コミュニケーションデザイン視点を持った人材育成

掲載日:2015年6月26日
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次期エキスパート認証試験開催2ヶ月前となり、各種対策講座が開講されている。

第44期DTPエキスパート認証試験のベースとなるカリキュラム第11版より採用されている「コミュニケーション概論」について、その設定の背景と試験で問われるポイントについてお伝えする。

 

コミュニケーションとメディアビジネス

「コミュニケーション」とは、送り手から受け手への情報の移動、もしくはその移動の結果生じた心のふれ合い、共通理解、共同関係と定義され(『世界大百科事典』)、情報媒体に関わるビジネス(メディアビジネス)の根幹といえる。メディアビジネスの担い手は、その一形態である印刷物などのメディアを制作するだけではなく、コミュニケーションデザイン、つまり情報伝達のメディアと手法を最適化するべく、コミュニケーションの効果・効用に視点を置いた展開を計画・実践するという観点でビジネスを捉えていく必要性がさらに高まっている。

 

求められる能力の教育体系化

このようなビジネス環境にあり、メディアビジネスに関わる人材が習得すべき知識や技術は、効果的情報移動(伝達)を企画する力と、企画を活かしたメディア・コンテンツ制作においてその仕様を設計し実践する力(具現化・実体化する力)に集約される。

エキスパート認証制度は、印刷業をはじめとするメディア関連業界の教育制度として、知識及び技術の向上と、業務連携における共通認識(言語)の習得を目的としてきたが、ビジネス環境の変化に伴い必要とされる上記の能力を、以下のように教育体系化している。

・効果的情報移動(伝達)を企画する力:主にクロスメディアエキスパート認証制度において、学科3分野(コミュニケーション概論、経営概論、情報技術概論)の知識をベースに、顧客の抱える課題を解決するにあたってメディアをどう活用するかを企画提案書の形で提示することを学ぶ。

・企画に沿ったメディア・コンテンツ制作においてその仕様を設計し実践する力:主にDTPエキスパート認証制度において、企画意図・制作目的を踏まえて制作物の仕様を設計し、制作工程ワークフロー全般を計画することを学ぶ。

 

DTPエキスパートカリキュラム第11版

カリキュラム第11版では、発注者を通した最終消費者(利用者)とのコミュニケーションを前提として、<コミュニケーションデザインの視点にたったメディア・コンテンツ制作>および<多様化するメディアの特性を踏まえた選定>という観点から、「コミュニケーション概論」として一つのカテゴリーとした。

<コミュニケーションデザインの視点にたったメディア・コンテンツ制作> を達成するための項目としては、コミュニケーションの前提を把握する際に必要となる「情報収集と分析」、コミュニケーションの手法を検討する際に必要となる「論理的思考」、コミュニケーションが言語をはじめとした広義の記号を媒介として意味が伝達・交換されること(『百科事典マイペディア』)であることを踏まえて「情報の構造」などの項目を採り入れている。

また、<多様化するメディアの特性を踏まえた選定> を達成するための項目としては、紙メディアのみならずデジタルパブリッシングを見据えた展開を想定し、「メディア特性」「評価」の項目を以前に増して充実させている。

 

「よいコミュニケーションを図り、適切な制作環境を構築し、適した品質の印刷物を製作することにより、目的を果たすべく高いパフォーマンスを発揮する」

という主旨は一貫しているが、最終消費者のコミュニケーション手法が一様ではなくなっている現況において、よりメディアのもつ役割とそのもたらす結果に目を向けたメディア制作への視点を持つことが求められてくる。

(CS部資格制度事務局 丹羽 朋子)

 

(『JAGAT info』2014年5月号より、一部改訂)