クロスメディアという言葉はいろんな分野で使われるようになったが、なんでもかんでも異なるメディアを組み合わせればよい結果がでるわけではなく、個々のメディアの特性をよく知っていなければプラスアルファの結果は生まれない。しかしメディアの特性というのは、今我々が目の当たりにするところの様相からは想像し難いことも多い。要するに捉えがたい面があることは仕方がないが、捉えることは強みになる。
テレビが茶の間の主人公のような顔をして娯楽の王様であった時代には、ニュースや天気予報は添え物のようであった。映画界はテレビに娯楽を奪われることを気にしていた。しかし今日振り返ると、テレビが映画のようなコンテンツを続々と産み出すことはなかったし、ニュースや天気予報は独立した不動のコンテンツとなっている。娯楽としての民放のテレビはバラエティのような軽いものに終始している。映画が有料コンテンツであるのに対して、民放テレビは広告モデルなので「とっつき」のよさを優先せざるを得ないからだろう。
広告に多くを負っている新聞も総合雑誌も似たような「とっつき」のよさを持たせないとマスメディアにならない。メディアの特性の話に戻ると、情報伝達手段がデジタルであれアナログであれ、マスを対象にすると内容は中庸になり、内容を先鋭化させるとマスメディアにはならないということである。だから「細かい注文」をつけない客層にはマスメディアは有効だが、ファンになってくれそうなコアな客は、もっと客の行動形態にあったメディアを選ばなければアプローチしにくいことになる。
行動形態とメディアの関係を考えると、人の性別・年齢や職業や教育や所得などなど多くの分類属性があり、新たに登場したメディアの特性から考えるよりも、対象顧客の側から考えるべきものであるが、これが刻々と変化しているのが今日の姿だ。パソコンとケータイがどう使い分けられているかについてのアンケートがよく行われるが半年も経つと変化している。ケータイの定額制や広帯域化によって、パソコンと同じように検索をするとか画像表示をするなどケータイ側の変化がある一方で、ケータイ一本やりだったユーザもパソコンで動画を楽しむようになるなど、まだまだ新しいメディアの使われ方は流動的である。
ケータイでもパソコンでもネット上のものはマスメディアではないが、マスメディアと同等の広いリーチを持つようになった。しかもそこからニッチな情報に誘導し、AIDMA・AISASという動線につなげることができる。テレビも地デジ・ワンセグなどで同じような試みをしようとしているが、ケータイ・パソコンはすでにそうなっているのに対してこれからであることと、テレビ系は局や広告代理店経由で提案をするために新たなモデルの自由な競争が行い難いので、ネットとの競争に追いついていけるか疑問である。
つまりネットのメディアとSP側の組み合わせが今のところ旬のクロスメディアである。この分野に経験をもつ会社や人が、他メディアの特性に関する知識やメディア組合せの応用力を高めるなら、今までマスメディアに行っていた販促予算に食い込んでいくことができるだろう。たとえメールのマーケティングでもリスティング広告でも、ネットではマスメディアにおける販促効果の曖昧さに勝るデータがだせるので、クロスメディアのシステムは効果のシミュレーションやモニタリングをしっかり作れば、予算のシフトは一時的なものではなく時代の潮流になるはずのものである。
(2007年7月)
2007/07/05 00:00:00