クロスメディア研究会では、Web標準の基本的な考え方や構築手法について、Webデザイン関連の書籍を執筆されている、株式会社エイチツーオー・スペースのたにぐちまこと氏にお話を伺った。
Web標準とは、Web Standardsという言葉を日本語にしたもので、堅苦しく言うと、「標準的な技術を利用してWebサイトを制作しようという考え方の定義をまとめたもの」である。
それでは標準的な技術とは何か。WebサイトはHTMLやCSS等の技術を使って制作されるが、これらの技術はW3C(World Wide Web Consortium)というアメリカにある非営利団体によって勧告されている。HTMLの定義やHTMLの記述方法などがW3Cのサイトに仕様書としてまとめられている。Web標準というのは、このW3Cの仕様書に従ってWebサイトを制作することをいう。
では、なぜWeb標準に準拠する必要があるのだろうか。身近な例で考えてみるとわかりやすい。 例えばJIS規格では鉛筆の太さや紙の大きさなどを定めているが、これによって鉛筆の太さが決まっているため、コクヨの鉛筆をトンボの鉛筆削りで削ることができる。当たり前の話に思えるが、もしそれぞれのメーカーがバラバラの太さの鉛筆を作ってしまうと、コクヨの鉛筆を買ったらコクヨの鉛筆削りを買わなくてはならないなど、利用者にとって不便なことになってしまう。
それはWeb標準という規格にも同じことが言える。Web標準を守らないで作られているサイトは世の中にたくさんあるが、それは作った人やクライアント先のWeb環境ではきちんと見ることができ、レイアウトもきれいでデザイン性も高いと評価が高いかもしれない。しかし、そのサイトを見ている人たちの中には正常にWebサイトを見ることができない人たちがいるかもしれないし、障がい者にとっては非常に使いにくいサイトになってしまっているかもしれない。
Web標準に沿ったサイトを作ることによって、いろいろな人たちが使いやすいサイトにしていこうというのがWeb標準である。
Webが生まれたときは印刷物の代わりにネットワークを通じて画面上で見るという使われ方をしていた。しかし、Webの本当の利点はそこではない。 ワンソースマルチユースという、ひとつの元となるものからさまざまな使い方ができるようにするというのがWebの本当の利点である。つまり、ひとつHTMLを作れば、パソコンや携帯電話を使って大人でも子供でも、自分たちの使いやすい形でデータを見ることができるということである。
Web標準に準拠したサイトの場合、文字の大きさをユーザーが変更できるので、パソコンで表示しても携帯電話で表示しても、音声ブラウザでもきちんと読むことができる。 しかし、Web標準に準拠していないために文字の大きさが変更できないサイトの場合、Webが本来持っているこれらの力を発揮できないことになる。
(「JAGAT info」2007年8月号より一部抜粋)
2007/09/09 00:00:00