【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-11 レイアウト
掲載日:2018年11月1日
文字や図版などの各要素をレイアウトフォーマットに沿って配置し、最終出力の体裁に整える。また、出力に適したデータ処理を行う。
1-11-1 テキストデータ
- 目に見える文字以外はスペースや改行、タブコードだけを使って構成されたファイルをプレーンテキストという。
- プレーンテキストは異なるコンピューター環境や、異なるアプリケーションでも文字コンテンツが変わらないので、文章原稿データの整理の段階や原稿データの保存に使われているが、実質的にシフトJIS相当の字種しか扱えないという問題がある。
1-11-2 文字組版
- 文章読解の妨げにならないように文字を配列する技術が組版である。DTPでは、紙面設計の自在さや使用フォントの使い分けなどにより多様な組み方ができるため、紙面に表情をつけることができる。
- 文字組版の要素には、組み(縦組み・横組み)、文字サイズ、書体、字送り、字詰、行間があり、それに加えて禁則処理、約物処理などを考慮して行う。
- 日本語組版の基本的アルゴリズムは、JIS X 4051:2004「日本語文書の組版方法」に規定されている。W3C(World Wide Web Consortium)は、2012年4月Requirements for Japanese Text Layout(日本語組版の要件)という技術ノートを英文、および日本語で発行した。JIS X 4051:2004の平易で実用的なガイドとして、世界的に参考にされている。
欧文組版
- 欧文文字は、文字によって高さや幅が異なる。高さはいくつかの基準線に揃えられているが、各文字の幅は異なる。そのため、一定の字間で組むだけで、プロポーショナルな組版ができる。
- 欧文では、文字はベースラインに揃うように設計され、また、アセンダライン、キャピタル(キャップ)ライン、ミーンライン、ディセンダラインという基準線をもつ。
- 欧文組版では、ジャスティフィケーションは、①単語と単語の間のスペースを1行中で調整する、②1つの単語の字間をベタ組みではなく少し空けて調節する、③ハイフネーション処理をする、の順序で行う。ハイフンの位置はどこでもよいわけでなく、各国語別に異なるので各国語の辞書を参照する。
- 欧文組版形式のひとつに、ジャスティフィケーションを行わないラグ組みがあり、一般的に本文組みの場合は、左揃えまたは右揃えの形式がある。
和欧混植
- 和文ではフォントはセンターラインしか基準線がなく、一方欧文フォントはxハイトやディセンダが一定しないので、バランスのとれた書体選択に留意する必要がある。
- 和文と欧文の間が接近しすぎるとき、また欧文のセット幅が異なるため行長に端数が生じる。
1-11-3 ページレイアウト
- ページレイアウトソフトウェアとは、文字データ・線画データ・画像データを1ページにレイアウトしてまとめるソフトウェアを指す。レイアウトだけでなく、カラーの指定や画像の入出力、印刷、分版出力などの機能まで備えているものが多い。
- レイアウトデータと配置されたデータを個別に管理し入稿するとリンク切れや先祖返りなどのミスが生じることや、受け取る側も管理が煩雑になるため、PDFとしてすべてのコンテンツを1ファイル内に埋め込み、完全データとして入稿する形式が一般化している。
- ページの基本デザインに従って、各ページを組み上げていくページネーションは、自動レイアウトをするバッチ方式と、画面に対して貼り付けの指示を個別にしていく対話方式がある。
- あらかじめ一括した指示(スクリプト)を作成して所定の場所に文字や図版を自動的に割り付けるバッチ処理は、文章量の多いマニュアルなどの制作が効率的に行える。
- DTPによるページネーションの主体は、オペレーターが画面を見ながら文字を流し込んで割り付けるWYSIWYGによる方法である。これはレイアウトの細部のコントロールが行いやすい。
- 大量ページ処理に向いているのはバッチ処理であり、ビジュアル中心の端物制作や修正作業に向いているのはWYSIWYGである。
1-11-4 透明
透明の概念
- IllustratorやInDesignではオブジェクトに透明の概念を持たせることができる。通常(デフォルト)の塗りつぶしのオブジェクトは不透明度100%であり、不透明度を0%にすると下のオブジェクトが完全に見えるようになる。オブジェクトごとに不透明度や下のオブジェクトとのブレンド方法(描画モード)を設定することができる。「ドロップシャドウ」「ぼかし」なども透明の機能を利用したものである。
透明と出力の関係、分割・統合
- PostScript-RIP、およびPDF/X-1には透明の概念がないため、IllustratorやInDesign上で設定した透明をそのままでは出力することができない。その場合は「透明効果の分割・統合」という方法で、透明オブジェクトを不透明化する必要がある。
- Adobe PDF Print Engine(APPE)などのPDF-RIPでは、透明を含むPDF(PDF/X-4)をそのまま解釈し、出力することができる。
1-11-5 出力用データ処理
- 印刷データを生成する際には、トンボや塗り足し(ブリード)、ノセ(オーバープリント設定)やヌキ、また場合によってはトラッピング、カラーパッチ(カラーバー)を設定、または配置することがある。
- 色の上に文字や別の図形を重ねるときには、画面とCMYK 出力の間で、ノセ(オーバープリント)やヌキの関係に食い違いがないことを確認しておく。
- CTP出力の際に、RIP上でKを一律にオーバープリントに設定すると、制作者の意図しないところまでノセにしてしまう場合があるので注意する。
- 品質管理用のカラーパッチなどの管理スケールや印刷製本用のトンボは、レイアウトソフトウェア、面付けソフトウェア上、RIP上などで付加することができる。
- ダブルトーンや2色分解をする場合は、出力前工程で各版への分解・分版やトーンカーブ調整などを行う必要がある。
ノセとヌキ
- 写真や平網、ベタ刷り部分の上に、文字や線画などを刷り重ねることをノセという。写真や平網・ベタ刷り部分の中で、文字や線画などを白く抜き、紙白で表現することを白ヌキ、色をつけることを色ヌキという。
- 掛け合わせや特色のノセは下色の影響を受けて、ノセたインキとは違う色で仕上がるため注意する。色ヌキは抜いた部分にピッタリの色版を必要とするため、トラッピングを行う必要がある。
トンボ
- トンボは位置の基準という意味では、英語のregister markに相当し、その役割はセンタートンボと角(コーナー)トンボの2種類で異なる。
- 角トンボは2本の平行線で構成され、1本は製本の段階で化粧断ちをするための仕上り線を表し、もう1本は化粧断ち線の少し外側で製版処理に必要な面を示す製版寸法線を表す。
- 写真を仕上り寸法いっぱいに入れる場合、画像部分が仕上り線までしかないと、断裁時のズレなどで写真の回りに白い部分が出てくることがあるため、データ作成時にあらかじめ断ち落としの処理をしておく。
- 一般に仕上り線と製版寸法線の間は3mm程の隔たりがあるが、この間の断ち落とし部分は、印刷会社や印刷物の種類によって5mm程度まで差があり、あらかじめ確認してからデータ作成作業をする必要がある。
- リーフレットでは折トンボが用いられる。これはアプリケーションで自動的にトンボを入れることができないので、制作者が制作の前に自作する必要がある。
トラッピング
- プロセスカラー印刷ではCMYK の各色の版が別々にあり、これらの色が隣り合って接している部分は、印刷時のわずかな見当ズレによって紙の白地が出ることがある。それを防ぐために、プリプレス側でトラッピングという補正が必要になる。
- トラッピングの刷り重ね部分の作成は、その方向や幅、印刷条件、隣り合う色の色合いや網点パーセントの大小によって異なる。輪郭線のどちらか一方、または輪郭線を中心に重なり合う部分を形成し、輪郭領域に前面と背面の色が重なった細い帯が形成される。
- トラッピングにはチョークとスプレッドの2つの処理がある。前面のオブジェクトの色の領域を拡大することをスプレッドといい、背面からオブジェクトを抜いた領域を縮小することをチョークという。
- 本文文字のように太らせるわけにはいかないオブジェクトには背面のヌキを縮小するチョークが適用される。トラッピングの幅は印刷機の種類や精度に依存し、太過ぎると擬似輪郭となり不自然となる。一般に薄い色の領域を拡大する。
プリフライトチェック
- ページレイアウトソフトには出力前のプリフライトチェック機能があり、フォントや色、貼り込みデータのファイル形式などの内容をチェックすることができる。
出力処理の流れ
- かつてはPostScript出力・PostScript-RIP方式が主流であったが、現在ではPDF出力・PDF-RIP方式が一般的となっている。
- PostScript出力では、出力データとRIP搭載フォントの不整合によるトラブルが多発していた。PDF出力ではフォントエンベッド方式が一般的となり、このようなトラブルはほとんど解消された。