XMLを取り入れてシステムを再構築することは大きな流れだが、そこでの印刷会社のポジションをどう考えたらいいのか迷う人もいる。従来からの業務の中身や流れを知っている印刷会社は、業務の改善は提案できるかもしれないが、実際のシステムの構築にはITの技術的な背景が必要なので、それなりのシステムインテグレータ(SI)とタイアップした方が無難である。システムは一度構築したらお終いではなく、2年くらいで手を入れていかねばならないので、かなり技術の先まで見通す能力が求められるからである。
そういう意味ではXML化はSIの独壇場のようにも見えるが、企画・構築・立上げまではSIが行っても、中のコンテンツの手直しや校正などはSIは面倒を見ない。そこで印刷会社などの役割がでてくる。一般的にはデータ処理関連に関しては仕事はあるだろうが、やる気はしないと考える印刷会社が多いだろう。もっとも今のXMLブームのようなものはいびつで、XMLでのデータ処理の業務に魅力を感じないのは印刷会社だけではないかもしれないが。
印刷会社は写植の延長で情報処理を手がけたところも多いが、ビジネスの特徴として手離れが悪いことが敬遠されているかもしれない。しかし印刷物を刷って納品したらオワリであったのと対照的に、ITや電子メディアはシステムも運用もすべてデジタルでつながったものであり、技術の変化を取り入れながら常により効果的になるように改善していくから、手離れはしないことは当たり前である。
写植・製版からDTPという技術に移行したときには、使う道具が変わったもののビジネスの性質は同じであったが、IT・電子メディアの制作は「デジタルファイルで納品」という提供形態が変わるだけではなく、ビジネスの性質が全く異なる。よく言われるようにIT/電子メディアの仕事は「ソリューション」として考えるべきなのである。
従来の仕事のXML化というのは、「納品したらおしまい」という仕事から、継続的な仕事、時には日常的にともに歩む仕事をする戦略で取り組む必要がある。もっとも顧客が予算上でそのつもりになっていないと、自己負担での付き合いになる場合もあるが、一種の投資であると考えるしかない。
この投資が活きるのは、顧客の業務とシームレスにリアルタイムに情報加工・制作の業務をするように密接な関係が築ける時である。しかしそれは単に制作・処理能力があればよいのではなく、「刷ったらオワリ」の自分達の過去の経験による判断から脱却して、まずIT関連業界の技術やビジネスのルールなどに関するリテラシーの獲得から始めなければ、「仕事はあるだろうが、やる気はしない」から変わることができないだろう。
テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 195号より
2002/12/19 00:00:00