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ブログをビジネスツールとして活用(後半)

株式会社カレン 広報室長日本広告主協会 Web広告研究会広報委員長 四家正紀

ユーザとの新たなコミュニケーション手段に

2004年9月末,新車発売とほぼ同時にスタートして以来,最も代表的なブログマーケティング事例として数多くのメディアに取り上げられた「TIIDA BLOG」を始めとして,積極的にブログマーケティングに取り組んでいる日産自動車の事例を紹介したい。ちなみに当社はこの「TIIDA BLOG」と「SAFARI BLOG」の企画運営などを担当している。
もともと自動車という商品には数多くのセールスポイントがある。特にこのTIIDA(ティーダ)は,コンパクトカーに高級感をもたせた車であり「シートの縫い目」といった,テレビCMや試乗だけではなかなか気がつかないところに「高級感」を表現するためのさまざまな細かい工夫が凝らされている。こうした小さな,しかし魅力的なセールスポイントを従来のWebサイトのように何もかも並列に扱うカタログ的・網羅的な表現の中に入れようとすると,実に膨大な情報量になり,一つひとつにアクセスを集めることは難しい。これを一人の日産社員の「個」の視点から話題をセレクトし,親近感ある独自の語り口調で説明することにより,すべてを伝えなくてもこのTIIDAという商品のもつコンセプトとその魅力が読み手に伝わる。
さらに頻繁な更新とRSS・Pingなどの機能によりリピートアクセスを促進し,車のもつ魅力について十分認識いただいた上でWebからの資料請求やEメール問い合わせなどに誘導していく。こうした「個の語り口による消費者への働き掛け」のことを当社では「ブログのメッセージング機能」と呼んでいる。面白いことに,こうしたメッセージに対して消費者のブログからトラックバックが付くことにより,メッセージのコンテキストが強化されてしまうことがある。「SAFARI BLOG」で「ロングボードの中積みが可能」という記事を載せたところ,一般の方のブログからトラックバックが送られてきた。リンクをたどると「ロングボードが載るそうです。いいなあ」という記事が載せられている。
「SAFARI BLOG」を読みに来た消費者は,このトラックバックをたどることで,自分と同じ一人の消費者が発した「いいなあ」という書き込みから同じ気分をシェアすることになる。消費者間の気分の共有など,ほかのメディアではなかなか起こり得ないことである。 こうしたコミュニティ的な読者参加をコンテンツのメインに据えている企画が,味の素の「マヤヤのお料理ABC」である。マヤヤというキャラクターが料理をテーマに,レシピや一般のお料理ブログなどをおしゃべり感覚で書き込むことにより,コメントやトラックバックによる消費者参加を促進し,企業と消費者の新しいコミュニケーションを実現している。最近では「オリコンブログ」のように消費者にブログサービスを提供する「ブログホスティング」でコミュニティ参加を促すケースも出てきている。

ビジネスブログで効果を上げるためには

最後にビジネスブログに取り組む上での主な注意点を挙げる。
(1)目的を明確にする
ブログはある意味「雑談」のメディアだが,目的のない「雑談」は企業活動の目指すところではない。一流の営業マンが「雑談」テクニックを使いこなしながら「商談」を円滑に進め,親近感を獲得しながら商品特性・優位点を商談相手の頭に刷り込んで受注へと結び付けていくのと同じで,ブログマーケティングにおけるコミュニケーションは目的のために高度に設計された「雑談」でなければならない。設計のためにはまずは目的を明確化すべきだ。

(2)頻繁な更新,参加者の確保
頻繁な更新こそブログの命であり,途中で話題が尽きて更新できなくなったり,つまらない話題でごまかすようでは逆効果となる。事前に話題をピックアップして,できればその話題を出すタイミングまでも設計してしまうことが有効である。これをシナリオという。消費者の書き込みが主役となるブログホスティングにおいては,企業側がシナリオを引くことは難しいが,企画の目的に合った話題で盛り上がるような工夫を常に心掛けるようにしなければならない。まずは一定数の参加者(書き手)がいないと,思うようにアクセスは伸びない。

(3)コメントやトラックバックへの対応
ビジネスブログ実施時に企業として最も心配されるのはコメント・トラックバックによる愉快犯的な書き込み,いわゆる「荒らし」だが,既に書いたとおりトラックバックのみにコミュニティ機能を絞った場合は「荒らし」の被害に遭うケースは少ない。コメントにおいては本人認証なしの言い捨てのような書き込みができるため,注意が必要だが,明らかに品位を欠いた書き込みはほかの消費者から見ても無視すべきものとして捉えられることも多い。どうしてもその必要があれば管理画面から削除することも可能だし,また専門の会社に監視を頼むこともできる。しかしむしろ注意すべきなのは,商品やサービスに対する筋道の通った批判・クレームであり,これについては事前に対応を協議しておく必要がある。

さらにご興味のある方は拙著『ビジネス ブログ ブック』(小川浩・上田一吉共著,毎日コミュニケーションズ刊)などをご参照いただければと思う。
企業にとってブログとは,「自らを売り込みたい」「相手と本気でコミュニケートしたい」という情熱をダイレクトに伝えられるメディアであり,マスプロダクト・マスマーケティングの中で欠落していった「親密なコミュニケーション」を復権させる。この「親密なコミュニケーションの復権」が今後の企業と個人の関係にいかなる成果をもたらすのか,今後もその進化から目が離せない。

四家氏のプロフィール
1967年生まれ。1996年インプレスに入社。インターネット広告事業の立ち上げに従事しながら,『インターネット白書』などの執筆・講演活動を行う。2002年にカレンへ移り,広報を担当。同社の「プレセールス・コミュニケーション事業」のプロモーションの中で,マーケティングツールとしてのブログの可能性にいち早く着目し,2004年3月Movable Typeを全面採用した自社サイトリニューアルを敢行すると同時に「広報室ブログ」も開設。
カレン広報室 ベスト・メッセージングBlog

前半 | 後半

『プリンターズサークル』10月号より

2005/10/24 00:00:00


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