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XML一問一答 第5回〔XSLT編〕

Q : XMLの利用について障害となりそうなものは何か?
A : XMLを単なるインタフェイスではなく情報の保管に使用するためには,データをモデル化する手法を確立しなければならない。そのためには,ドキュメントの分析のみならず,業務の流れ・情報の流れ・権限,組織などの分析が必要になる。
ここで必要となるのが,用語の統一や業務手順の明確化などの「標準化」である。これは暗黙のルールを洗い出し明文化する仕事であり,各部署との調整を図る事も必要となり,すべての情報を標準化するには膨大な時間が掛かることになる。XMLがコンセンサスビジネスと呼ばれるゆえんである。
残念ながら日本の企業の多くは社内情報や社内業務の標準化が遅れている場合が多く,このことがXMLの導入を遅らせる原因となっている場合も多い。しかし,実は多くの場合,全社のあらゆる情報の標準化を待つ必要はなく,XML化を小規模に始めて全社に広めるための工夫をすることは可能だ。XMLはそのために必要な機能を十分持ち合わせている。

Q : 業界標準のXMLを作ることはどうか?
A : これは非常に重要な課題である。これからの社会はすべての仕事を自社だけで行うことはできず,EC/EDIの例を見るまでもなく,ほかの企業や顧客との情報のスムーズな交換が企業活動の生命線となる。そのためには共通の用語,共通のボキャブラリ,共通のXMLスキーマを業界内で確立し,普及させることが必要なのは言うまでもない。
情報交換フォーマットをXMLで規定する動きは,電子部品・建設・自動車・機械部品・金融・放送・通信・出版メディア・科学・旅行・医療などあらゆる分野に及んでいる。これは業界全体の浮沈にも影響する重要な問題となる可能性がある。印刷出版業界においても,XMLによる業界標準の確立が有効な分野は非常に多く,日本から世界標準となる規格を発信する絶好の機会となっている。
またこの動きは,ビジネスの活性化や新規ビジネスの開拓効果もある。例えばeラーニングの世界では,これまで各eラーニング管理システムが独自形式のコンテンツを配信していたが,SCORMというXMLを利用した規格によってコンテンツを統一する動きが加速している。これによってほかのシステムのコンテンツを利用することが可能になる。世界中から良いコンテンツを探してきて利用することができるようになるため,コンテンツの流動化やシステム利用の活性化が見込まれる。

Q : XMLが基盤技術として確立してしまえば差別化することはできなくなる?
A : 答えはNOである。私はセミナーなどで話す時,XMLを扱う技術が次のように変遷していくと分析している。
@少し前XMLが「要素技術だった時代」には,XMLを扱うための専門知識をもったプログラム技術者の養成が必須であった。
A現在は「既成技術の時代」となり,多くのアプリケーションがXMLに対応するようになって,技術的なハードルは低くなってきたといえるだろう。
BこれからのXMLは「利用技術の時代」で,XMLを何に使うかどう使うかが重要な要件となり,現場を知る人がXML的発想を行うことの重要性が急速に高まるだろう。
つまり,今後XMLは一般化既製化し,多くの場合目に触れない裏方の技術として広く使われていくことになるだろう。しかしXMLは,コストダウンと新ビジネス創造の両方を行う,戦略上重要な技術であることに変わりはない。XMLはさまざまな応用が可能なため,理論だけでなくノウハウや経験が重要である。これからも,仕掛けを作る人とデータを入力する人の利用技術によって差別化が十分可能で,さまざまなビジネスチャンスを作り出す重要なカギとなることだろう。

Q : XMLはずっと使えるか?
A : XMLはインターネットの世界で生きている。つまり通常の世界の何倍かの速度で常に進化し続けることが求められているわけである。
XMLが進化し続けるということは,常に最新のインターネット技術の恩恵にあずかれることを意味するが欠点もある。XMLは規格自体もアプリケーション側の対応も常に変化を繰り返し,いつまでも完成しない情況にあるという点である。現時点で作成したXML文書が,そのまま5年後10年後に生き残ることができるかというと,多分そうではないだろう。
しかし解決策はある。その一つは,XMLの関連規格によって,古いXMLから新しいXMLへのコンバートがある程度保証されていることである。基本的にXMLデータそのものはテキストにタグ付けしただけのものなので,スキーマ定義が正しくなされていれば汎用性も可搬性も十分確保することが可能である。そのためにはアプリケーション依存のXMLにしないことが重要である。
さらに,扱うデータがデジタルドキュメントであれば,30年間姿が変わらないSGMLの技術を利用することができるという点も有効な解決策となる。
この点に関しては,XMLのプロにコンサルしてもらうことが解決の近道である。

Q : あなたはXMLを使いますか?
A : この質問に答えを出すのは自分自身である。 XMLは単なる基盤技術ではなく,「情報の資産性の向上」や「品質とコストの問題」「コア技術陳腐化の問題」さらに「顧客にとっての価値創造の手法」など経営戦略上非常に重要なソリューションであることに既にお気づきだろう。XMLに関する技術は奥が深く,ここで十分に説明できたわけではない。
JAGATでは,受講者のレベルやニーズに応じたさまざまなXMLのセミナーを開催し,特に印刷業に必要なXML技術の習得をサポートしている。ぜひ,JAGATが主催するXML関連のセミナーに参加して,時代の息吹をご自身の肌で感じていただきたい。

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2002/12/01 00:00:00


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