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情報多様化を乗り切るクロスメディア戦略

皆さんはこの春にお花見には行かれましたか? 花見といえば一升瓶をぶら下げて、というのは落語にもよくでてくる情景ですが、最近のお酒は多様な種類があって、日本酒であってもいろんな容器が作られています。あらゆる花粉に弱い私は花見には行かないのですが、やはり一升瓶でないと似合わないと思います。一升瓶の存在感は、今日は腰据えて飲むぞ、という意気込みを与えてくれるのではないでしょうか?

昔は「酒」といえば一升瓶があたりまえであったとのことです。クロスメディアエキスパート試験問題作成のために日本酒の蔵元を取材しましたが、その昔は一升瓶に酒をつめれば端から売れた質より量の時代だったそうです。ところが今日の蔵元では倉庫部分の半分くらいが、カップや小瓶や紙容器などいろんなパッケージに酒を充填するラインがいくつも並んでいました。日本酒も焼酎も味が勝負になっただけでなく、消費者がお酒を飲みたい場面や局面に合わせた形態にして提供しなければならなくなったということです。どこで誰と飲むかで量の多少とか、容器のおしゃれさというのが異なるわけです。

飲料容器の多様化はお酒に限らず同様のことがいえて、たいていのものがビン、缶、ペット、紙など異なる容器で、さらに大小さまざまなものが同時並行的に提供されています。ジュースや酒といった中身を「コンテンツ」、容器を「メディア」と考えると情報伝達の世界のクロスメディア化がわかります。消費者・生活者のさまざまな場面・局面に応じて同時並行的に情報受発信がされるようになってきたのも自然な流れといえるでしょう。

確かに生活者・消費者の視点で密着した商品開発をすれば喜ばれるだろうことは想像に難くないですが、同じ内容の商品の形態を多様化してもそれぞれが多量にさばけるのならともかく、多様化は効率の低下とかコストアップというリスクを含みます。情報伝達も可能なことならばTVCFを一本バン!と打てば、あとはウハウハ儲かるのがもっともラクチンでしょう。でもそうはならないからこそマスメディア広告は下がってフリーペーパーやインターネット広告・モバイル広告が増えているわけです。

情報伝達手段の多様化がもたらすものは、制作側にとってはひとつひとつの仕事が小さくなっていくことと、また飲料の容器がビン、缶、ペット、紙など入れ替わってしまうように、メディア選択の流動化によるリスクの増大です。仕事の単位が小さくなるからといってsohoに任せることもできないものは多く、それらは今までのメディア制作を担ってきた会社にまわってくるでしょう。つまりデジタルメディアの仕事は日本全体としてはマスメディアを喰って伸びるでしょうが、個々には小さくてリスクの多いものになるのです。さて皆さんは、そんな仕事はヤッてられネェや!、と考えるのでしょうか? それとも、まとめて面倒みよう! と考えるのでしょうか?

昔から印刷会社にとって名刺という印刷物は、本心では受注したくないが、得意先との付き合いで断れないのでしぶしぶ引き受けていたようなところがありました。ところが今日ではWebToPrintで営業レスで直接仕事が入ってくる仕組みを作って、集中処理によって大きな売上げを上げる会社も出てきました。なぜでしょうか? 名刺そのものは変わりませんが、仕事の仕方が変わったからです。ITやネットを使って人手を介さないで仕事が流れるようにしたからです。

先ほどのデジタルでメディア制作の単位が小さくなるとかリスクが増える分も、それこそデジタルメディアと同じ土俵にあるITやネットを使った新たな仕事の流れを開発することでボトルネックを解消できたならば、制作側にとってもクライアントにとってもハッピーになるでしょう。そのようにITやネットを使ってクロスメディアが負担をかけずにできるソリューションを提案できなければ、今後の制作のビジネスは立ち行かなくなるでしょう。

JAGATでは人材育成プログラムという点では、クロスメディアエキスパート認証制度を、また動向把握や情報交換の場としてはクロスメディア研究会を実施して、皆さんが実際にITやネットを使った新たな仕事の流れを作りだせることを目指しています。そのヒントはクライアントのビジネスそのものがITやネットを使った改善をしようとしているところに同期したメディア作りです。いいかえると実ビジネスとしてのクロスメディアなのです。

参考情報 : 4月14日(月)実ビジネスとしてのクロスメディア

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2008/04/03 00:00:00


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