなく、通常仕事でふと思い立ったときにGoogle等で検索してある程度有名な情報を見ていれば、「ああ、こういうことか」とわかるレベルである。出題範囲は広いが、その程度の深さで作るように心がけている。
しかしまだ、カリキュラムの重要性にまだ皆さん気がついていないと思われる。「IT」と「経営」と「メディア」という3つの切り口のカリキュラムとして、その中に全て大事なキーワードが盛り込まれている。
残念ながら合格率が想定より低かったというのは、まだまだカリキュラムをしっかり見てもらっていないのではないか。カリキュラムを眺めてもらうと、自分はこの部分は弱い、この部分は強いということがわかる。多くの人がその整理ができていない状態で試験に臨んでしまっているように思う。 今はネットという強い武器があるので、不得意なところは検索しながらどんどん自分のサブノートを作っていけば、自分の弱みも補強できる。
余裕があるなら、自分が得意だと思うものも1回Google等で検索してみて、それから関連のリンクを辿っていくことによって、自分の強いところがさらに強化される。
これだけ技術変化が激しい時代に、いったんここまで勉強したからこれで終わり、ということは絶対ない。そのような新しいタイプの人材をコントロールしていくのもクロスメディアエキスパートの役割で、それを億劫がらずに自分でできることが問われている資質であり、どんどん追求していくモチベーションが非常に大事である。
もともと試験の主旨にも、たこつぼ型、自己満足型のエンジニアや作業者、職人のためではなく、仕事をやっていく中で自分を成長させていくという要素を入れている。
広い知識を身に付けているから、例えば1つのプロジェクトについて、事業部を任されている部長と経営者の視点で話ができる、クライアントの技術者と話ができる。また、データベースを使ってどんなマーケティング手法が活かせるかという話ができる。そのように捉えずに、「なぜこんなことをやらなければいけないのか、自分は別にエンジニアではないのだから、ネットワークなんか知らなくていい」と思っている人は、一生知らないままで終わってしまうだろうし、そこから先、可能性が広がることはない。
別に皆がクロスメディアエキスパートになる必要はない。ある部分部分の仕事をきちんとこなしていく職人タイプの人も、絶対これからも必要だが、それとは別にクロスメディアエキスパートという人材も必要だろう。
道のりは長いかも知れないが、自分の中に知識を貯めていって、いつか全体がつながってきて、全体像が見えてくるということもあるだろう。 試験で合格することだけではなく、この試験で合格するためにはどんな知識が必要で、なぜそれが必要なのかということを考えながら勉強するというのは、非常に意味があることである。
2007/06/01 00:00:00