エシカル消費を理解する
生活者の消費行動として欧州を中心に注目される『エシカル消費』。日本国内でもSDGsの社会への広まりとともに、認知度が高まりつつある。
印刷物が使用される場面は、商品・サービスの最終利用者である生活者の消費行動と密接に関連する。SDGsの社会への広まりとともに、生活者の消費に関する意識の高まりとして近年注目されているのが、『エシカル消費(倫理観に基づく消費行動)』だ。人・社会・地球・環境に配慮した消費行動のことで、英国で創刊された『Ethical Consumer』という情報誌が普及の起点と言われ、主に欧州では一般化した概念となっているようだ。
気候変動、強制労働、動物実験、遺伝子組み換え作物、原子力発電の利用など、倫理的な観点からの正当性を基に購入する商品・サービスを選択することが消費ポリシーとなっている。
例を挙げれば、
- フェアトレードによる商品を購入することで人や社会に配慮する
- 遠方で一括大量生産され昼夜を問わず長距離輸送された商品よりも地産地消による地域社会の形成を重視する
- 生態系の破壊や地球温暖化といった環境問題に配慮した生産を行う企業の商品を選択する
- 食品ロスをなくし必要とする場へ届けるためフードバンクを活用する
などがある。
消費に関するこうした考え方は、日本でも認知されつつある。電通が行った「エシカル消費意識調査2020」によると、その名称認知度は24.0%、ミレニアル世代、Z世代で比較的認知度が高い。
過熱した消費社会からの脱却として、ソーシャルグッド(社会課題の解決により良い影響を与える取り組み)なライフスタイルを望む意識の表れといえるだろう。
コンテンツ作りにおいて意識すべきこと
印刷物製造工程における環境配慮とともに、コンテンツ制作者としては印刷物上のコンテンツ表現においても、配慮すべき点を理解しておく必要がある。
ある集団に対する先入観による差別的表現、宗教・民族的背景に関連する表現、固定概念に基づくステレオタイプを前提とするような表現など、慎重な対応が求められる場面が想定される。
広告物や出版物に用いられた表現がSNS炎上の引き金になった例は多く、人々の意識が高まるにつれ、よりニュートラルな表現が望まれる。
印刷物を活用した顧客企業のマーケティング活動とも関連して、社会全体の意識の高まりとともにますますこうした対応が求められるだろう。
JAGAT資格制度事務局 丹羽 朋子