かつては地図は電子情報化がなかなか困難な分野であったが、デジタル化に際しては地形や住所番地といった基本図の上に、道路・アクセス手段、建物、ビジネス・サービスなどを層別に情報化していって、10以上のレイヤーの重ねあわせで表現するようなものになり、それまでの静的な出版物からデータベースのように更新されながら使うものへと変わっていった。
地図出版にもそれぞれの専門分野があって、街路などの区分地図とか、ショッピング・観光地図など、その地図出版社のノウハウによってコンテンツの作り方が少しづつ違ったりしていた。しかしアナログの時代と違ってレイヤーの追加によってコンテンツが膨らませられるデジタルの地図は、地図だけで完結したものよりは、いろいろな目的に使える情報インフラの一部になりつつある。
インターネット時代になってGoogleマップに代表されるようにマッシュアップの典型例として地図が扱われ、レイヤー単位よりもきめの細かい組み合わせが可能になった。さらにケータイ電話などgps(位置測位システム)対応のデバイスが増えるに従って任意の地点を起点としたリアルタイムでダイナミックな地図の需要が増えている。おそらくエリアマーケティングは地図のデジタル化によってすっかり変わったものとなるだろう。
かつてバッチ処理でデータマイニングして絞った対象に対してマーケティングや営業展開をする場合は、得られた得意先データに関して人手で地図の上にプロットして販売行動用のものを作っていた。今は販売データや得意先データもコンピュータ化されているので、社内システムであってもマッシュアップ的な手法で既存のデータを地図化して眺めたり、「点から面」へデータの集積を変えることで営業展開でも訪問効率を上げることが考えられている。
地理的な距離の隔たりは、人間にとっては時間的な隔たりも意味するので、時間の節約をすることが最優先である仕事では、協力先が近い距離にあることが重要である。このような情報を地図化してみると時間の問題に置き換えられる場合がある。また地図上の2点を結ぶ通り道の価値を再考することもあるだろう。位置情報は新たな視点を与えてくれるものである。
(クロスメディア研究会会報226号より)
2008/04/10 00:00:00