インクジェットプリンタインクの変遷と技術動向 研究会報告
セイコーエプソン株式会社 IJX開発部 主事 佐野 強 氏
■インクジェットプリンタ高画質化の変遷
インクドロップ量の変遷を見ると,ノズル径は1994年に約90plであったが2004年には1.5plとなり,目に見えないほどの大きさになって,収束に向かっている。
MACH Jet方式ピエゾヘッドの構造は,縦に振動するピエゾでインクにダイレクトに力を加えるタイプと,たわみ振動するピエゾ素子でインクに力を加える(量産に適している)タイプがある。
ドットサイズ変調技術MSDT(Multi-Sized Dot Technology)は,小,中,大ドットを周期をずらしてプロットするものである。
ピエゾ方式とサーマル方式を比較すると,サーマルはシンプルな構造であるが,インクの自由度はピエゾの方が高い。
■インク技術の進歩
インクジェットプリンタへの要求は,色再現,グレーバランス,墨濃度(インクの機能に依存),光源依存性(メタメリズム),メディア対応性,光沢性,画像の保存性などがある。
インク多色化の流れにのって,1997年にEPSON PM-700C(6色)はLC(ライトシアン),LM(ライトマゼンタ)の追加でハイライト粒状性を大幅改善した。2000年にシャドゥ部改善のためのDY(ダークイエロー)を追加した。
2000年以降は,「綺麗な画像を得る」から「綺麗に画像を残す」へと移行し,「綺麗で長持ち」がキーワードになった。長持ちとは水や光,ガス等の外環境に強くすることである。
PX-Gテクノロジーは,カプセル化技術で顔料インクの表面平滑性を向上し,Gloss Optimizerインクの採用と最適利用技術で光沢差を解消するものである。
顔料タイプのインクは,オゾンや光で分解しても中央が残るため十分発色する。一方,染料タイプは分子が小さいため影響を受けやすい。
メディアとインク双方からのアプローチで耐光性を向上させたが,光以外の要因はオゾンである。また,季節と退色の関係は,7〜8月に大きく退色するという結果がでている。
インクは,染料,顔料ともに「綺麗で長持ち」を目指し,安定的に吐出できるヘッド駆動技術,高いヘッド技術によって発展する。
■ラージフォーマットプリンタ(LFP)とK3インクテクノロジー
印刷工程で色校正に使用されるプリンタには,ラージフォーマットプリンタやデジタルプルーフなどがある。
ラージフォーマットプリンタは,当社で調査したシェアを見ると,文教・公共関係(学校など)が22%でトップであり,印刷関係は16%である。印刷関係のシェアをより伸ばしていきたい。
K3インク構成は,8列ヘッド・8色独立インクから成り,メディアに応じ2種類のBkインクを交換する。
K3インクの出力特徴は,グレーバランス向上,ハイライトからシャドウまで滑らかな階調性,最高濃度の向上などがあり,新顔料インクによる効果として耐擦性の向上がある。
K3インク及び新顔料インクによる相乗効果で,メタメリズムの大幅な低減と光沢感の向上を実現した。
2005/08/11 00:00:00