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HTML 5はWebの世界に何をもたらすのか?

Webに関連する技術の仕様を統括するW3Cでは、HTML 4の後継となる次期HTML標準(HTML 5)の策定に向けて、現在規格作りが進められている。 HTMLは従来、現行のHTML4.01がHTMLの最終バージョンと位置付けられており、その後はHTMLをXMLにより再定義したXHTMLへの移行が推奨されていた。W3CはなぜHTML 5の標準化作業に着手することになったのか、W3CのHTML作業部会の担当スタッフに、HTML 5策定の意義と狙いを伺った。


HTML 5の標準化に着手した理由

HTML 5の標準化に着手した理由は、HTML 4ないしXHTML 1で問題となっていた部分を解決することが目的である。HTML 4では利用するブラウザごとに、例えばJavaScriptなどの動作が微妙に違うところがある。当初はそれほど問題にはならなかったが、2004年、2005年ごろからのAjaxの普及で、ブラウザがWebアプリケーションの動作基盤として使われるようになると、単に人間が見て納得できる表示ができればよい、というような緩い相互運用性では使えないのではないかという議論が出てきた。こうした流れを受けて、HTML 5では、どのユーザーエージェント(ブラウザやマークアップ検証ツールなど、HTMLをデータとして解釈するもの)を使っても利用できるという、相互運用性を確保することが一番の問題点として設定された。

これまでなぜブラウザ上で動作がまちまちだったのかと言うと、HTML 4.01の仕様書の中ではユーザーエージェントにおけるHTMLの仕様の処理の方法が明確に規定されておらず、あいまいな部分を残したままで実装が行われていたためである。単に人間が見るだけのものであれば、CSSなどの技術でうまく調整してしまえばよかったのかもしれないが、DOMのような技術を使ってAjaxに代表されるWeb2.0的なWebの使い方が広まり、アプリケーションとしてWebを使う流れができたことによって、その動作の違いによる影響がより大きくなってきてしまった。

このような問題を解決しなければ、シングルソースマルチユース、つまり1回ソースを書いてコンテンツを作れば、どんな携帯ブラウザでもWebブラウザでも使えるという状態にすることができない。適合性を厳密に確保した上で、それが的確にユーザーエージェント上でも実装されることを仕様書として保証し、そのために必要なことをW3Cとして標準化していくためにHTML 5の仕様策定作業が開始され、現在動いているということになる。

HTML 5は採用が進むのか?

HTML 5は、ブラウザベンダーやコンテンツプロバイダーが実際に欲しがっているHTMLを作っていこうという形で策定が始まったものなので、少なくともこれらの企業が作っているサービスやブラウザでは十分に実装が進むと思われる。既にcanvas、videoといった新しく導入される要素のいくつかは、AppleやMozilla、Operaなどのブラウザで実装されている。また、携帯機器向けのブラウザ企業も作業部会に参画しているため、そちらでも実装が進んでいく可能性は高い。W3Cでは、ブラウザ側での実装は比較的スムーズに進むと考えている。

一方、コンテンツ制作ツール(Dreamweaverなど)のほうは、ブラウザ側で対応している機能への対応が必要不可欠であるため、やはりこちらでも採用される見込みは非常に高いと思われる。

(「Jagat info」4月号より一部抜粋・詳細報告はクロスメディア研究会会報誌VEHICLE No.227に掲載予定)

2008/04/23 00:00:00


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