本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

日本のユーザにもプリプレスの効率化ツールを享受してほしい(後半)

クロスメディアパブリッシングの担い手はだれか

小笠原 貴社が現在,あるいはこれから力を入れている製品はどのようなものなのでしょうか

Mr.Scott 最近力を入れているのが,Webでのインタラクションのツールに対する,データベース機能の追加です。これによりユーザはよりインタラクティブに使用できるようになります。
また,メタデータが格納できるということで,さまざまな新しいワークフローに対応できます。
またユーザの顧客の画像やさまざまなデータを管理する機能が増えています。
企業が大きくなって,事務所があちこちに分散するようになると,例えばマーケティングをする際のメッセージをきちんと統一管理することも必要になります。そのために,必要とされるようなツールも提供しています。

小笠原 それはコンテンツを管理するようなイメージと捉えてよいのですか。

Mr.Scott そうです。コンテンツマネジメントのツールです。

小笠原 貴社の製品はWebベースツールとして,欧米の大手印刷会社で大きなシェアをもっているとのことですが,日本の印刷会社でもWebを印刷会社としてどう扱うかが注目されています。アメリカの印刷会社ではWebに対してどのようなスタンスにあるのでしょうか。

Mr.Scott Webページの制作という意味であれば,アメリカでは印刷会社はデザインのほうを直接担当するようなことはあまりありません。従って,Webやインターネットで絡む要素としては,仕事の受注やデータのやり取りや共有など仕事の進行管理をWeb上で行えるようにするという使い方です。
大手の企業ですと,社内でマーケティング用のツールなどすべて制作して,同じものを印刷にもWeb用にも使用することは行われています。

小笠原 そうすると,貴社のようなツールがあっても,印刷会社がクロスメディアパブリッシングのような分野に進出するのはなかなか難しいわけですね。むしろ,コンテンツマネジメントは顧客側に置かれて,そこから印刷に行くものだけが印刷会社のシステムにつながるということでしょうか。

Mr.Scott これまではご質問のとおりのような状況でした。従来はプリプレス専業という会社がかなりあったのですが,印刷会社がプリプレスの分野にも進出するようになっています。そうするとプリプレス1本だけでは,やっていくことは難しいので,デザインやWeb制作やクロスメディアの分野に進出するようになりました。
一方で,広告代理店も外注していた機能をインハウスでもつようになっていますので,競争が激しくなっています。実際に広告代理店の中には,印刷,製本に至るまで1社で内製するところも出てきました。

小笠原 そうしますと,冒頭に出たようにメディアの境界がぼやけるように,業界間もぼやけるわけで,貴社の製品のようなツールを有効に使うためには,発注者,広告代理店,プリプレスの会社,印刷会社は,活用の仕方を考えていかないといけないということになりませんか。

Mr.Scott そのとおりですね。プリプレス用のツールを提供しているわけですが,基本になるツールは色の変換やそのほかのデータの変換に関するものであり,それらは実はWebパブリッシングやブランディングを考えた時に非常に有効に使えるものです。 例えばタバコ会社のマルボロやRJ・レイノルズでは,広告キャンペーン時に,さまざまなメディアのものを同時に行うことがあります。印刷,Web,看板などの販促ツールなどを同時に制作するためには,当社のツールは使いやすいものになっています。複数のメディアに同じ広告を見栄え良く,同時に出すことが可能です。

プリプレス効率化ツール開発から次のステップへ

小笠原 今のお話からプリプレスで成し遂げたことが,別の段階で新たに使えるというように取りましたが,プリプレス関連の必要とされるような主だったツールは開発しつくされたと捉えてよいのでしょうか。

Mr.Scott 実際のプリプレスの制作に関しては,かなり成熟したと言えるでしょう。大幅な改善は終わって,これから小さな改善はあるにせよ,アナログからデジタルへ,クローズドシステムからオープンシステムに変わった時のような大規模な変化は残っていないと思います。既にかなり効率化が進んでおり,良い仕事を少人数でできるようになっています。
今後の焦点は別なところに移るでしょう。例えばバックエンドのところをより統合したり,ビジネス側との連携をより改善するというようなことです。

小笠原 バックエンドの統合とはどのようなところでしょうか。

Mr.Scott 一つにはコンテンツマネジメントがあります。そのほかにも製本やパッケージングの機器を電子的に制御するなどもあります。
デジタル印刷が出てくる中で,いわゆる従来型の印刷の世界も大きく変わって,その境界もあいまいになってきます。例えば小規模でデジタル印刷を行っていたところが,自動化が進み,自動化の流れが,より大規模な従来型の印刷にも波及していますので,流通などの部分も考えなければならないでしょう。

小笠原 今回のIGASでJDFを利用した印刷,フィニッシングのデモンストレーションが増えてきたのですが,ベンダー側ではプリプレスを行う側でデータのやり取りを行うパートナーが少ないという悩みがあるようです。貴社では後工程のコントロールということで,今後は印刷工場のなかのJDFに対してもターゲットとして狙っているのでしょうか。

Mr.Scott JDFに関わる開発ならびに活動も行っています。JDFがより使えるようになるには,それを受け入れる機械も必要になるでしょう。JDFはかなり大きな仕様になっており,開発が始まったばかりですので,当初はいろいろと問題は出てくるかもしれませんが,いずれ標準もまとまっていき,うまく動くようになるでしょう。

小笠原 最後に日本の市場をどのように捉えていますか。ユーザ,これからユーザになる方に対してメッセージをお願いします。

Mr.Scott 日本の市場はデジタル技術の導入に関しては,多少遅れていると捉えていますが,その理由の一つとしてはソフトウエアを提供するメーカーが,日本語で十分に動作することをなかなか保証できなかったことがあります。
それから日本の顧客が必要としているアプリケーションへの対応が十分でなかったことがあります。
当社の場合はVPJさんとパートナーを組むことができて,日本で何が必要とされているかを知ることができました。それに合わせた形でのツールの対応ができたと考えています。世界が享受している効率化をぜひ日本のユーザのみなさんにも享受していただきたいと思います。
また,印刷業界は引き続き変わっていく途中にあります。当社は今後も,その変化に対してスムーズに,早く起こるようにツールを提供していきたいと考えています。

小笠原 本日のお話は,日本で残されている制作の効率を上げるということに対しての,目標,ロードマップが見えてくるものでした。ありがとうございました。

(2003/09/25 東京国際展示場 文責編集部)

前半へ
『プリンターズサークル1月号』より 

2003/12/04 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会