ある機械メーカーでは,以前は製品のメンテナンスマニュアルを印刷物として製作し,発行していた。しかし,輸出先の各国の言語に対応して何種類もの印刷物を製作しなければならない。そのための校正や,印刷物の保管や発送のコストも大きいといった問題があった。また,次々と更新されるパーツやメンテナンスの内容が,実際の印刷物に反映されるのは,6ヶ月,1年先であり,メンテナンスサービスの質にも影響していた。
そのため,このメーカーではWeb上で世界中から閲覧できる電子マニュアルの構築を決断した。
実際に構築のためのシステム設計と,データ制作を担当したのは,あるドキュメント制作会社であった。
この会社では,数年前よりXMLを活用したドキュメント制作を手がけていた。XMLでデータ管理をおこない,Web用のデータ,印刷用のデータへと展開することで,コストの削減と最新ドキュメントへの更新が可能になる。また,構造化され各種の属性情報が付加されているXMLデータにより,文章単位に編集・登録がおこなえる。さらに,制作の過程で翻訳文もその構造内に追加している。すなわち,同じ文書構造の中に各国語の内容も記述されている。
こうして,Web上で世界各国から参照可能で,各国の言語にも対応した電子マニュアルシステムが完成した。
従来の印刷物のマニュアルとの違いは,さまざまな検索が瞬時におこなえること,常に最新のパーツ・技術情報が反映されるようになったことがある。また,紙面の制約が無くメンテナンスの手順を詳しく図解するなどの工夫もなされている。さらには,メンテナンスの内容と必要なパーツリスト・発注手続きとが連動するシステムとなっている。
XMLによるドキュメント技術は,印刷物を作る手段だけではなく,顧客の要望を実現するためのソリューションでなければならない。また,高いシステム技術を持っていても,コンテンツ制作にかかわっていないSIベンダーではコンテンツの品質保持や,コンテンツを見せるための工夫を施すことは困難である。
このような観点で言えば,XMLドキュメントソリューションを構築するには,元々顧客との接点が多く,またコンテンツ制作を得意とする制作・印刷会社がふさわしいと言えるだろう。
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2005/08/06 00:00:00