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クロスメディア時代のDTPソリューション

〜動き出した文字フォント環境とDTP・XMLソリューション〜

WindowsVistaのフォントと文字セット

2007年1月にマイクロソフトの新OSであるWindows Vistaが発売された。Vistaでは、標準のフォントと文字セットが、従来のJIS X 0208:1990をベースとしたものからJIS X 0213:2004規格のものに変更された。
新しいシステムフォントとして、新デザインのメイリオが搭載された。従来、システムフォントであったMS明朝とMSゴシックは新バージョンになり、文字セット・字体の変更が反映されている。

JIS X 0213:2004は、新たに第3、第4水準漢字が拡張され、また国の指針である印刷標準字体に基づき、例示字体を変更したものである。
第3、第4水準漢字が拡張されたことで、人名用漢字もサポートされることとなった。したがって、WindowsVista以降のシステムやアプリケーションでは、従来外字や異体字等としてサポートせざるを得なかった漢字のかなりの部分を、標準的に扱うことが出来るようになる。

しかし、旧システムと新システムの混在環境や他社OSなどクロスプラットフォーム環境では、互換性など若干の混乱が考えられる。
印刷業界は文字を扱う専門家の立場として、一般企業などへの助言を求められることも予想される。

アドビシステムズは、以前からAdobe-Japan 1-5という文字セットにおいて、JIS X 0213:2000と印刷標準字体の文字を実質的にほぼカバーしていた。JIS X 0213:2000に完全に対応するのはAdobe-Japan1-6である。
モリサワは、新たにAdobe-Japan1-6文字セットに対応したOpenType Proフォント(23,058文字)10書体リリースを発表している。
フォントワークスは、Adobe1-5、Adobe1-6の文字セットに準拠し、Unicodeエンコーディングを変更したAdobe1-5n、Adobe1-6 nのOpenTypeフォントのリリースを発表している。

また、Vista対応として、モリサワではリュウミン・新ゴなど10書体のVista文字セット準拠のTrueTypeフォントを発表している。
イワタでも、Vista文字セット準拠のTrueType製品のリリースを発表している。

アドビシステムズのDTPソフトウエア最新動向

アドビシステムズのDTP・Web・ビデオ関連ソフトウエアが、2007年5月に発表され、Adobe Creative Suite 3(以下Adobe CS3)となった。
Adobe CS3には、印刷およびWeb・モバイル端末を対象としたデザインの「Adobe CS3 Design」、Webデザインおよび開発向けの「Adobe CS3 Web」、ビデオ関連のポストプロダクション・ツールの「Adobe CS3 Production Premium」、総合パッケージである「Adobe CS Master Collection」など6種類のスイート製品がある。
その他にPhotoshop、Illustrator、InDesign、Dreamweaver、Flash、Premiere、After Effects など12種類の単体アプリケーションの最新バージョンがCS3として発表されている。

ほとんどのアプリケーションの動作環境として、最新システムであるインテルプロセッサ搭載Mac(MacOS X v.10.4)、およびWindows Vistaに対応しており、高いパフォーマンスが期待される。

これらの製品は、アドビシステムズとマクロメディア統合後の初の本格リリースであり、デザイン、Web、ビデオなど多様なメディアのデザイン制作をトータルでサポートする製品群となっている。
ユーザリクエストを反映した多くの新機能を搭載し、アプリケーション間のデータのやり取りや、操作性などが改善されている。例えば、InDesign CS3でレイアウトした結果をXHTMLに書き出し、Dreamweaver CS3で読み込み、CSS(カスケーディングスタイルシート)を適用することで、容易に印刷とWebレイアウトを連携することができる。
また、従来のモバイルコンテンツ制作は、PC上で制作したコンテンツを実際のデバイスに転送し、テストする必要があった。各スイート製品に同梱される新アプリケーションのDevice Centralにより、PC上で各モバイルデバイスの動作プレビューやテストを容易に行うことが可能となり、制作工程を大幅に効率化することができる。

出版・印刷や広告分野におけるあらゆる出版物が、Webでの情報発信と関係付けられるようになってきた。そのため、印刷デザイン・Webデザイン・コンテンツ制作を関連付け、デジタル・データを活用することが求められている。それを実現するためのツールや環境も、徐々に出揃いつつある。
今後は、このようなツールを活用する知識や技能の向上、人材育成がビジネスの成否を分けるだろう。

その他のDTPソフトウエア

クォークジャパンからは、「QuarkXPress 6.5日本語版」がリリースされている。動作環境がMac OS X、Windows2000/XPになり、複数の印刷用ドキュメントやHTMLドキュメントを総括して1ファイルとして扱える機能など、クロスメディアパブリッシング機能を強化したものとなっている。
6.5では、Adobe Photoshopのネイティブファイル(PSD形式)をインポートし、さらに、フィルタの適用・色調節・色変換などのイメージ操作をQuarkXPress上でおこなう画像編集機能が追加された。また、OpenTypeフォントのダウンロードにも対応している。他にExcelファイルをインポートできるなど表組機能が強化されている。

PDF/Xの利用動向とAdobe Acrobat

PDF/Xは、印刷データ入稿の信頼性向上のためにPDFの機能を制限することを目指し、ISO規格となったものである。たとえば、PDF/X-1aではフォント埋め込みとCMYKカラーが必須であり、そのためPDF/X-1aであればフォントの有無や色空間の違いによる入稿トラブルは起こり得ない。

日本国内では、印刷会社が入稿データの修正を行うことが多いため、アプリケーションファイル入稿が一般的である。しかし、アプリケーションのバージョンや、OS、フォント環境などを合致させる必要があり、トラブルも少なくない。
PDF/X-1aによるデータ入稿では、アプリケーションやOS・フォント環境に依存するトラブルを回避することができる。

PDF生成ツールのAdobe Acrobat 8.0 Professionalでは、印刷関連の機能が「印刷工程ツールバー」としてまとめられており、操作も分り易い。インキ総使用量、RGB画像、オーバープリントなどを検出する出力プレビュー機能や、ヘアライン修正、裁ち代やトンボを付加する機能が搭載されている。
また、プリフライトの結果、問題のあるオブジェクトを検出し、ビジュアルに表示されるため、PDF/X作成が誰にでも可能となり、修正の手順も容易に理解できる。

徐々に浸透するXMLパブリッシング

XMLパブリッシングは、データをXML化することより、再利用が容易な形でデータを管理し、印刷物やWebなど多様なメディアに情報を発信する手段である。近年、徐々にXMLパブリッシングに適した分野が明確になってきた。

製品マニュアルの制作では、Wordデータやテキスト原稿をもとにDTPレイアウトをおこなっていることが多かった。しかし、校正紙に赤字を入れ、DTPオペレータが修正をおこなうといったやり取りがあるため、実質的にアナログ作業と同等であり、非効率であった。
また、過去の記述内容の流用や変更が多いにもかかわらず、DTPデータの流用・変更が困難であるため、ヒューマンエラーが多いという問題もあった。

データ構造を定義し、XMLデータとして保存すること、およびそれらのデータから印刷物制作などの情報発信をおこなうXMLパブリッシングシステムを構築することで、さまざまな効果を得ることが実現されている。
XMLベースで校正をおこない、データの一元管理が可能となる。校正完了後に、一括自動組版や目次・索引の自動生成などをおこなうことができる。過去のデータ流用や更新も容易である。
印刷物だけでなく、Webサイトへの情報発信などマルチユースも迅速におこなえる。特定のアプリケーションやOSに依存したデータ保管から脱却し、将来的な活用を妨げないといったメリットがある。

このように、データ構造を定義することで効率的なパブリッシングが実現する分野として、法令集や辞書・用語集、学習教材などが挙げられる。

■出典:JAGAT 発行「2007-2008 グラフィックアーツ機材インデックス」 工程別・印刷関連機材総覧

(2007年8月)

2007/08/29 00:00:00


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