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電子書籍サイトのプロデューサが明日のビジネスを占う

電子ペーパーの登場,携帯小説の人気などで電子書籍ビジネスの輪郭が少しずつ現れてきた。「電子書籍ビジネスを軌道に乗せるには,ハードメーカー,通信業者,出版社まで,各ポジションのプレーヤが120%の力を出し切らないとうまく行かない」と,M-stage book 店長の安藤哲也氏は言う。
PAGE2004クロスメディアトラック「見えてきた電子書籍ビジネス」では,ユーザに一番近い,販売流通サイトを運営するプロデューサの方々にお集まりいただき,電子書籍ビジネスの明日について熱い討論を行った。

モデレータ:NTTドコモ MM事業本部 クロスメディアビジネス部 安藤哲也 氏
スピーカー:凸版印刷 情報・出版事業本部 Eビジネス部 佐藤圭樹 氏
       パブリッシングリンク サービス開発部 プロデューサー 福本博之 氏
       楽天 取締役 杉原章郎 氏
       シャープ 国内営業本部 SST推進センター所長 谷口実 氏

以下はその要約である。

松下 vs SONY専用端末の行方

松下のΣ Bookは,39,800円(税込)で書店店頭と直販で販売される。電子辞書は書店で販売されているが,実際,書店に4万円を持って行くかどうかは難しいところである。本来は家電量販店で売るのがいいような気がする。コンテンツを提供する立場として,ハードデバイスの流通は当然気になる。どのくらい売って,どういう販路で,どういうプロモーションを行っていくのかということは押さえなくてはならない。端末に即したコンテンツを考えた結果,トッパンからΣ Bookへの最初のラインナップは,書籍,ビジネス系のコンテンツを予定している。(凸版印刷・佐藤氏)

Σ Bookは成田空港で実証実験を行ったが,サービスを利用したビジネスマンは,マンガはすぐ読みきってしまうので,ビジネス系読み物を多くダウンロードしたと聞いている。(NTTドコモ・安藤氏)

ソニー端末の表示形式は画像ではないので,文字の拡大などには適していると思う。見開きか片面かという議論に対しては,ハンディであることや軽さが重要であると思う。版型を比べると,見開きのΣ Bookの方が大きい。
本というコンセプトは必ずしも形態である必要はなく,理念でいいと思っている。より読みやすい方法はなんだろうかということを考えたと思う。ソニーの端末はまずはソニーの販売チャネルで行っていくだろう。なので量販店などの電子機器コーナーで売られることになると思う。(パブリッシングリンク・福本氏)

電子書籍は文化だと思うので,〔オーサリング〜ソフト〜コンテンツ〕という仕組みが整備されれば,専用端末のあり方が出てくると思う。シャープとしては専用端末はいつでも作れるが,今は機が熟すのを伺っているという状況である。(シャープ・谷口氏)

フォーマットの乱立

売る立場としてはコンテンツの数がないとお客様はそのサイトに来ないので,どんなフォーマットでもいい。市場としてXMDFが伸びているのであればそれを推進して,デファクトスタンダードにしてしまってもいいと思う。ユーザはあまりフォーマットにはこだわってなく,自分が使っているもので楽しめればいいということだと思う。(楽天・杉原氏)

Bitwayでは,同一タイトルでもXMDFとドットブックという別フォーマットを販売している。最近の傾向では6:4でXMDFの方が多いが,ユーザはそれほどフォーマットはこだわっていないようで,読みたいコンテンツがあれば利用するという状況である。
コンテンツ制作をする印刷会社の立場としてはフォーマットは統一して欲しい。 (凸版印刷・佐藤氏)

翻訳ものの電子化を進めて欲しい。いま紙の本でベストセラーになるものは,翻訳ものが主流。 パブリッシングリンクが採用する「BBeB規格」フォーマットはこれまで障害となっていた著作権の セキュリティ問題をクリアできると思う。紙の本の契約時に電子化権を組み込むモデルを ぜひパブリッシングリンクに作っていただき,翻訳コンテンツの拡充を推進してもらいたい。(NTT ドコモ・安藤氏)

電子書籍の海外マーケットは成り立つか?

環境問題の点から,中国は電子書籍にとても興味を持っており,アジアマーケットは成り立つと思う。それは文芸書というものより教科書のようなものかもしれない。
出版社が海外へコンテンツを出すということになれば日本主流で新しいワールドワイドな文化が創れるだろうと思う。(シャープ・谷口氏)

アジアは視野に入れている。ネット通販に不可欠な運送インフラとネットワークインフラが整っていないと手掛けられないことから考えると,実はネットワークインフラさえ整っていれば行けるデジタルデータのダウンロード販売が一番スムーズに行くのかもしれない。(楽天・杉原氏)

たとえば,韓国ドラマである『冬のソナタ』が日本で売れるなど,文化の温度差がなくなってきたと感じる。電子書籍ビジネスでもコンテンツの機敏な流通を仕掛けたいと思っている。(NTTドコモ・安藤氏)

携帯小説は定着するのか?

イチかゼロかではなく,それに相応しい形態があると思う。全部になるかどうかはまだ分からないが,そこに相応しい書き手は必ずいる。それに見合ったコンテンツを企画・編集していくことが大事。(パブリッシングリンク・福本氏)

シャープでは,2003年6月にボーダーフォン,11月にau,2004年春にNTTドコモが決まり,3キャリアで携帯コンテンツを展開していく。3キャリアが出揃ったときが携帯電子書籍のスタートである。1つのメガヒットが文化を育てると思う。(シャープ・谷口氏)

Handy Bitwayで携帯向けコンテンツとして今,マンガを扱っている。携帯端末自体が新しいので普及台数が少ないが,結構面白く,売れ行きもいい。テキストコンテンツはまだ扱っていないが今後は予定している。(凸版印刷・佐藤氏)

PDAは今後どうなる?

PDAは,携帯電話とPCの間で中途半端である。PDA業界は,これまで共通項がなく横串が通ってなかった。無線LANのようなインフラがモバイルブロードバンドという点で出揃いつつあるので,PDAというカテゴリーをもっと使いやすく進化させることができる。(シャープ・谷口氏)

ブロードバンドにおける今後のビジョン

ブロードバンドでデータ量が重いリッチコンテンツが流せるようになったことで,商品企画の幅がかなり広がった。出版社側もそれを認識し始めている。(凸版印刷・佐藤氏)

放送と出版が融合して欲しい。出版社4,500社のうちの,中小出版社から主力コンテンツを発掘し,ユーザに届けるチャネルがネットワークだと思う。中小出版社が1,000刷るか,500するか悩んでいるところを電子書籍コンテンツで届けるという方向に向かわないと電子書籍市場は本物にならない。(シャープ・谷口氏)

詳細は通信&メディア研究会『VEHICLE』に掲載します。

2004/02/15 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会