本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

カラーマネージメントの戦略化を狙う人のために

1999年末に開催された「CTP導入を考える」セミナーでは、CTPユーザー13社の導入経験をお話頂いた。そこでのCTPの捕らえ方は、品質重視型とコストダウン徹底型に2極化していた。しかしいずれの会社も勢いがあったが、次の心配はCTP普及後に、またまた納期/価格競争が激化するであろうこと、その時の差別化要素は・・・である。

CMSとITはセットにできる
差別化のキーポイントは、「CMS(カラーマネージメント・システム)+IT(情報技術)を融合して時空を超える」ことではないか。つまりグラフィックアーツの品質保証をCMSによる数値管理で行なえること。さらに、ECやe-ビジネス対応の受注/外注/制作進行ができるような、印刷会社としてのIT戦略の有無/優劣が企業の勝敗を分けることになるだろう。

印刷機(本機)は製造設備/平台校正機は工芸機器と割り切る
生産(マスプロダクション)のために試作品/品質限度見本の作成が、経験と勘を頼りに作られるという誠におかしなことが、まかり通っているのが印刷の世界ではないだろうか? 平台校正機は品質安定性の悪さなどプルーフの役割り果たせないという限界も見えてきた。平台校正機は、
1)顧客に対する印刷物の「品質保証書」にならない!
2)プリプレス工程に対する「訂正指示書」にならない!
3)印刷工程に対する「印刷原稿(品質指示書)」にならない!
本来、1)〜3)のカラープルーフは、同一の仕上り仕様と品質であるべきだが,平台校正機の原理的な不安定さからプルーフ(証明・証拠・保証という意味がある)になっていないのである。

色が不安定ではデータベース出版もリモート印刷も実現不可能!
「IT(情報技術)を活用して時空を超よう」などと言っても、色について次のような事で困っていたのでは、データベース出版/リモート印刷/OneソースMultiユースなどは文字モノクロの話であって、カラーの世界では全て絵空事になってしまう。
1)フルデジタルDTPの普及によって画像データが容易にハンドリング、流用されるようになった反面、現状生産ラインにおいて、校了時の色を再現できないという問題が表面化してきた。
2)自社工場の複数の印刷機間で色が合わない。そして過去の印刷物再版で、色が合わない。
3)外注先などで校了を取った画像が自社工場で色再現できない。

CMSの導入効果とITとの連携は
ここにCMSを導入してDTP/営業/顧客間で色の見えが統一できることによって、次のことが実現できるようになる。
1)外部との色に関する誤解が削減され、校正回数の減少が期待できる。
2)顧客提案力が強化される。特にリモート校正で色確認までを行うための基盤ができる。
3)カラーのデータベース出版/リモート印刷/OneソースMultiユース/コンテンツ再利用などが現実のものとなる。
4)CMSを達成したリモート校正が提供できて、はじめてネットワークの中で経済活動が行われるEC対応が標榜できる。つまりCMSはITの強力な武器になり、印刷会社らしいEC提案ができる基礎力になる。

デジタルプルーフ出力機
カラー出力装置は高性能化,低廉化,CMS対応など多様化し最も変化の大きい分野であり,クリエイティブからクライアントまで幅広く普及した。そのため社外の分散した環境での色校正のワークフローを作らねばならない。つまり、社内利用からリモート設置までの幅広い範囲で色校正の各出力機とその役割を考える必要がある。

印刷機をプリンタがごとく安定に
CMSによる印刷部門の数管理体制ができ上がると、印刷機がプリンタのように安定にできる基盤の一部達成ができる(オフセット印刷機の構造的な限界もあるが)。
そして勘と経験の色合わせから脱却し,計数管理のカラーマネジメントシステムへの切り替えが実現して、コーポレートワイドな品質基準作りやCMSツールや運用のポイントについて,管理水準の向上という視点で見直しをする。
CMSによって社内の標準印刷物やJapanColorをターゲットとした基本的な計数管理体制ができ上がっていれば、sRGBなどへの対応を要求されてもインキを対応品に変更するなどの微調整で済むだろう。

PAGE2000は「グラフィックアーツのIT戦略」というテーマで、JAGAT主催により2月2日〜4日(3日間)、東京・池袋のサンシャインシティコンベンションセンターで開催されます。
JAGATコーナー(文化会館2Fの総合受付から入ってすぐ右側)では、凸版印刷様のご協力でCMSの技術を展示します。展示内容はチラシのリモート校正を想定して、印刷物と4種類のデジタルプルーフ(インキジェット、静電レーザー)が比較できます。また、Labによる色管理が目で見て分るような9枚のカラーバリエーションパネルと分光光度計での実測が体験できます。
また、同時開催のコンファレンス/セミナーは、これらの要素を取り上げたセッションが盛り込まれています。
「カラーマネージメント」(2/3)では、3名のスピーカー(富士通研究所・臼井様、日本印刷学会・弓木様、大日本印刷・木村様)の皆様からは、マルチメディアから印刷までの広範な「色の見え」についての動向をお話いただきます。案内はテクノロジートラックです。
「色校正の今後」(2/4)では3名のスピーカー(凸版印刷・辻様、水上印刷・荻野様、フクイン・齋藤様)の皆様から、実際面でのCMS実施状況、JAPANCOLORの応用事例、リモートプルーフ実験報告などをお話いただきます。案内はPDF Workflowトラックです。それぞれ分野の専門家や先行企業にスピーカーをお願いしております。
さらに、JAGATではCMS導入を検討されている方々のために,カラーマネージメント・ワークショップも企画中ですので、どうぞご利用下さい。

2000/01/13 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会