【企業インタビュー:あかつき印刷株式会社】組織で取り組む 提案力向上

掲載日:2016年11月30日
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クロスメディアエキスパート認証試験合格者に聞く

あかつき印刷株式会社 村田 麻里氏 第一営業部 部長
豊留 拓史氏 第一営業部1 課 係長

あかつき印刷株式会社は東京都の千駄ヶ谷に拠点を置く、新聞印刷を中心とした企業である。その他、冊子、グッズ、ポスター、チラシなどの商業印刷、電子文書やホームページ
の作成のような幅広い分野までカバーしている。営業部門の社員教育の一環として、以前から積極的にDTPエキスパート、クロスメディアエキスパート(以下、CME)試験に取り
組んでいる。同社第一営業部部長の村田麻里氏と同一課係長の豊留拓史氏に話を聞いた。

現在、どのような業務を担当していますか。

豊留 入社して以来営業を担当しており、今年で7 年目です。お客様は建設関係の労働組合のお客様がメインで、組合員向けの月刊の機関紙(新聞)や組合員拡大のための広告チラシなどを受注しています。

DTP エキスパート資格を取得していますが、どのような経緯で受験したのですか。

豊留 配属されると、営業部内では1 年目からDTP エキスパート資格を取得することが目標の一つにありました。入社1 年目の3 月には試験を受けることになっていたので、配属されてからは個人でも勉強は続けていました。

村田 社内でDTP エキスパート受験者向けの講習会を開催しています。すでに資格を取得し、更新を続けている社員が講師になって、次回の受験予定者に講義をしています。土曜日1 日を使って、試験までに10〜12回ほど開催しています。そのほか、テキストを用意し、各自で勉強しています。

具体的にはどのように勉強しましたか。

豊留 講義は事例やサンプルを使うなど工夫されており、分かりやすいものでした。さらに、前回のおさらいとして毎回小テストがあるので、各自勉強しないといけないような仕組みになっていました。点数が悪いと周囲の目も気になりますから、これでモチベーションを保つことができました。結果的にDTP エキスパートは1 回の受験で合格できました。営業として日常的に制作現場とのやり取りを行うので、専門的な用語も使うし、知識がなければ対応できません。DTP エキスパートの勉強を通じて、実務的な知識の幅も、深さも格段に進歩しました。

村田 営業部門では、新入社員にDTP エキスパートの教育を行い、2 年目に受験します。名刺にDTP エキスパートという文字があることで、確実に得意先の信頼感はプラスになります。

クロスメディアエキスパート(以下、CME)にも取り組むのはどのような必要性からですか。

村田 経営層の危機感が反映されています。クロスメディア関連の引き合いがあっても、提案力が弱いので受注できないということがありました。他社は資格受験を通じて理論武装し、いろいろな提案を仕掛けてくる。何もしなければ、どんどん遅れてしまうだけです。
CME に挑戦することで、勉強し、知識を得て自信が持てるようにしたかったのです。社内ではCME の講師役がいないため、JAGAT の講師の影山史枝先生に依頼しました。印刷業界の最新情報や関連知識、論述試験対策である提案について徹底的に指導を受けました。講習会を通じて、レベルアップすることができ、合格者を増やすことができました。

CME 試験に挑戦し、取得したことはどのように役立っていますか。

豊留 CME の論述試験、提案書の勉強は非常に役に立ちました。実務では提案書を書いたことがなかったため、初めて教わるようなことばかりでした。学科(選択式)試験は、試験分野の幅も広く最新知識が求められますが、身近なメディアに関することを改めて勉強する機会となりました。講習会を通じて、プレゼンテーションの方法も一から勉強できました。それまでは自己流で対応していましたが、クロスメディアの提案内容を考える際には論理の一貫性や裏付けを明確にすることが重要なのだと学びました。また現状分析やそれを受けて課題を設定するような手法を学ぶことができました。例えば「こういう問題があってこれを解決してほしい」と言われたときに、単にそれを解決するだけではなく、「問題の本質はこういうことではありませんか?」「もっとこうした方が良いのではありませんか?」のような話や提案ができるようになったことが成果です。

村田  ウェブやスマホなどのデジタルメディアの仕事は情報システム部門が中心で、今は規模も小さく、相談を受けてそれに応えるような形でしか機能していません。ただし、ウェブサイトのスマホ対応やレスポンシブ対応を実現するなど、やはり仕事は広がっています。お客様もいろいろと情報を仕入れて「こういうこともできるはず」とお話をいただきます。つまり、現状は、お客様からの要望があって初めて対応はします。そうではなく、こちらから紙媒体とデジタルメディアを連動するとこんな効果が見込めますなどの提案でビジネスに結び付けることが、今後の課題です。CME の試験は、まさにそのための勉強であり、役に立つと思っています。

CME 資格を取得して、何か変わったと感じることはありますか。

豊留 以前であれば、何か相談されても「ちょっと調べておきますね」という具合だったのが、その場で「それは私も注目しており、今勉強しています」のように答えられると、それだけでも「何かあったら、あかつきさんに相談すれば何とかなる」と思ってもらえるようになりました。そのため、最新の動きについては、もっと勉強しようと思っています。他社も、紙媒体と電子メディアの連動を提案し始めていますから、遅れを取るわけにはいきません。

会社全体のCME 取得状況や方針をお聞かせください。

村田 外勤の営業は約30 名で、約7 割がDTP エキスパートを取得していますが、新入社員を含め全員取得を目指しています。CME については45%が取得済みで、最終的には7 割程度を目指しています。価格ではなく、デジタルメディアや印刷を活用した、より魅力的な提案で競争を勝ち抜いていきたいと考えています。そのための最低限の知恵や知識を持つのがCME だと思っています。

豊留 すべてのお客様がデジタルメディアと印刷の連動を意識しているわけではありません。とはいえ、営業なら「もしかしたらお客様が気付いてないだけで、実はクロスメディア的なアプローチによって解決できるかもしれない」という視点を持っていなければいけないと考えています。依頼されたことだけを行うのではなく、こちらがお客様の問題点に気付いて提案することが重要だと思います。

村田 例えばお客様の担当者の年齢が高いと、どうしても従来どおりの紙での情報発信を中心に考えてしまいがちです。しかし、若い人にアピールするにはデジタルメディアは欠かせません。ウェブサイトやSNS の活用は進んでいないので、そのようところに当社がサポートできるようにしていく必要があると考えています。
そういう意味で、印刷物製造業としての設備投資も重要ですが、これからは人材教育に力を入れないとお客様のニーズには応えられないし、それは会社の業績に直結するという危機感を、経営側が持っています。CME 取得をはじめ将来の人材育成のために、人材ならびに人材教育に対しても投資していくという方針です。

(聞き手:CS 部 千葉 弘幸)
JAGAT info 2016年7月号より転載