かつてワークステーションによる文書管理システムというのは、DTPの兄貴分のようなシステムで、DTPの将来像としてそれに近い発展があるのかと思われた時期もあった。今日では文書管理は存在しているのか、いないのかわからない曖昧なものなった。しかし文書管理に問題がなくなったわけではなく、文書というものの性質がIT化とともに変わってしまったのである。
以前盛んだった文書管理システムとはホストコンピュータやUNIXのワークステーションで、マニュアルなどの改版管理、多言語版管理、分冊・分版の管理などを行うものが主であったように思う。ところが文書業務はホストコンピュータからのダウンサイジングを飛び越して、大手企業でもパソコンによる分散化が進み、文書管理システムが考えていたような、どこかセンターサーバにつながった端末で編集作業をするようにはならなかった。
また文書管理システムでは最終的に作られるのはプリントという前提だった。PDFも当初はアプリケーションから独立したフォーマットという点がメインで、通信で送ってプリントするものであったが、AdobeはPDFのコンセプトを時代にあったように何度も見直しをして機能を加えたので今日でも残っている。しかし文書システムはなかなか紙の文書モデルから抜けられなかった。
ところがいろいろなオフィスの作業がパソコンで分散的独立的に行われるようになって、従来の文書作成というアプリケーションの範囲を越えたダイナミック文書の利用という新たなニーズが出てきた。OneToOneマーケティングやeラーニングでは、オンデマンドでの文書生成や送付が求められ、紙の文書のような編集済みのページを保管することよりも、文書の素材・パーツレベルの管理であるアセット管理とか、文書の生成や配布にまつわるトランザクションも含めたコンテンツ管理が必要になった。
これらはパソコン単体で出来ることではなく、サーバベースで、また分散したコンピュータの連携が必要になる。そこでは文書管理に使おうとしてたSGMLがXMLと姿を変えてデータ流通やデータ管理の主流になろうとしている。文書管理の環境はハード・ソフトともに大きく変わったが、ホストコンピュータであろうともUNIXであろうともWindowsでも、結局システムの考え方としては同じような結論になりつつある。
最終的にどのようなことが必要なのかを長期的に、また抽象的に考えておくことは無駄ではないといえる。まだまだコンピュータ環境の変化はダイナミックで、近未来に向けたビジネスはなかなか思いどうりの道筋では進まない。AdobeのPDF戦略のような時流にあわせた改定がないと生き延びられないのだろう。それと合わせて、もっと先の将来を見据えた開発の指針というのも持たなければならない。
テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 192号より
2002/11/24 00:00:00