クラウドサービスの活用と業務の最適化は進む

掲載日:2021年3月22日
このエントリーをはてなブックマークに追加

コロナ以降、いつの間にか多くのSaaS(ベンダーが提供するクラウドサーバ上のソフトウェアをユーザーが利用するサービス)を日常利用している。

Zoomは数多くのSaaS企業の中でもコロナ禍で大きくビジネスを拡大した。その他企業システムの分野でも、財務・人事・受発注といった基幹業務をクラウドへ移行する動きが加速している。

そもそもこうした企業の基幹システムは、サーバの老朽化やコアシステム改善の頻度、中小規模企業の人手不足などへの対処として、オンプレミス構築やパッケージ型からパブリッククラウドサービス利用への流れがあった。一定利用に対する料金の支払い形態であるサブスクリプション方式が社会に浸透しつつあり、これに対応したクラウドサービスが多く存在することも一因だ。それでも先進諸外国と比べると、日本国内でのSaaS活用は5年ほど遅れているといわれる。

コロナ禍、テレワークの必要性から、企業のバックオフィス業務は勤怠管理、経費精算、受発注などSaaS活用があらためて注目された。「押印による正式承認」の慣習に対しても、クラウドサービスによる電子印鑑採用が話題に上ることも多い。ハンコ一つとっても、それがなぜ必要なのか、その必要を満たすためによりよい方法は何か、と見方を変えることで、多くの業務は最適化に向かう。

デジタル化・オンライン化が中心なのではなく、別の形態に変化するときに一連の業務を慣行のバイアスにとわられることなく、新たなサービス形態あるいは業務フローとして再構築していくことが求められる。

人材育成での活用例

JAGAT主催エキスパート認証制度の更新試験では、7年ほど前から問題冊子郵送とマークシート解答の返送による試験から、e-ラーニングをテスティングに応用して運用するクラウドサービス型CBT方式に切り替え、定着した。

更新試験は、すでに一定の知識のベースのある資格認証者が、認証期間の2年間に印刷関連動向や注目トピックに造詣を深める継続学習の機会を提供する目的で行っている。よって、制限時間内に知識の暗記力を確かめたり、一定以上の割合で正答していることでOKとして認証する、というより、問題を解くことで知識を再確認してもらうこと、さらに深めてもらうこと、動向を知ってもらうこと、を重視している。その目的に沿うためには、紙の印刷物の受領・返送によるタイムロスを含む取り組み側の負荷よりも、CBT方式での即時正答確認と取り組みの利便性を優先した、という経緯だった。

切り替え当初は取り組みデバイスの問題、搭載システムの表示制限など、課題も多かった。コロナ禍で導入を余儀なくされた研修オンライン化は研修フローの定型を少なからず変え混乱する場面も多かったが、その比ではない多くの問い合わせ、ご指摘が寄せられ、そのたびにシステムのマイナーチェンジやサポートの改善を行いながら、現在では運用も定着している。個別学習のオンライン化が一般化したこともあり、次回2021年4月実施試験でオンライン方式として16回目を迎える。

さらに資格者登録については、従来提供していた登録情報の確認・修正のみを目的としたWeb基本台帳から、会員管理SaaSを活用した資格者サイトとして2020年8月より一新した。
各資格者のマイページから登録内容の確認・修正はもちろん、受験料キャッシュレス決済を含む一連の更新手続き、各種資格者向けサービスの提供、資格者向け最新トピックの配信などを行っている。

不確実な時代に自身の力を高めておきたいという学習需要もあり、次回2021年4月更新の申請率(更新対象者数に対する申請者数)は約86%(執筆時点の概算値)と、数年ぶりの高い値となった。会員サイトとしての利便性も一助となっているのなら、サイト再構成の労力も報われるところだ。

 

受発注手続き、取り組み方などに関する形式的な業務の最適化は、それ自体が目的ではない。ビジネス拡大のために注力すべき付加価値の向上に視点を置くことは、言うまでもない。

JAGAT研究調査部 丹羽 朋子