新しいビジネスを立ち上げるときには新たな組織を作る場合が多いが、寄り合い所帯で形だけあっても空回りすることがよくある。個々の企業でなくて、「ある」分野においても似たようなことは見受けられる。アメリカ・サンフランシスコのリンデンラボ (Linden Lab) が運営する仮想世界セカンドライフ(Second Life)はマスコミでもよく採りあげられ有名になった。世界に1000万近い利用者がいるといわれる。
しかし一見ゲームのようなところなのだが、子供が遊ぶところではない。3Dで店舗や商品を作って商売ができるようリンデンドルという仮想通貨がある。製作物の著作権・所有権が認められている。大人の世界を仮想にしたものである。ルールも大人のもので、人種や宗教・性別の差別行為、脅迫・いやがらせ、ゲーム以外の攻撃行為、暴露行為、アダルト表現、スパムなどの迷惑行為など6つの禁止事項がある。
リンデンラボは何もないものを値段をつけて売っている仮想の不動産屋のようなもので、それを使って一般企業から公共・一般の団体が活動をしている。日本でも電通などの代理店が企業の出店のビジネスを行っていて、具体的にはC言語に似た独自のスクリプト言語で記述して制作するものに大企業がかなりの費用をかけている。
しかしTVやWeb・ケータイと異なって、セカンドライフの中を日常的に徘徊している日本人はそうは居ない。日本人の興味のあるものはまだそれほどはないからである。ではなぜメディアとしては何桁違いに利用者が少ないセカンドライフの出店に企業の予算がつくのだろうか?
実際にセカンドライフの中を覗いたり、そこで何ができるかを企画できるのは30才代までの若い人であって、その企画にゴーサインを出すのは50〜60才代の広報関係ではベテランの人であろうが、ベテランはセカンドライフが何者かよくわかっていないだろう。ただ他社がセカンドライフに出店しているなら負けられないとか、あるいは広告代理店のプレゼンが上手なのかわからないが、いずれにせよセカンドライフの実態とは関係ないところで判断されているフシがある。
つまりここには30才と60才の世代ギャップのようなものがある。あるいはデジタルデバイドの一面でもある。60才のベテランは広報なり販促なり実務の第一線は潜り抜けてきても、まだ未熟だったデジタルやネットはかかわからないで企画なりプレゼンをしてきた人が多い。一方若い人は実務の第一線を担ったことはないが、ネットの世界で何が起こっているかは敏感にわかる。この両者が意識を共有できないでいるのではないだろうか。
やはり新たなビジネスの創出のためには、ベテランも今日的なメディアの使われ方の実態を見る必要があるし、若い人も制作や技術に関する興味だけでなくビジネスそのものを学ばなければならない。どうやったらそういう関係ができるのだろうか? それは個々の経験に基づいて主張をするのではなく、共通の目的意識や使命感や知識・スキルを持てるようにマネジメントすることであるし、その過程を通してお互いの能力が向上していく。
クロスメディアエキスパート認証試験に向けてのソリューション提案の演習講座では、各社から集まった参加者がグループワークによって一つの提案を作成するのだが、そのような共同作業を通じてお互いのビジネス感覚も判りあえるようになることがある。寄り合い所帯でビジネスを始めるには、まずお互いの殻を脱ぎ捨てる機会が必要であろう。
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2007年9月
2007/09/20 00:00:00