DTPエキスパート再び!-25年、50回目の試験を迎え新たな潮流も
DTPエキスパート認証試験は、次回(8月26日)で50回目の試験実施となる。受験人数はピークであった18期試験(2002年)から漸減が続いているが、受験を休止していた企業が再び取り組み始める新たな動きも出てきている。
1994年3月の第1期試験からスタートしたDTPエキスパートは、日本のDTPの定着と標準化を促し、そのカリキュラムは業界の教育スタンダードとなったと自負している。
発足当初は、現場が安定してDTPで良い印刷物が制作できるための正しい知識と、変わりゆく制作環境に対応できる人材を目指したが、現在では企画・営業・制作を包括するメディア設計のスーパーバイザーとして、印刷会社の強みを最大限に発揮でいる人材の育成を目指している。コンテンツを各メディアに編集・管理できるディレクション能力とともに、文字、組版、色、画像など本来印刷会社が持っているノウハウをデジタル時代活かしきるスキルと知識を得て、顧客から信頼される実行力を身につけるものだ。
25年間で52907人が受験し、昨年の48期試験までに(49期合格発表は5月下旬)22471人の合格者を輩出し、業界全体のボトムアップにも貢献できたと思う。
試験開始当初は、印刷会社の受験者は少なく業界周辺のメーカー・ディーラーに所属する人たちが最も大勢受験をした。なぜなら、ビジネスにおける共通言語を学ぶ必要があったためである。印刷会社にモノを売ろうとするときに、印刷のことを知らないと相手にされない。ではどのようにすれば効率的に習得できるか、といったときにDTPエキスパート認証試験制度とカリキュラムに着目し、各社が競って受験を奨励したのであった。
その後、ビジネススクールや専門学校でDTP講座が数多く立ち上がり、その受講生により印刷会社などに入社する前の業界未経験者に受験者層が拡大した。
1999年になって「当社ではこれからは業務の“専門バ〇”は必要ない、専門性を備えつつ幅広い知識を持った人財を育成していく」(当時の研修部長)との掛け声で大手印刷会社の団体受験(※)が始まると、つられるように業界の受験者数も増加の一途をたどった。印刷会社が本格的受験に取り組み始めるまでに、5年以上を要したのであった。
2000年を過ぎた頃から現場の技術者やオペレーターより、営業こそこれらを学ぶことでビジネスに活かせると気づき始めた経営者が、社内教育に取り入れ人事制度にも組み込んで団体受験を採用するようになった。営業担当が正しい知識を得て顧客とコミュニケーションがうまく取れるようになり、トラブルも減ったという声もよく聞いたものである。
2002年8月の18期試験では、2543人と史上最多の受験者数に到達し、その年は2回の試験トータルで4525人も受験した。
スクールにおけるDTP講座や資格ブームが衰退し、印刷会社の受けるべき人が一通り受験を終えると次第に受験者は減り始め、昨年(2017年)の総受験者数は、ピークの2002年から比べると13.7%に過ぎない620人となっている。
ただし、資格を継続しようと2年ごとの更新試験を受験した人は2017年で3584人である。
そして、最近になって発足期のメイン受験者であったメーカー・ディーラーが、受験を再開するという新たな動きが出てきている。しばらく受験を休止していた企業が若手を中心にまとまって受け始めたのである。
伺ってみると、過去に資格を取った人が現場を離れたり、引退するなどして、社内に印刷のことがわかる人がいなくなってしまったため、あらためて勉強する必要が出てきたとのことである。機械はスペックを語って売れる時代ではない、以前に増して顧客によりそい、ビジネスのソリューションを担うものとして説明されなければならない。若い人に印刷を学ばせる手段として再びDTPエキスパートに取り組み始めたのだ。
ついに、DTPエキスパートは25年の歴史を経て、世代交代を目の当たりにすることとなった。はたしてこの潮流は印刷会社にも及んでくるのであろうか。
印刷会社であっても、今や印刷物は顧客のビジネスパフォーマンスの向上、すなわち課題解決のためメディアとして提案されなければならない。それを可能とする人財育成はますます重要となり、学ぶべき事項や質も変化してきている。
いずれにしても、DTPエキスパートカリキュラムは世代交代にも対応できるべく、改訂を続けてきており、今年の秋には改訂13版を発表する予定である。50期目の試験は単たる通過点に過ぎない。
(CS部 橋本和弥)
【関連情報】
・第50期DTPエキスパート認証試験 2018年3月26日(日)
・※ 団体受験