PAGEコンファレンス「DTPソフトを組み込んだソリュ-ション」セッションでは,Webの重要性が高くなることで変わりつつあるカタログ制作において,コンテンツ管理と自動レイアウトの意味がどう変わっていくのか,そしてDTPソフトの機能を利用していかにWeb展開が可能かをテーマに取り上げた。
■DTPソフトを組み込んだソリュ-ションとは?
JAGAT 研究調査部 副参事 千葉弘幸
印刷会社の視点で見ると,データベースパブリッシング・自動レイアウトは効率的だが,発注者の立場で見ると,印刷とWebを一元化したいという要求が高まりつつある。また,情報誌など事実上の電子出版化が進んでおり,XMLデータを活用することも期待されている。したがって,今後印刷会社に要求されるのは,コンテンツ管理システムを中心とした制作手法ではないだろうか。また,従来のDTPソフトは,レイアウト機能よりもデータベース連動などの機能が重視されるようになるのではないだろうか。
■顧客視点の商品データーベース構築と総合カタログのパブリッシング
デジタル・アド・サービス 常務取締役 松田孝氏
デジタル・アド・サービスは制作会社で,印刷は外注しているが,大型の総合カタログを作っている。どうすれば単価を落とさずに仕事を取っていけるかという根本的な悩みがあり,データベースパブリッシングもいろいろな形で取り組んできた。
Catalog Composer
InDesignのplug-inツールで,海外のメーカーと協力しながらテスト・使用している。InDesign上で,データベースに登録されているパーツ一覧からレイアウト紙面へ,ドラッグ&ドロップするとスタイルが適用されてレイアウトをおこなうことが出来る。画像や,表組みにも対応している。レイアウトした後の修正は,オブジェクトを修正することも出来るし,データベース側を修正して反映させることも出来る。
レイアウトの自動化
レイアウトの自動化のために,Tagテキストを生成する方法や様々なツールを使用してきた。自動化はデザイン面の制約が大きいこと,かえって時間・コストがかかる場合もある。定型的なデザインにして自動化すると,制作単価を下げられてしまう。
商品情報データベース
顧客の上層部の要求は,きれいなカタログを作るより,商品が売れることがカタログの使命ということである。したがって,営業施策を変更したときに,カタログも迅速に対応できることが必要となる。また,商品が羅列されているだけでは,Webの方が効果的である。このような要求に対応するには,商品情報データベースが必要となる。商品情報データベースとして,凸版のGamediosから派生したeBASEが非常に有用である。たとえば,商品データベースとカタログ用の原稿パーツは1:1になっていないが,eBASEによる商品データベースとCatalog Composer,InDesignを連動させることで,そのような課題にも対応できる。
顧客の要望は,仮説を立ててトライアル&エラーを低コストで繰り返したいということであるし,それを手伝うことが制作会社の使命であり,生き残るために必要なことである。
■コンテンツ管理システムを活用した印刷カタログとWebカタログの連携
伊藤美藝社製版所 営業企画・推進部 課長 武田晃彦氏
伊藤美藝社では,コンテンツ管理システムを活用した印刷カタログとWebカタログの同時制作,一元管理を目指している。総合カタログを作っている顧客から,そのままWebカタログにできないかという問い合わせが多くなってきている。コンテンツ管理システムは,配信する情報をデータベース化(アセット化)し,HTMLのテンプレートにデータベースの内容をマッピングして,大量のHTMLを自動生成するものであるが,Webカタログのためのデータベースから,印刷物制作に連動させる方法を考えトライしてきた。
ワンソースマルチユースを実現するためのツール
(1)DTPへの流し込みツール:QuarkXPressでは,以前からあるDBPublisherというXTensionツールを使うことが可能である。InDesignでも,近々PortOneというplug-inツールが発売される。
InDesignを使うことにより,表組みでもデータベースとの連動が可能である。コンテンツ管理システム側が表組み用のXMLデータを吐き出し,InDesignがそのXMLを受け取って表組みとして表示すれば,データベースとの連携ができる。
(2)DTPに使用している画像をWeb用に変換する際,DTP上でおこなったマスク操作(トリミング設定)がWeb上で継承できなかったが,InDesignでは,解消する方法もある。
(3)機種依存文字,外字:WindowsとMacの違いで,丸数字や平方メートルなど,そのまま表示できないものがある。モリサワが提供している仕組みを使い解決した。新ゴやリュウミンをWeb上でも表示することができて,それがテキスト扱いになる。PDFの文字のエンベッドのような仕組みである。外字も取り組んでいるところである。
(4)データベースとDTPの双方向への反映:自動組版ソフトで流し込まれたものを,流し込んだ後に,価格やテキストに訂正が入った場合,DTPソフト上で直してしまう。DTPソフト上で直した内容を,データベースに反映することである。
例えば,InDesign,QuarkXPressのテキストボックスの文字を直すと,データベースの内容に反映され,データベースの内容が変わると,自動的にFTPでアップされて公開されているWebページの内容も変わる,ということを実現している。
クライアント側におけるカタログ制作の問題点
総合カタログ,単品カタログ,チラシ等のDTPデータが,ジョブごとに管理されている場合が多い。例えば総合カタログの内容を直しても,それと同じ単品カタログの内容は直されずにそのまま放置されて,ミスが多発してしまうという悩みが多かった。レイアウトをテンプレート化するのも容易ではない。既存のカタログをテンプレート化するために,データベース構築のためのディレクションする人員,時間,費用がかかる。クライアントの要求を簡単に言うと,カタログ商品情報をデータベース化し,印刷カタログとWebカタログを併用(ワンソースマルチユース)すると,コスト削減が可能にならないかということである。
今後は,カタログ制作も2極化していくだろう。デザイン重視のイメージ的なカタログと,機能性重視のテンプレート型カタログである。また,Webカタログも進化が予想される。「BtoBの商品カタログをWeb化」「受発注管理,顧客管理,売上管理とコンテンツ管理システムとの連動」「社内向け・関連企業向けの商品管理ページ」。こいうったものにも対応していきたい。
■レイアウトソフトを活用したXMLパブリッシング
イースト サーバー管理センター 石橋和之氏
DTPソフトからXMLを生成し,ニュースサイト用のデータとしている例について報告する。イーストでは,参考書(eラーニング)や辞書など,様々なXMLのソリューションを手掛けてきた。
InDesign上でのXML生成
「.NET Busines Forum」というWebサイト上に,書籍用に作成されたDTPデータを転用して掲載することになった。そのために,DTPデータをInDesign経由でXML化(JepaX)し,Webへ展開するためのデータとして供給した。
InDesignを使用したのは,QuarkXPress,PageMaker,Wordのファイルを読み込むことが出来ることと,XML書出し機能があるためである。
実際におこなった手順
・DTPデータをInDesign 上に読み込み,機種依存文字,画像のリンク,フォントの種類を修正した。
・タグ付けする
(1)スタイルをタグにマップ(ただし文字スタイルにマップすることは出来ない,意図した構造にはならないという制約がある)
(2)構造ウィンドウで,フレームに相当する部分を指定
(3)テーブルのタグ付け→表に変換する。
(4)画像のタグ付け:構造ウィンドウで画像フレームを指定。タグ付けをおこなうとパスがリンクされる。
(5)XML書出し,DOCTYPE宣言を付加。画像を書出し。
InDesign CSについて
発売されたばかりでテストしていないが,新たにDTDがサポートされたこと,文字スタイルへのタグマッピングが可能となったことで,DTPからXMLの環境が整ったと期待している。
iPublisherとしてのサービス
iPublisher とは,イーストがおこなっているXMLドキュメントを使ったインターネット出版を支援するサービスである。イーストは,XMLコンテンツの制作管理、スキーマ策定からXMLデータのDTPへの流し込みまで,トータルに支援することができる。
カタログや出版物の位置付けそのものが,Webの影響を大きく受けて変貌しつつある。その変貌をいかに積極的に支援できるかが,制作・印刷会社に求められていると,強く感じるセッションとなった。また,そのためには,自ら技術・知識を習得すること,および先進的なツールを開拓しいち早く導入するなどのパートナーシップによる武装化が,制作・印刷会社に問われていると言えるだろう。
2004/03/01 00:00:00