メディア制作のデジタル化やWebの浸透を背景に、企業が扱う情報量は飛躍的に拡大している。各部署に散在する膨大な量のデジタルデータを管理し、有効に活用することは、企業戦略上でも重要視されるようになってきた。
クロスメディア研究会では、製品カタログやWebサイト制作における業務プロセスを見直し、デジタルデータの管理システム(DAM)の導入を進めた日本アムウェイの清水誠氏にお話を伺った。
日本アムウェイのコミュニケーション本部では、印刷物やWebサイトなど、いろいろなメディアを使って各種のコミュニケーションを行っている。最近は、デジタル系メディア(Webサイト、eラーニング、動画など)が増えているが、まだまだ印刷物が多い。製品カタログは150ページくらいのものを年4回、合計250万部を刷っており、その他製品ガイドやリーフレットなども含めると、計100種類以上の印刷物をかなりの頻度で作って配布している。
掲載されるコンテンツはほとんどが製品情報やビジネス上の情報である。同じようなコンテンツがいろいろなメディアで展開されているということで、コンテンツが増えれば増えるほど、それを作ったり管理したりする手間やコストが増えていく状況がだんだん課題になってきて、ECMというプロジェクトを始めた。
日本アムウェイでは、WebのCMSをWCM(Web Content Management)と呼び、それを含む、より包括的な企業内のあらゆるコンテンツを管理するという意味での概念として、ECM(Enterprise Content Management)と呼んでいる。Webコンテンツだけでなく、もっとお金の掛かっている、印刷物のコンテンツ管理、自動組版なども含む。
いわゆるDAM(Digital Asset Management)ソリューションを導入している。原稿やマーケティングの素材(画像・テキスト)などをドキュメントとして管理するソリューションがあり、そこからWebや印刷物に流し込んでいる。
ただ、各種のITソリューションを導入するだけでは現場は回っていかないので、いろいろな制作のプロセスを管理するための取り組みや、プロセスそのものをワークフローで管理するソリューションなども導入しており、それら全体でECMと呼んでいる。 日本アムウェイにおけるECMは、日本からアメリカの本社に働き掛けてグローバル化した、日本発のグローバルプロジェクトで、2003年からこれまで5年間掛けて取り組んできた。ポイントとしては、大きく分けて次に説明する3点になる。
(1)コンテンツのアセット化
コンテンツというのは、原稿や画像の元データなどを指す。せっかくお金を掛けたコンテンツを埋もれさせて消えてしまうのではなく、大切に保管してどんどん活用していかなくてはならないというのが根本的な思想である。
いきなりDAMシステムを導入したわけではなく、そもそもどういうコンテンツを私たちは持っているのか、持つべきなのかというところから、コンテンツを管理して作っていくときの扱い方など、コンテンツ関連のプロセスを標準化していった。そして、各所に存在していたファイルなどを集めて、実際に使えるアセットとして加工を加えていった。2006年になり、ようやくDAMシステムが導入された。この順番が重要だったと思っている。
ECMにおけるDAMの最大のポイントとして、私たちはほかのシステムとの連携が容易なことを重視した。例えばDAM上に製品情報を管理しているのだが、その製品情報を編集する方法として、管理用Webからのアクセス、ExcelやWordからの取り込み、Accessのデータベースとの同期の3つがある。配信系では、WebのCMSや、InDesignのプラグインとの自動組版の連携、まだ実現していないが、eラーニングのシステムやメールの一斉配信の仕組みも別に入っているので、将来的にはこれらも連携させていきたいと考えている。
DAMというのは保管するためのデータベースではなく、コンテンツの活用を促進するためのインフラであると位置付けている。
(2)プロセスの改善
コンテンツのアセット化を進めると同時に、いろいろなプロセスの改善も行った。まず、印刷物ありきのフローでコンテンツを制作していた体制から、汎用的なアセットとしてコンテンツを作り、その後にWebなり印刷物なりに展開するというように、フローを2つに分けた。そして、これに伴い、メディアを作るチームとアセットを作るチームを分け、さらに、アセットを管理するチーム(司書のような役割)を新しく作った。
(3)コンテンツをサービスする
今一番進行中で力を入れているのが配信の自動化である。DAMに入れたコンテンツをいかに自動で印刷物やWebサイトに配信していくのかというところが一番重要だと思っている。コンテンツは管理するものではなくサービスするものだと考えている。
ECMで一番やりたかったことをひと言で言えば、すべてのメディアで一貫したメッセージの掲載を効率良く実現したいということである。
(「JAGAT Info」2008年3月号より一部抜粋 クロスメディア研究会)
2008/03/17 00:00:00