大日本印刷 市谷事業部 ソリューション推進部 池田敬二
出版不況と言われて久しい。電車の中でも書籍や雑誌に目を通している方よりも、ここのところ目に付くのは携帯電話や携帯型ゲーム機を手にしている人である。iPodなどのポータブルオーディオプレーヤーで音声コンテンツに耳を傾けながら目を閉じている人も多い。最近では出版界にとっても携帯電話やゲーム機も'敵'なだけではないという現象も起こりつつある。ここ数年、出版界で話題になっている「ケータイ小説」の例をあげるまでもなく、デジタルで制作された作品が紙の本でヒット作を生み出す現象は、もはやブームというより一つのジャンルを形成したかのような評価もされはじめている。
日経MJ2007ヒット商品番付で任天堂のWii&DSが東の横綱にランキングされた。
Wiiは幅広い世代を取り込み、402万台、DSは2034万台(エンターブレイン調べ)に達した。ゲーム業界では限界普及台数とされていた2000万台を突破したことで様々なビジネスの仕掛けがはじまっている。
2007年11月に弊社が株式会社am3に資本参加し、ニンテンドーDSをプラットフォームとした映像・出版コンテンツの配信事業を開始すると発表すると大きな反響があった。
「DSで爆発的に読まれた出版物が紙の本でもベストセラーに」という事例が頻発できれば出版界にもとっても追い風となる。様々なライフスタイルが生まれ、読書スタイルも多様化されている。日本ではまだ未成熟なオーディオブックもクロスメディアな市場拡販が期待できる。書籍や雑誌が売れない時代かららこそ売る知恵が求められる時代になった。クロスメディアという視点が一つの鍵になることは間違いなさそうだ。
■PAGE2008カンファレンス・セミナー関連セッション
●2月7日(木)
10:00-12:00 「C1 電子出版・電子書籍の展望 」
電子出版に関する取り組みの中から、デジタルならではのパッケージ化・配信手法の事例を取り上げ、デジタルコンテンツの流通のあり方について考察する。
●2月8日(金) 文化会館 5F 特別ホール
10:00-12:00 H7 「出版印刷におけるクロスメディアの取組と展望 」
出版・印刷におけるクロスメディアの新しい波がビジネスをどう変えるか、書籍の置き換えとしての電子ブックではなく、コミュニケーション環境の変化が出版をどう変えようとしているかを捉える。