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drupa2004デュッセルドルフ報告(5)

ドルッパは5月19日に終了した。JDFをベースにしたデジタルワークフローに注目が集まってもいたが、ペーパーメディアを生産するためには、さらに高度化しなければならず、それには機械と材料の共同開発が求められてきた。また従来型の印刷とデジタル印刷の融合が、ワークフロー製品の登場から現実味を帯びてきた。

○新しいCTP技術
今までに無い発想のCTPシステムと言えるのが三菱重工業のPRS-X1(RPS:Reusable Plate System、機側製版装置)だろう。参考出品ではあるが、従来使い捨てされていたオフセット印刷用アルミニウム版の繰り返し使用(約20回)を可能にするというコンセプトで開発された。現在使用されている刷版と同じアルミニウム板の上に、特殊なポリマーを塗布して被膜層を作り、この被膜層にレーザー装置で画像を書き込み、印刷後は剥離液で画像を洗い流し、改めて被膜層を作るというもの。書き込み装置は、既に一般に普及しているサーマルタイプのCTP装置と同じ物を使っているので、印刷品質はCTP版と同等であり、又耐久性(約10万通し)もCTP版と同等で、被膜層形成技術は特許を出願中である。


図:PRS-X1(RPS:Reusable Plate System、機側製版装置)



PRSに組み合わされるのが、バリアブルオフ輪のDIAMOND 16MAX-V(国内向け:LITHOPIA MAX BT2に相当) という交換スリーブ(版胴およびブラン胴)の厚みの違いでカットオフ長を546〜625mmの間で変更できるというユニーク機構オフ輪である。デモでは546mmから625mmへの切替を版換えと同時に行っていた(下の写真)。


図:バリアブルオフ輪DIAMOND 16MAX-V
(デモ機は1+1色、持っているのはブラン胴のスリーブ、4本の異径スリーブへの交換はわずか2分ほどであっけなく完了)



クレオは新製品の高速・超大判CTPマグナスVLF、とともに、海外ではサーマルCTPプレートをポジ、ネガの販売をスターとさせており、さらに無処理プレートやフレキソCTP用プレートも参考出品した。


図:クレオのマグナスVLF



図:クレオのオフセット用CTP(左からポジタイプ、参考出品の無処理、ネガタイプ)



ハイデルはCTPとDI機の両方に兼用できるサーマルヘッドを開発してきた。非常のコンパクトにできており、しかもユーザー自身でも交換できる容易なメンテナンス性も持っている。CTPセッタにはこのヘッドを3〜6個、DI機としてはSM74DIの後継機のユニットが参考展示されていたが、ここには2個搭載していた。
富士フイルムでは100万枚の耐刷力を実現したバイオレット用フォトポリマープレートや、参考出品であるがフォトポリマー重合という方式で通常のサーマルCTPに近い100〜150ミリジュールの感度を持つ耐刷5万枚の機上現像タイプ無処理プレートが展示された。2000年ドルッパで発表された無処理CTPはアブレーション型であり、既にLDNSとしてDI印刷機用として販売されている。


図:ハイデル SM74DIの後継機(ユニット、版胴の手前が薄くコンパクトになったID部))


図:DI機やCTPに使われるサーマルへッド(大きさは10X10X20cm程度)でユーザー自身でも交換できる


図:サーマルCTP スープラセッタ


リョービのA3判DI機、3404X-DIはプレステックの新しい16ミクロンスポットのサーマル露光ヘッドを搭載して2540dpiとなり、FMスクリーニングによる高品位な印刷も可能になった。イメージングは約4.5分、オプションでUV乾燥装置が付く。


図:DI機搭載用露光ヘッド Presstek ProFire Excel Imaging System 手前に6個の露光ビーム射出口が見える


コニカミノルタからはIGASで発表のあったPETベースのプロセスレスのサーマルプレートTF-200(国内はシンプレート)と専用CTPのSR-830が展示され、プレートは大日本スクリーンのトゥループレス344で使用されていた。
コダック・ポリクローム・グラフィクスのサーマルダイレクト・ノー プロセスプレートは現像や水洗が一切不要のサーマルCTPプレートで、版上の残膜は印刷機の湿し水やインキで除去するいわいる機上現像タイプ200線で1〜98%の解像度を持ちFMスクリーニングにも適する。

アグフアのAzura (アズーラ)は露光後,ガミング処理を施すだけでケミカル処理不要、10万部の耐刷力を兼ね備えたサーマルプレート。非アブレーションであり2〜98%の範囲で網点再現が可能で画線部が見易く検版しやすくなっている。


○CTP/オフセット印刷とデジタル印刷の融合
EFIはJDF対応を前面に出しながらOneFlowというプリプレス・ワークフローなどを大きく打ち出してきた。これは面付けやトラッピング処理を行い、カラープルーフからCTPまでも取り込むもので、製版システムベンダーにもなろうという方向である。同社はサイテックスの創業者であったエフィ・アラジー氏が作った会社であり、当初はCMSソフトなどを手がけていたが、次には複写機を中心としたプリンタ用ハイエンドRIPの専業メーカーとしての地位を築いてきた。

クレオは逆にハイブリッドワークフローのプリナジーをゼロックスのドキュカラーやiGen3に対応させて、オフセット印刷とデジタル印刷を区別せずにプリプレス工程・生産管理工程を組むことができる提案をしている。


○デジタル印刷
キヤノンがグラフィックアーツ分野に力を入れてきており、ドルッパ期間中にはコダックの傘下になったネックスプレスとデジタル印刷市場における広範な業務提携を発表し、技術開発においてはアドビ、EFIの協力を得てオフィスプリント市場と商業印刷市場とのデジタル印刷ジョブの相互乗り入れが可能なデータ交換を実現するとしている。また「プリンタ X」、「プリンタ Y」とコードネームだけを付けた中型、小型のカラー複写機を一部来場者に別室で見せており、オフセット印刷物と出力サンプルを並べて出力品質の高さを誇示していた。

サイテックスデジタル(SDP)からコダックが買い戻して形になったコダックヴァーサマークの新製品であるVX5000eプリンティングシステムは、9インチ幅の高速インクジェットプリンタで、三菱製紙と共同開発した専用紙を使用することで高画質なフルカラー出力が最大分速100mでできるようになった。同社の製品は高速データプリント分野のシステムであり姉妹機はNTTやドコモの料金明細書をプレプリント無しで出力している。

○変り種
スクリーン印刷機とオフセット印刷機(水無し版)合体機(輪転方式)がKAMMANNのK61-OSで、ダイカッタも組み込まれている。 紙厚は0.025〜0.5mm、紙幅最大345mm、印刷長7〜14インチ、速度は最大リピート長のときに35m/分、または100回/分である。オフセット印刷部では版シリンダーを外してCTPプレートを巻きつけ、この状態で露光する専用CTPセッタ(K26O HS)が用意されている。


図:KAMMANN K61-OS(左から給紙部、スクリーン印刷部、オフセット印刷部、加工部)



○機械メーカーと材料メーカーの共同開発
これからは、機械メーカーと材料メーカーの共同開発がますます重要になってくるようだ。印刷機の各メーカーが高速化を競っているが、これに対応するインキや水性ニスなどの開発には材料メーカーがしのぎを削っている。インキメーカーにも印刷機やプリンタのメーカーからの共同開発の依頼が多くなっていると言う。開発に終わりは無い。

○次回のドルッパ
2008年5月29日〜6月11日
drupa2004情報へ
報告セミナー(6/24 13:00-17:00)
終わり(2004.5.20:JAGAT 相馬謙一)

2004/05/21 00:00:00


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